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一本の映画を撮るように、人生をプロデュースする話。(第3章:答えは東京に 編)

Image by Olia Gozha

第3章:答えは東京に 編(28〜34)


28

”剣は心なり”とはよく言ったものだ。



気持ちや生活が充実しているときは、剣道もそう。


だが、逆も。



心の乱れは、”剣”の乱れ。



高校での剣道は、

オレが愛した剣道ではなかった。



「剣道では食っていけないんだから、勉強しろ!」


真意は別のところにあるんだろうが、

顧問に言われたこの言葉が忘れられない。



だが、


全ては、自分の未熟さや、努力の足りなさが招いたものだ。


自業自得なんだよ。




ーーー


中学では、定期テストで学年1位を数回獲得したことがある。


調子に乗ってたんだろう。


ちょっと本気を出せば、高校でもNo,1に成れると信じてた。



甘かった。



どんどん置いてかれた。


自分を過信しすぎていた。


頭では分かっているが、

身体が動かない。


部活でヘトヘトになって帰ってきて、宿題すらままならない状態。


だから、



分からない。

勉強が面白くない。

宿題をしない(きつくて出来ない)

分からない。


この負のスパイラルに一度ハマってしまうと、

なかなか抜け出すのは大変だ。



29

怠惰な生活が始まった。


宿題をやらなくなったお次は、


早朝に実施されていた特別授業(特課)をサボりがちに。



「他の高校は7:00の電車で通学してじゅうぶん間に合うのに、

なんでオレの学校は6:00の電車に乗んなきゃいけないんだよ??早すぎるだろ。

メンドクセー。」


・・・今改めて振り返ると、ぶっとばしてやりたいくらいナメたことを言ってるな。



そのお次は、


怒らない先生の授業は基本、”寝る”。



深夜遅くまで付き合ってた彼女とかと長電話。


電話代が高すぎると親にも何度も何度も怒られた。



「じゃあ、自分で稼ぐからバイトしていいか?」​と親に尋ねるが、​


校則で禁止されてるので、もちろん許可してくれない。



イタチゴッコ。



そんなこんなでいつも睡眠不足。


自分の体調もコントロール出来ない。


自分の感情もコントロール出来ない。



楽な方へ。


楽しい方へ。


30​

怠惰な生活は、ゆっくりと心と身体をむしばんでいく。


あまりにもゆっくりなので、


いつでも元の生活に戻れるんだろうと思ってしまう。



もう遅い・・・。


戻れない。


ーーーーーー


勉強や剣道で活躍できなくなったやつが

どうにか手っ取り早く自分の居場所を確保する方法。


”バイク”

”ピアス”

”ヒゲ”

”変なカタチの制服”

ここでは言えないことも。




朝、学校に行く前に、家の窓ガラスを蹴りやぶったこともあった。



グチャグチャの感情。


それがカッコいいと思ってた。


そうしないと自分を守れなかった。





甘い!


甘いんだよ!


当時のオレ!!




絶対に安全な柵の中から、外敵に向かって吠えてるドウブツ。



あまりにも哀れ。


あまりにも繊細。




今のオレが当時のオレに触れることができたら、


胸ぐらを掴んで、一発、喝を入れて目を覚まさせてやりたい。



31

そんな精神状態で、剣道がうまくいくはずも無い。

頭と心と身体が別々のところにある感じ。


中学の時、眼中に無かった相手にまで苦戦する始末。



「アイツ、中学の時、もっと強くなかった??

進学校行って、勉強ばっかしてるから弱くなったんじゃない?(笑)」


試合会場で耳にした言葉でさらに自分と自信を見失っていった。



ーーーーー



高2の冬だったか。


剣道三段を取得したあと、


オレは剣道部を辞めた。



気づいたんだ。


ここは剣道をするところではない、

”勉強”をするところだということを。​



大人は”文武両道が大切さだ!”と無責任に言い放つ。



オレは”本音と建前が分からないバカ真面目”だったんだ。



進学校は、上級の学校へ行くための場所だ。


それなら、


”ここでは勉強を頑張りましょう!”とストレートに言って欲しかった。



期待に応えようとして、


どっちも頑張ろうとして、


でも出来なくて。



でも、出来るやつはやっぱり居て。



理想とする自分から遠ざかって行く。



過去の栄光はもう虚像。



葛藤。


そして、


また、


葛藤。



もがき続けているが、

まだ出口と答えは見えてこない。



32

バカ真面目が出した答えはコレだ。


「ハイハイ。剣道ではメシが食えないんですね。なら、お望み通り辞めてやる。」



ーーーーーー


オレが辞めたあと、部員も一人また一人・・・と辞めていった。


同級生の部長と副部長には本当にすまないことをしたと思っている。


ただ、

みんなが大好きだった剣道は、そこにはなかったと思う。



オレは辞める時、顧問に、


「剣道部は辞めます。ただ、剣道は辞めません。」と言って別れた。


部活に行かなくなった代わりに、地元の社会体育の剣道に参加した。


通称、”夜練(よるれん)”



地域の小中学生を、その地域の剣道の先生たちが指導してくれる。



中学の時に参加していた夜練。


また戻って来てしまった。



全ては自分の未熟さや努力の足りなさが招いた結果。



ただ、


もっと教えて欲しかった。



オレはどうすればよかったのか。


何が間違ってたのか。​



何のための”勉強”?


何のための”剣道”?


”個性”って何だ?


”ルール”って何だ?


”自由”って何だ?


”義務”って何だ?


”教育”って何だ??






いつかの夜練の帰り道。


暗闇の中。


下り坂を自転車で一人駆け抜ける。


冬の冷たい風で身体が震えているのか。





「葛藤」は歌に乗せる。


歌詞の中に何度も登場する”東京”



そこに”答え”があるような気がした。




”オレは東京へ行く!”




矛盾だらけの世界の出口から、光が少し見えた気がした。



そして、


今度は、

決意による興奮で身体が震えているんだとはっきり分かった。






33​

大学でも剣道は続けた。


ただ、体育会ではなく、剣道サークル。


明治大学駿河台剣道同好会。



自分の都合がいい時に気軽に参加できて、本当にいい時間を過ごせた。



九州から東京の大学に行って、わざわざサークルで剣道をやるなんて、


本当に、”ケンキチ”だと思う。

(※剣道好きすぎる剣道キチガイのこと。)



今は、塾講師と言う夜のお仕事なので、


なかなか夜練には参加できないが、


それでも塾生から、


「今度練習来てくださいよ〜!やっつけてやりますから!」と、

挑戦状をたたきつけられたら、何とか時間をみつけて、たたきのめしに行って、



逆にやられている・・・・。



高校生にやられるのは仕方ないと思うが、中学生にまでやられるとマジでヘコむ。


また、町内で開かれる剣道大会には、団体戦のメンバーとしても参加させてもらっている。


塾生にも、剣道部の子が多くいるので、

そいつらとチームを組んで、優勝できたときの喜びは、本当にあの頃のままだ。



オレの知ってる剣道と、


オレが愛した剣道がここにある。



34

剣道を通して学んだこと。


”挨拶の仕方、敬語の使い方、先輩や後輩への接し方、礼儀”


”仲間やライバルの大切さ”


”頭と身体と心を鍛え、整えることの大切さ”


”目標に向かって真剣に頑張るカッコよさと大切さ”




小1から始めた剣道は、


オレの人生の大きな一部分となっている。



全ては、団地の両隣に住むお兄さんが、


”竹刀”を持って”素振り”をしているところを見て、


ただただ、”カッコいい!!”と思ったのがきっかけだった。


そう考えると、


”憧れる力”ってのも大事にしなきゃいけないな。



あいにくオレは生徒に憧れられる要素を持ち合わせていないので、


色んな先人の偉業を生徒にいっぱい紹介したり、

教科の本質や面白さを伝えたりしていかなきゃな。


生徒の”新しい世界”がそこからひらけていくかもしれない。​


オレが剣道と出会えたように。








第3章:答えは東京に 編 終わり。


第4章:歴史と勘右衛門 編に続く。



















































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