15年も前になりますが、看護師をしていました。
もともとは、病棟勤務もしましたが、私の働いていた一般内科では、元気に退院される方も多い中で
残念ながらお亡くなりになられる方も多く、受け持った方が亡くなられた時に、気持ちの切り
替えがうまくできず、結局、病棟勤務の看護師を辞めてしまいました。
とは言っても、生きていかねばならず、稼がねばなりません。
そこで、求人案内を見た私は、
老人ホーム夜勤ナース募集 午後4時から 翌日午前9時まで 1回2万5千円
という募集を見つけ、応募しました。
面接の後、なぜか募集案内よりも高い1夜勤3万円で働かないかと打診を受け、
老人ホームで夜勤ナースとして働きはじめました。
それが、それが、おもしろいのなんのって。
老人ホームの殿方と奥方は、吉本の芸人さんより面白いと太鼓判を打てるほどに、
毎勤務、大爆笑をしていました。
いつか書いてみたいと思っていた、その小話を、
少しずつ、書いていきたいと思います。
まぁ、くすっ位の笑いですが、思い出したエピソードを一つ。
老人ホームに夜勤ナースとして働き始めたばかりの頃。
午後4時に勤務がスタートした直後、午後5時には夕食が始まりました。
食事介助が必要な方も多いフロアで、
「こんにちは~。今日から働きます。いろいろ教えてくださいね。よろしくお願いします~。」
と、殿方奥方に挨拶しながら、周りの介護士さんにどなたの介助に入ればいいか、教えを乞いました。
では、この方の食事介助にと言われたので、
車いすに座っている80代くらいの女性の介助に入りました。
食事介助は、相手のリズムに合わせて、などと思いながら、とろとろっとしたスープを女性の口に運んでいると、隣に座っていた、これまた80代くらいの女性が話しかけてきます。
「あんた、可愛いな~」
いやいや、ありがとうございます、と返しながら、食事介助を続けます。、すると、また
「いや、あんたは、ほんまに可愛いわ~」
「可愛いな~、いや、可愛いわ~」
もう、何度連発するんですかというくらいに、私を見つめて可愛い可愛いと連発してくれるのです。
80代のお婆ちゃんからでも、こんなに見つめられ、真剣な眼差しで可愛い、可愛いと言われたら、嬉しかったのです。まぁ、私も捨てたもんじゃないな。こんなに外見を褒められるとは、ちょっとない体験だよね、とちょっと浮かれて思っていました。
そのお婆ちゃんも、食事の介助をしていた方も食事を食べ終えられたので、食器の片づけに行きました。片づけを終え、その場に戻ってくると、その私に可愛い可愛いと言ってくれるお婆ちゃんが、誰かに「あんたほんまに可愛いなぁ~」と、話しているではないですか!
誰だれだれ?
一体、誰に話しているのと、お婆ちゃんが話しているその先を見ると、
なんと、それはカレンダー。
それも、それも、奈良の大仏様のお顔でございました。
それはそれは、お美しいでございますね。
老人ホームでの「可愛いな~」には、もう騙されますまいと誓った老人ホーム初日でありました。


