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13/6/19

プログラムの講師(5)

Image by Olia Gozha

研修は残り2週間と佳境に入ったが、スケジュールの進み具合はまずまず予想通りだった。

前回書いた脱落すると予想した4人は、自尊心を傷つけて欲しくないという要望があったが、別カリキュラムをやらせることにした。

カリキュラムのレベルを上げていくことをやめ、レベル5で学習するSQLというデータベースがらみのスキルを特化させるという方針で上司に提案した。


「SQLで誰よりも出来るようになればいい。」

私はその4人の自尊心を傷つけないように言ったつもりだが、やはり別メニューになることへの抵抗があるようだった。

しかし現実はいつでも厳しい。それを先にくらうか後でくらうか。いずれにせよ、ほとんどの人間はくらう。

彼らから質問があると先頭集団の誰かに流して、私と相方の講師は中段グループに専念した。


先頭集団と呼べるのは8人ほどだ。そのうち4人は既にカリキュラムを終わらせていた。ストックの問題を出しつつ、回答する側になってもらっていた。

「人に教えるという経験は、必ず役に立ちます。なにが分からないのか、正解を教えるのではなく、どう答えれば理解されるのかを考えましょう。」

閉塞された組織の中である種の特権を与えられることに彼らは明らかに満足していたし、また非常に役に立ってくれた。

一日に一回4人を集めて、どのように教えたかをみなで共有させる時間を作ったのも功を奏した。


残りの20人が中段集団。この集団は混沌としていた。

カリキュラムから少し進んでいる者、カリキュラム通りの者、そして、遅れている者。

この遅れている者が10人ほどいた。

32人の合格者ということは8人まで脱落させることができる。

4人はすでに確定しているから、この中段の遅れている10人から6人以上合格までもって行けばいいわけだ。

数字的には初日にくらべ達成しやすく見えるが、なかなか困難な状況だった。

それは、カリキュラムを絶対に終わらせたい!という覇気が彼らから感じられなかった。

しかし、新卒だからなのか毎日補講をして一生懸命やってます。というアピールはしてくる。

理解したり、進んでいるかというとそうでもないのだが。。。

とにかく、彼らの進まない原因がよくわからないので、その10人を相手に一人づつ毎日朝と夕方に進捗管理をすることにした。


「それで、今日はここまで進めないとまずいけど、実際どこまでできそうですか?」

「頑張ってここまで進めます!」

「わかりました。分からなくなったら、ある程度時間を決めて質問してください。」


次、


「このままいくと、カリキュラム終わらせられないよ。」

「終わらせたいです。」

「でも、昨日ここまでやるっていったのにできてないよね。」

「すいません。」

「いや、別に謝る必要はないんだけど、どうやったら挽回できそう?」

「補講に今日は参加します。」

「わかりました。じゃあそれで一旦スケジュールを考えてみて。」


次、次、次、


その10人それぞれの性格というか、雰囲気というかに合わせて問題点を指摘したり、アドバイスしたり、煽ったり。

この進捗管理の効果は高かった。補講を強要はできないが、免れないことを認識させれたことも大きい。

残り日数でなんとかいける気がしてきた。


つづく

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