まだわたしが20代の、ある朝のこと。
一緒に住んでいるおじいちゃんの具合が悪いらしくて、
ベットで横たわっていた。
当時のわたしは
自分の部屋の真下に居るおじいちゃんが
いつかは居なくなるんだなーと思うと とても怖かったけれど
年のせい?の独特な大声寝言を聞くのは楽しかったの。
寝言で出てくる単語からの推測によれば、、、、
たぶん、今はアフリカで原住民と戦ってるなー。
あー、今度は刀を持った侍に追いかけられとるゎ~。
などと、夢物語が読み取れた。
おじいちゃん、意外に夢では激しいゎ(笑)
でもね、その朝はいつになくしんどそうだったの。
そして、具合の悪そうなおじいちゃんはわたしに言った。
『とっこちゃん、病院には行きたくない!』と。
しっかりした目ではっきりした口調で…。
今までそんなこと言ったことないのになぁ…と思いながら
病院に連れて行こうと話している父と母に
『病院には行きたくないんやって~。』と とりあえず伝えて
わたしはボーっとおじいちゃんの手を握っていた。
しばらくして
一瞬、ほんとに一瞬、
『ウッ』っと何かが詰まったような苦しそうな声を出して
おじいちゃんはあっけなく静かに死んじゃった。
ほんの少しだけ口から黒い塊が出た。
わたしは、その瞬間を今でもはっきりと覚えている。
亡くなったおじいちゃんは普通に温かくて
表情は仏様のように穏やかで幸せそうに見える。
そして、握っていた手の爪の色がサーって綺麗なクリーム色に変わったの。
さすがに、そんな体験は初めてだったので
何だかその時
わたしの中の生と死の境界線みたいなものが溶けていったような気がした。
『死』のイメージは、暗くて怖かったけど
目 の前で死んじゃったおじいちゃんは何だかとても幸せそうだったんだー。
あれからわたしは年齢を重ね、人の死がずいぶん身近になっているし
泣いたり慰めたりもしてきたけれど
あの日におじいちゃんが見せてくれた
この世からあの世に渡る瞬間を、わたしはわたしが渡る瞬間まで
きっと覚えている。
そして もしもその時がきたら、きっと思い出せるよね。
余談だけど、
わたしの守護霊の一人はおじいちゃんなんだとか。
おじいちゃん、ありがとう。


