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第23話 パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記

Image by Olia Gozha

第23話 周囲の反応:両親編

 

例えば、娘が成長して「自分はレズビアンだ」とか、「トランスジェンダーだ」とカミングアウトしても、あたしはビクともしないよ。アリッサのお父さんのように「あなたの人生だから、あなたの好きなように生きなさい」って言うと思う。

 

 

 

 

 

アリッサのカミングアウトに双方の親はどんな反応を見せたのでしょう。

 

実を言うとわたしの両親にはまだ伝えていません。高齢の両親に余計な心配をさせたくなかったので、「あえて伝える必要はなし」と独断で決めました。

 

2歳年上の姉にはカミングアウトのその日に電話で伝えました。

姉は「ドラマみたいだね」と言っただけで、それほど驚いた様子を見せませんでした。

 

 

家族揃って日本へ帰国したのは2017年の4月。カミングアウトの約1年後のことでした。アリッサには「両親に会う日だけはノーメーク&ジーンズで」と懇願し、なんとかやり過ごしました。

 

猫アレルギー持ちのアリッサ。栃木の実家で猫を飼っているため、帰国の際は群馬の姉家族宅に世話になり、両親は栃木から姉宅に合流します。

 

母:「エイタスさん、なんか変わったね」

 

わたし:「ヨガ、がんばってるからね」

 

母は納得いかない顔をしていました。でも知らないほうが幸せなこともある。

 

 

今、アリッサの外観は完全に女性で、本人も中性的な格好は絶対したくないと思います。なので、今度日本に帰国するときは、事前に両親に伝えなければと覚悟を決めています。

 

でも、うちの両親は受け入れてくれるはず 。

 

きっと「愛さえ、だいじょうぶなら、それでいいんじゃない」。そんなふうに軽く流して(ほんとうは、こころの中でわたしのことを心配すると思うけど)、わたしたち家族を応援してくれると思うのです。

 

 

問題は義理の両親。

 

以前にも書きましたが、義理の両親はわたしたちの結婚に大反対でした。特にお義母さんが。長男にタイの良家のお嬢様と結婚してほしかったのです。

 

結婚後しばらく氷河期が続きますが、長女が生まれた頃から、わたしたちの関係は雪解け期にはいります。お互い歩みよるようになり、「両親が日本とタイに2組いるのはありがたいな」と思えるようになっていたのに、まさかのカミングアウト。

 

義理の両親は年に2回、かわいい孫とかわいい息子に会いにタイからはるばるやってきます。

 

カミングアウトから約4ヶ月後の9月、タイから義理の両親が到着したその日に、アリッサが事実を伝えました。

 

 

アリッサは母親との絆が強く、厳格な父親に対しては畏怖の念を抱いていました。

母は自分を温かく受け入れて、父親が拒絶すると予想していたようです。

 

 

実際はその逆でした。

 

義理の父は「自分の人生なのだから、自分が好きなように生きなさい。あなたの決意がなにであったとしても、父親だから、あなたをいつでもサポートする。ただし家族につらい思いをさせてはいけない」と言ったそうです。

 

 

あのときの義理の母のことを想うと今でも胸が痛みます。義理の母はアリッサを溺愛していました。

 

義理の母はアリッサの言いぶんをはなから受け付けず、「カウンセラーに入れ知恵されただけだ」と言い張りました。義理の母の顔は怒りで燃えあがり、真っ赤になったあと、今度は青白くかわり、そして彼女はさめざめと泣きました。わたしは義理の母の気持ちが痛いほどわかりました。信じたくなかったのです。

 

その夜、義理の母はわたしにこう言いました。

「エイタス(アリッサ)が女性のような格好をしたら、『そんな格好をするなら離婚する』と言って脅かしなさい」。

 

義理の母を不憫に思いました。

 

義理の両親の滞在期間は男性のような格好をしていたけど 、その頃、アリッサはすでに、家にいても、仕事へ行くときも、お出かけのときも超ミニスカートをはいて、ロングブーツはいて、ばっちり化粧していました。何も知らないかわいそうな義理の母。

 

 

義理の両親がタイに帰った数週間後のこと。アリッサのFBを見たミシガン州に住むいとこが、アリッサのカミングアウトの件を彼の母親に伝えてしまい、噂は親戚中に広まってしまいます。義理の母は隠しておきたかったはず。

 

年に2回は必ず遊びに来ていた義理の両親ですが、去年は一度もわたしたちに会いに来ませんでした。

 

義理の母との関係をどう修復していくかは、わたしたち家族の今後の課題のひとつです。

 

次回はその他大勢の反応

 

おまけ…

 


邦題は「メタルヘッド」。2011年の作品で、妻(母)を交通事故で亡くした父親と息子の悲しみを描いた映画です。

ブラックコメディーと言われてるけど、コメディーじゃないと思う。最後のほうにジョセフ・ゴードン・レブィット扮するヘッシャーがこう言うんです。

 

「俺は昔、事故でたまきんをひとつ失った。たまきんを失って、怒りで狂ったように大暴れした。でも気がついたんだ。もう片方のたまきんがあるし、棒だってちゃんとある。たまきんひとつしかなくてもちゃんとセックスできるんだ。おまえたちは母ちゃん

が死んで、壊れちゃって、でくの棒みたいなダメ人間になったけど、母ちゃんいなくても、家族がいるだろう。ふたりでなんとかやってけるだろう」(高山愛のはちゃめちゃ訳)。我が家はね、たまきん父ちゃんがいなくなったけど、アリッサがいるし。なんとかやっていける。ちなみに、Hesherって、80年代の音楽(ロック、ヘビメタ)とかファッションにこだわるロングヘアーの男性の通称なんですって。

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