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A子ちゃんの真の敵

Image by Olia Gozha

A子ちゃんの真の敵

 C国情報部(「B先生のこと」で出演したメンバー)

「74年前は大日本帝国を崩壊させたものの、アジア諸国は植民地から解放されてしまったではないか」

「まさか、軍部に天使が紛れ込んでいたとは・・・」

「言い訳はいらん!」

「今度は大丈夫だろうな。日本という国は目障りなのだ」

「今回は間違いなく」

「うむ、直ちに取り掛かれ」

(部員が立ち去った後、部長が突然悪魔に変身する)

「おのれ、神め。今度は邪魔をさせん」


 A子ちゃんが、あるシンポジウムで発言をしている。(5歳ほど年齢が上がっている)

「2002年4月以降に生まれた学年、つまり今年高校2年生になる生徒から新制度の入試となる予定です。しかし、学校現場ではテスト内容が全く分からない状態です。これは、異常事態と言えます」

「そこで、問題点を2点指摘しておきたいと思います」

「まず、英語において外部検定試験を導入するという点。具体的には、ケンブリッジ英語検定、TOEFL iBTテスト、IELTS、TOEIC Listening & Reading TestおよびTOEIC Speaking & Writing Tests、GTEC、TEAP、TEAP CBT、英検 の8種類と言われていますが、47都道府県で受験できるのは英検とGTECのみであって、地域格差を助長しかねません」

「もう1点。それは、それぞれのテストで知ることができる英語能力がバラバラであること。昨年、東京大学はこの民間検定試験の成績提出を必須としないと発表されました。公平さに問題があるのは明らかです」

 (司会)

「それでは、質疑応答に入らせてもらいます」

B先生の塾で

「先生、ボクたちからセンター試験じゃなくて新テストらしいんですけど、どうなっちゃうんですか?」

「記述式が増えるらしいけど、50万人分の記述式の採点なんて物理的に無理でしょう」

「ってことは、アルバイトが採点すんの?」

「たぶん・・・」

「えーっ!冗談じゃないですよ。オレの将来をバイトくんに決めさせるの?」

「それって、文科省に民間資格試験業者から金が流れているんじゃないの?」

「そんなテスト廃止すればいいのに。大学が試験するんだから」

「そうはいかないんだよ。そんなことしたら、文科省の権力、業者の利権が守れないんだから。職員をクビにできないじゃん」

「もう!政府は、世界で戦える人間を育てる気があるのかな?」


黙って、地上をながめる神様。


 塾(高木教育センター)に戻って、考えるB先生。

「なんで、日本の教育はダメになってしまったのだろう」

 回想(アメリカのローガン中学校。「B先生のこと」で既出)

 社会の授業中。B先生が日本の文化の説明をしている。

「それで、日本の食事の特徴は・・・」

 見学していたアメリカ人の教師が遮る。

「ちょっと待って。今、ミスターBの使った言葉はね」

 戸惑うB先生。授業後。

「アラン、なんで私の授業は遮られることがあるんだろう」

「アハハ。お前の英語は古臭いし日常使わない難解単語が多いからさ」

「ふーん・・・」(受験英語って、やっぱり時代遅れなんだなぁ)


喫茶店でB先生がコーヒーを飲んでいる。

「あ、A子ちゃん、久しぶり」

「B先生もお元気そうで」

「お母様が亡くなったんだって?」

「そうです。でも、泣いてばかりいられませんから。母も私が元気でいないと悲しむと思うんです」

「そうだね」

「ところで、先日のシンポジウムも全然ダメでした」

「うん。中国や韓国に追い越されていっているのに日本は気づいていないのかな」

「誰かの陰謀だったりして(笑)」

「そこでね、私は一つ思いついたことがあるんだよ」

「なんですか?」

「京都大学は英作文と和訳しか出題しない傾向があるよね」

「はい」

「それで、私が受験英語、資格英語、ネイティブ英語で何点とれるか実証試験をやった結果を公表しようと思っている」

「えーっ?どうやって?」

「そうだね。お金がないしね」


文科省内部。

「今はドンパチで戦う時代じゃないんだよ」

「そうですね。お金。つまり、貿易戦争。これからは、情報機器で勝負する時代になるでしょうなぁ」

「だから、トランプはファーウェイ排除に血道を上げているんだ。まぁ、私は関係がないけどな。天下り先が確保されたら、それでいい」


 C国情報部

「とにかく、日本人の英語力を落とし世界の流れに疎くさせる。孤立化させよ」

「はい。既に、マスコミ関係者に十分な金を流しております」

「すばらしい改革だと煽れ」

「分かっております」


 数年後、A子ちゃんからB先生にメール。

「B先生、何か名案でも浮かびましたか?」

「ブログでは公表しているけれど、私は知名度がないからね」

「クラウドファンディングで資金を調達して、本を出版されたら?」

「やってみたけど、お金は集まらないね。電子出版しても全然売れないし」


  神様は、黙って地上をながめている。


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