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13/6/27

うにが食べられるようになった。

Image by Olia Gozha

だれでも持ってそうですし、あるある、みたいな話になりそうですが、

食べられなかったものを食べられるようになった話をしたいと思います。


ちょうどここ最近のような雨が続く蒸し暑い日に、当時大学生だった私はキャンパスの近くの、公園と呼べるのかも怪しいただの草が生えた広場、髪型で例えるなら、ハゲ散らかしている何も無い場所でただ何もせず呆けていました。

景気が悪くなって、明日をも知れぬ自分の置かれた状況や、中東の緊迫した国内の情勢、人間の幸福とは、といった誰かがまじめに考えてくれそうなことは考えず、トンボを捕まえようとしていました。

ひと通りトンボを捕まえることに飽きると、今日はどこでご飯を食べようか、友だちを呼んで蕎麦でも食べてお酒をいただこうか、と考えていました。

誰しも経験があると思いますが、そういう時に限って人は捕まりません。

そうなると、その当時、「メタルなことがかっこいい」という、1990年初頭のブラックメタル内で起きたアンダーグラウンド主義の元生きていた私には、砂でも食べてみようか?というアイデアしか思いつくこともなく、水飲み場で洗った砂を食べていました。

予想の上も下もいかない、砂そのものの味わい、カンカン照りの日のすなぼこり舞う校庭を凝縮した、そのものを舌で転がしはじめてから、これは食べ物じゃないな、と思い至るまでそう時間はかかりませんでした。

結局、ファッションで掲げるにはアンダーグラウンド主義は荷が重いと分かった私は高田馬場のうらぶれた海鮮居酒屋で、なるべく砂っぽいものを食べてみようということで、「砂肝」、「うに」を食べてみました。

あ、それまでうに食べられなかったんですけどね。なんか砂っぽくて。

そうしたら、驚くことに、うにが全く砂っぽくなかったんですね。

なんというか、濃厚というか、凝縮された海そのものがトロリと溶け、舌の上に広がるとでも言いましょうか。まあ、おいしかったんです。とても。


あの頃、僕が「砂っぽいから嫌い」と思い込んでいたことは、単なる偏見でしかなかったのです。

「うわ、これカブトムシの味するわ...」「お前カブトムシ食べたことあるのかよ笑」と同じ、実際にそれそのものを食べると、そんな思い込みでただ損をしていた自分に気づくだけなんです。

その時の僕は、広い青空を見渡し、「うにって砂よりおいしい!」そんなことをおのずと叫んでいたかもしれませんし、そういう細かいのはちょっと覚えてないです。

みなさんも、なになにっぽくて嫌いなんだよね。という食べ物がありましたら、ぜひ原因そのものを食べてみましょう。自分の愚かさに気づくはずです。

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