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13/6/14

誕生日に見た幻覚と鈴木くん(仮名)の話

Image by Olia Gozha

事は2008年の12月、僕の誕生日に起きた。

当時僕は大学を休学し、北京師範大学に留学に来て11ヶ月が経っていた。


授業で山のようにでる課題。

新聞を読み、気になる記事の中国語要約を作る毎日。

中国人の友達との語学相互学習。

毎日のように寮で開かれるミニパーティー。

青島ビールと羊肉串。

サッカー、バスケ、酒酒酒…。


めまぐるしくも刺激的な毎日はあっという間に過ぎていき、季節は冬になっていた。



ある日、友達つたいに一人の日本人に出会った。

彼の名前は鈴木さん(仮名)。留学生ではなくてバックパッカーだった。

毎日何をやっているのか分からないが、僕が出会った本物のバックパッカーだった。



12月の僕の誕生日。出会って1月程の鈴木さんも何故か寮で開いたパーティーに来てくれた。

ご丁寧にプレゼントまで持って。



彼がくれたもの、それはバイアグラだった。

中国製のバイアグラだ。

僕のリアクションを楽しみつつ、彼は言った。

「sakuraiくん、今ここで飲んでよ。」

彼は鬼畜だった。



その場の空気から飲まざるを得なくなった僕と鈴木さん(??)は同時にそれを飲むことになった。(日本人は空気を読むのが上手いんだ。)



飲んで10分程経っただろうか、バイアグラ本来の効果が出てきた。

プラスα、僕は視界が若干ぼやけていた。

何故か見える青い光。それは僕が体を動かすたびについてくる残像だった。

手を左右に動かす。すると1秒程後に青白い手が遅れて左右に揺れる。足を動かせば後から青白い足がついてくる。

僕はハイになっていた。なんだか良く分からないが、兎に角面白かった。

この世界は僕のもので、僕はなんでもやれそうな気がした。



友達皆に心配され、その日はすぐ寝ることにした。



翌朝、青白い光の幻覚は消えたがハイになった気持ちが静まるのはその日の夕方までかかった。

後から聞いた話だが、僕はハイになっている間仲の良かった女友達に下ネタを連呼してたらしい。

その出来事以来、その女友達とは疎遠になった。

但し日本語を使っていたため、日本人以外の留学生には何を言っているかわからなかったのが唯一の救いだった。

結局、幻覚を見た原因は今でもわからない、思うにバイアグラ以外の成分が入っていたんだと思う。因みに鈴木さんはなんともなかった。




時が過ぎ、僕が留学を終えて日本に帰国する何日か前、彼からfacebookつてに連絡がきた。

「今、-30度のハルピンにいる。リンゴで釘が打てた!」

彼によると最初は一晩外に置いてカチコチになったバナナで試したそうだがバナナが折れてしまったらしい。

そんな下らない実験を果たした写真の中の彼の顔は何よりも輝いて見えた。



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