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13/6/10

外国人の彼女を作ろうとした話

Image by Olia Gozha

2009年の4月、僕は童貞だった。

当時、一年間の北京留学から帰ってきて、僕は大学を3年から復学することにした。

友達は皆大学4年に進級し、就活に勤しんで大学に来ることも少なくなっていた。

僕が留学前に設立した草野球サークル(8人しか集まらず結局キャッチボールしか出来なかった。)も事実上消滅していた。

僕は彼女どころか友達すらいなかったのだ。



そんな友達の居ない窮屈な学生生活を打開しようと、僕は語学サークルなるものを一人で作ることにした。

設立趣旨はこんなだ。

「日本人の友達を作りたい、日本語を勉強したい留学生と外国人の友達を作りたい、外国語を勉強したい学生をマッチングさせる。」

そんなカッコいいことを謳ってはいたけど、僕の目的は一つだった。

「外国人の彼女がほしい。」



当時21歳だった僕は帰国子女で、中国語に堪能。そんな武器を生かせもせず、相も変わらず、童貞だった。

女の子とキスもしたことがなければ、手をつないでデートもしたことがない、正真正銘清純派の童貞だった。



そんな私利私欲のために作ると決めたサークルだが一度決めたら行動は早かった。

まずは説明会日程を載せた勧誘広告をExcelで作成し、部活やサークルの勧誘時期は過ぎていたので教授方にお願いし、始業前か終業後に色々なクラスにお邪魔して配りまくった。

300枚は配っただろうか、一週間後に開いたサークル説明会には中国人、台湾人、韓国人留学生、日本人の学部生約30人程が集まってきてくれた。

基本的にな活動は週2回昼休みに空いてる教室でお喋りしましょう、後のことはどうぞ勝手にして下さいといった、今考えるとサークルの体もなしていない集まりだった。


そんなサークルだったが、僕はそこである中国人女性に恋をすることになる。



彼女の名前はリンちゃん(仮名)。2歳年上のお姉さんだった。最初友達7,8人を連れてサークルに遊びにきてくれた彼女だったが、一目見て恋をした僕は当初の目論み通りサークル以外でも彼女と交流するようになる。


当時彼女は大学1年生。日本に来て2年間語学学校に通っていたらしく、きれいな日本語を話した。

バイリンガルで、簿記3級をもった商学部生。なにより彼女は可愛かった。



彼女と知り合うちょうど同じ頃、大学がある八王子近辺で僕は2人のアメリカ人モルモン教徒、ダニエルとブライアン(仮名)に勧誘され、教会が週1回開いている英会話教室に通うようになった。


教会には色々な人がいた。3歳くらいの子供から60過ぎのおばさんまで。人種もアメリカ人、日本人、ベトナム人、韓国人、色々な国籍の人がいた。僕らはそこで歌を歌ったり、お菓子を食べたり、ゲームをしたり、英語の勉強をしたりした。



あるとき大学構内でリンちゃんと話をしていて、英語を勉強したいという彼女を僕は教会の英会話教室に誘うことにした。

正直僕は嬉しかった。彼女と共通の話題もできたし、毎週1回彼女と一緒に帰る口実ができたのだ。

物事は当初の僕の目論み通り進んでいた。



半年程経っただろうか、僕達は相変わらず昼休みに教室で駄弁ったり、教会に通ったり、時々ご飯を一緒に食べにいったりもした。


ある日の教会からの帰り道。この頃になると僕は彼女に対する気持ちと下心を抑えられなくなっていた。

特に前もって決めていたわけじゃない。

彼女と駅で分かれた後、僕は衝動的に彼女の声が聞きたくなって電話で告白をしていた。

暫くの沈黙の後、「また今度ね。」

その一言で会話は終わった。

季節は冬になろうとしていた。



年を越して、春休みになり、僕は大学4年生になった。

僕は自分で作ったサークルにも顔を出さず、教会に通うことも止めていた。

あれ以来彼女と会うこともなかった。



4月になり、僕は一社から内定をもらい就活を終えた。

あるときふと彼女のfacebookページを覗いてみた。



彼女にはドイツ人の彼氏が出来ていた。

僕は笑うしかなかった。



こうして僕の「外国人の彼女を作る」という大勢を巻き込んだしょうもない作戦は失敗したのだ。



その後僕は大学を卒業し、彼女は大学2年生になっていた。

あるとき彼女からfacebookを通してメッセージがきた。

そこには結婚の文字があった。

送られてきた彼女の写真はなによりも幸せそうだった。

但し相手はドイツ人ではなく、僕もよく知っている、語学サークルを通して知り合った中国人留学生だった。



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