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旅立ち(4)

Image by Olia Gozha


子供を預けて向かったのは、ネイルサロン

数年も通い、しばらく予約が合わなくて 

通わなくなっていた、サロンから

閉店のお知らせのメールが来ていた。


予約した時は、まさかその日が

家出の日になるとは、夢にも思わなかった



久しぶりに会うネイリストの彼女、

以前通っていた時に、好みが通じやすく

話しも合い、聞くと同じ歳で

誕生日が一日違い

閉店するなら、最後に会いに行こうかなと

指名して予約をしていた


久しぶりですね、から始まる会話 

最近のこと、今の仕事のこと、

色々聞かれ話すうちに、

なぜだか、彼女には話したくなり

ポツポツと、このところの気づきや

ここまで考えてきたこと、を話し


それでね、、わたし、、


家を出ることに、したの、、


子供を置いて、、


泣きながら、言うと

彼女も、目をうるませ、


え?いつ?!


今日、これから、、


言うと、泣きながら

私を力強く、ハグしてくれる


二人で、ネイルの途中で

泣きながら、抱き合う

あぁ、この人とも、魂の仲間なんだな


旅立ちを決めてから、最初に

ハグをしてくれたのは、彼女だった


魂込めた、渾身の力作アートを仕上げて


力いっぱい、見送られ


ネイルサロンを後にする


行かなくたって、良かった

キャンセルしてもっと早く旅立つ事もできた

でも、

わたしは、彼女に、見送られたかったのだと

ネイルサロンを後にしながら思った


美しいネイルで、彩を添えて。




時間を見ると、そろそろ夫の戻る時間


GPSで居場所を見ると

高速に乗っているスピードで移動して

こちらに戻って来るのがわかる



急がないと



置いていく車の中

離婚届と、手紙を置いていく


携帯電話を置き、車を後にしたところで


携帯電話のリセットを忘れていると思い出し


トランクを引きずり

足がもつれそうになりながら戻り

携帯電話のリセットボタンを押す


急ぎ足で、駅前のコンビニにより

宅急便で実家への手紙を送る

翌日の午前中には届くように

宅急便にしたのだ


急いで、急いで


どこへ行くかも、その日の朝まで

決めておらず


この駅から出る電車で行けるところ


寒くなる、東北ではなくて、、

検索して出てきた、駅名をみて

ここにしよう、と決める


温泉に入りたかった

一人でゆっくりしたかった

まず浮かんだ、休みたい、をするために

場所をえらび、

時刻と行き先を、暗記した


この頃、家中あちこちに

カメラがあるような気がしていて

何を調べたか、メモしたか

見られたくなかったから

暗記するしかなかった



急いで、切符を買い

小走りで

ターミナル駅を走る

スーツケースを引きながら


もしも、誰かに見られたら

声をかけられたら、と思うと

前を向くことも出来ず

足元だけを見て必死で


改札を通り

エレベーターを降り

ホームに入ってきた電車に

ギリギリで乗り込む



出発してから席に座り

汗が吹き出し、目眩がし


ひどく喉がかわいて

カラカラだと気づく


飲み物なんて、買ってくる余裕がなかった


どうしよう、、

こういうのって車内で買えるのかな、、


ようやく落ち着いてそんな事を考えていたら

車内販売が来て、無事に飲み物を買えた



愛の中にある


旅が動き始めた




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