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干物25年生最初で最後?の恋

Image by Olia Gozha

25歳、彼氏いない歴25年。

そんな私にも恋の1つくらい経験はある。

22歳の冬の前、秋の終わり。

私には好きな人がいて、彼は異国の人だった。

期限がきてしまい、出稼ぎで日本に来ていたため

母国に帰ることになったのだ。

家庭の事情で今後日本にまた来ることは難しい。そんなことを口にしていた。

私は空を駆ける飛行機を見つけては好きな人を思い出し眺め、涙を流した。

そんな恋の悲しみを埋めるために私は初めての街コンに参加した。

私はその日無理をして高さのあるヒールを履いて参加者が見守る中、階段を踏み外し、イベント会場の階段で盛大に滑り落ちた。

最悪な気分で始まった街コンで私は彼に出会った。

初めて顔を見たときにとても素敵な人だと私はすぐにときめいたけれど、彼はきっと私のことは相手にしないだろうと思った。

私は常に自分に自信がなく、学生時代もいじめにあっていたので男の人がとても怖くて、街コンに参加して女の子として扱われるだけで満足していた程の人間なのだ。

街コンが終わり、ただ私はどうしてもその素敵な人とまたお話をしてみたくて、ぎこちない挨拶文をラインで送った。

そこで知ったのは私たちは偶然同じショッピングモールで働いていたこと。

それから好きな歌手や食べ物が一緒のこと。

物事の考えや感じ方が同じこと。

私たちは気がつけば朝から夜まで、仕事の合間にも連絡を取り、毎日たくさんの話をした。

それも馬鹿みたいにとても長い長文をお互い送りあって、

時々お互いの職場を覗きにいってニンマリ笑っていた。

気がつけば私はもう彼に夢中になっていた。

彼には素敵な写真を撮る才能があり、特に月と星綺麗に撮っていて、

いつもそれをフェイスブックにアップしていた。

私も月と星が好きで、彼の写真の虜になり、才能に惚れ、彼の全てを好きになり夢中になっていた。

しばらくしてから私たちは二人でデートをすることになった。

人生初の大好きな人とのデート。私は胸が高鳴り、自分の全てを気にしながら気になりながら、

お花畑の頭で力を抜くと笑ってしまう顔で破裂しそうな心臓とともに彼の待つ場所へ自転車を走らせて向かった。

とても大好きな人とのデート。

私は自分の頭のてっぺんからつま先まで変なところはないか気が気でなくて、お手洗いの化粧直しスペースにある鏡を眺めすぎて、待ち合わせに遅刻した。

その日は夢のようだった。

仕事終わりの数時間だけれど、たくさん話して一緒の時間を過ごして、クリスマス近い冬。

きっと私達は周りの人から見たら恋人同士に見えてると思ったらさらに私はニヤリとする口元をおさえなければいけなかった。

手を繋ぎたいけどまだ早いかな、繋いでくれないかな、とてもソワソワしたけれど握らなくて並んで歩いたままお別れをした。

私は幸せでいっぱいで満たされてた。

家に帰ってもずっとニコニコ笑いながら携帯を握りしめてた。

ただデートの翌日から彼から連絡が減ってしまった。

私は好きすぎて想いの行き場を失い、混乱と焦りを感じていた。

そんな時相談に乗ってくれたのは、街コンの時に彼と一緒に参加していた彼の友人だった。

友人の彼に相談をしていく中で、私はデート後から彼の気が私から離れていることを知った。

とてもショックで心の行き場をなくして途方にくれている私に、

友人の彼からお出かけのお誘いを受けた。

元気が出るようにどこかに一緒に行こうと手を差し伸べてくれたけれど、私はとても迷った。

だけれど彼の気持ちが私から離れた痛みに耐えられず、一日も早く忘れようと友人の彼からの提案に乗ってしまった。

そして、お出かけする以上は友人の彼とまっすぐ向き合わなくてはと、大好きな彼から借りていた大切なカメラを返そうと心に決めた。

綺麗な夕日に染まった寒空の下、私はカメラを大切に抱きながら大好きな彼と待ち合わせをしていた。

彼はカメラはまだ返さなくて良いと言ってくれていたけど、私は彼を1日でも忘れないと自分を保てなかった。

すぐに忘れたい、すぐに離れたい。ほんとは好きなのに苦しくて耐えられない。

カメラを返すときに彼は、じゃぁまたですかね。と一言いったまま黙ってた。

私はまたじゃなくてずっと一緒にいたくてもっともっと会いたかったのに涙溢れてきて、隠すためにその場からすぐ立ち去ってしまった。

とにかく彼の前から消えたくて、すぐに近くの夕日に染まった湖まで走って走った。

寒さも何も感じない寒空の下の湖を前に私は、周りに見られないよう気づかれないよう、声を押し殺して空を見上げながらたくさん涙をこぼした。

自分が溶けてしまうほどたくさんたくさん泣いた。

これで良いんだ、何度も何度も自分にそう言い聞かせて胸の痛みの塞ぎ方も知らないまま途方にくれて泣いた。

けれど後は彼を忘れるだけだと気持ちが軽くなった気もしていた。

彼の友人とお出かけをしたのはその数日後。

二人で映画を見て食事をした。

友人の彼はとても優しくて、私のために色々な計画を立ててくれて、私が行きたいといっていた場所にサプライズで連れていってくれたりたくさん楽しませてくれた。私の元気が出るように、そう何回も言いながら。

けれど友人の彼の笑顔を見るたび、私は胸が締め付けられた。

学生時代はこんなことをした、友人たちと飲みに行った、旅行をした。

そんな話を聞くたびに、あの人も一緒に行ってるのか、あの人も友人の彼とたくさん笑って過ごしているんだ。羨ましい。

そんなことばかり考えてしまった。

友人の彼は1日の終わりに私を駅まで送り、私の目をまっすぐ見て言った。

俺には敬語抜けなかったね。

私は気づかなかったけれど、好きな彼にはいつも敬語は使ってなかった。

なんでそれを友人の彼が知ってたのかは分からなかったけど、

自分の胸の傷を癒すために私は友人の彼を利用してしまったんだ、汚い自分に気づき、また友人の彼の気持ちにも気づいていながら傷つけたことにとても胸が傷んだ。

友人の彼は、車で送るね。と一言私の目見ることなく話し、私の自宅まで車を走らせてくれた。

車の中で沈黙が流れた。

私は気まずさと混乱を抱えて、何を口にしたら良いか分からないまま俯いていた。

あのさ。

友人の彼が口を開いた。

俺、謝らなきゃいけないことがあるんだ。

嫌な予感がした。

友人の彼が話してくれたのは、

本当は私の好きな彼の気持ちは離れていなかったということだった。

私と出掛けるためについた嘘で、本当はあの時のデートの後に彼は体調を崩し、また多忙になってしまったために連絡が取りづらくなってしまっていたこと、私が勘違いをしていたこと。

ゆっくり話をしてくれた。

私は口にする言葉が見当たらず、その代わりにたくさん涙を流してしまった。

なんて馬鹿なことをしたんだろう、自分の感情だけで走って、彼を突き放すようなことをして。

けれどもう弁解するにも正式に付き合ってるわけでもない関係じゃそんなことしてもおかしい。

自分の早とちりで戻れないことを知って涙が止まらなかった。

友人の彼は私の頭を優しく撫でてくれながら、なんでそんなにあいつが好きなの?と呟いたけれど私は返す言葉もなくただ泣いた。

私は自宅まで送ってもらった後、一人で大泣きしながら近くに住む友人の家まで歩いた。

苦しくて悲しくてどうしようもなくて、人生で初めて知った。

沢山泣くと息ができなくなるんだと私はその時初めて知った。

涙が止まらなかった。

そしてその時になって私は、彼の友人の優しさにも手を伸ばした自分の汚さを自覚した。

友人の家で気のすむまでひたすら泣いた。

けれど次の日も次の日も時間の合間ができると涙が溢れた。

ズタズタになった私の心を救ったのは絵だった。

ひたすら絵を描いた、忘れるよう、気持ちをぶつけながら。

いつかこのペンが私の気持ちを描ききり、いつかこの紙が私の想いを全て吸い込んでくれることを願って。

彼と同じ星を見るために、カメラを買って私は星も月も撮った。

彼ほど上手く写真を撮れないこと、彼がもし隣にいてくれたらきっと上手く撮れたのに。

後悔だけが残った。

大好きな人、とても素敵な思い出がとても悲しすぎる思い出と一緒になってしまったこと。

そしてその想いが私の中で消えることなく血液の中を泳ぎ、頭の中に染み付き、心臓を大きく動かして数年経った今でも生き続けている。

彼を忘れようともがいたけれど、結局もがくほど辛くなった。

幸せなまま、そして後悔で終わった恋は私の中で最初で最後の恋という名前でそっと大きくしまわれた。

彼を忘れようとしたけれど今も忘れられない、けれど忘れられなくて苦しい想いに任せて恥ずかしいことも沢山してしまった今、彼には機会あっても一生もう会えない。

引きずっていると言われたら引きずってる、未だ、とても、どうしようもなく。

けれどそれで良い。

私の大切な友人が言ってくれた言葉。

そんなに好きになって忘れられない人の次に好きになった人が現れた時、もっと素敵な恋ができるから大丈夫だよ。


私はその言葉を糧に生きている。

いつ本当に痛みのない思い出になるかなんて分からない。

けれどいつかゆっくりでも、時間をかけて傷深い恋の思い出を振り返りながら笑うことができるように、私はいつかの日を夢見て、

諦め悪い私の心を抱えながら今ここで息をしている。

そして今日も元気に缶チューハイを片手に、

おつまみ、そしてペンと紙をテーブルの上に置き

映画を眺めているのだ。

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