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『ご指導』

Image by Olia Gozha

『ご指導』/うるとらブギーズ佐々木 

(写真 左)



この間、とある牛丼屋さんに行った時の話。


店内に入ると、「いらっしゃいませ」と、か細い声が聞こえて来ました。

声のする方を見ると、若い男性の店員が立っていました。

そしてそのすぐ横には年配の女性が立っていて男性に向かって「もっと大きい声で言って下さい。」と指示をしていました。


男性は「いらっしゃいませ」とさっきより若干大きい声で僕に向かって言いました。


年配の女性は「もっと大きい声で言って下さい。」とさらに指示しました。


男性は「いらっしゃいませ」とそこそこ大きな声で僕に向かって言いました。


すると女性は「最初からそのぐらいでやって下さいね。じゃあ、お席ご案内して。」と言いました。




どうやら、新人の男性店員をベテラン女性店員が指導しているようです。




僕は3回の「いらっしゃいませ」を受け3回の会釈を返した後、席に案内されました。




そして注文を聞かれる時も二人は一緒でした。



女性「ご注文はいかがいたしましょう?って聞いて。」


男性「ご注文はいかがいたしましょう?」


僕「えー、牛丼で。」


女性「量は並でよろしいでしょうかって聞いて下さい。」


男性「量は並でよろしいでしょうか?」


僕「はい」


女性「かしこまりました。少々お待ち下さい。って」


男性「かしこまりました。少々お待ち下さい。」


僕「はい。」


女性「失礼しますって。」


男性「失礼します。」




こんなに、何を言われるか前もって分かる状態で返事をしたのは初めてでした。



しばらくして、料理が運ばれて来ました。もちろん二人一緒です。



女性「お待たせしました。牛丼並でよろしかったでしょうか?って聞いて」


男性「お待たせしました。牛丼並でよろしかったでしょうか?」


僕「はい。」


女性「じゃあ、気をつけて置いて。」


男性「はい。」


※すごくゆっくりお盆を置かれる。


女性「ご注文の品は以上でよろしいでしょうか?って聞いて下さい。」


男性「ご注文の品は以上でよろしいでしょうか?」


僕「はい。」


女性「ごゆっくりどうぞって」


男性「ごゆっくりどうぞ。」


僕「はい。」





別にかまわないんです。


別にかまわないんですけど。

僕は「他に方法あんだろ。」と思いました。


別にかまわないんですけどね。


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