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13/6/2

よくある夢破れて山河ありの話

Image by Olia Gozha

 昔々あるところに、お転婆な女子中学生がいました。いわゆる不登校児でしたが、いじめにあっていたとか、病弱であったとかではなく、行きたくないから行かないという、真の不登校児でした。卒業しても、仕事はなく毎日ぶらぶらとしていました。

 母親はその界隈ではかなり有名なホステスでした。その紹介でスナックで働きだしたはいいものの、遅刻はするわ欠勤はするわ、ホステスでありながら客は平気で殴るわで、預かったママもさすがに手をこまねいて数か月後には別の店を紹介して難を逃れなければならないほどのお転婆ぶりでした。そんなこんなで数年間にわたり数店のスナックを渡り歩いたその娘ですが、一向にお転婆ぶりに歯止めがかかることはなく、ついには働く店もなくなってしましました。

 見るに見かねた母親は、自分で店を立ち上げ、娘をそこで働かせることにしました。そして数年後には引退し、娘がママとしてその店を経営することになりました。とはいえそのお転婆ぶりが影をひそめたわけではなく、あいもかわらず客を罵倒し殴り続けていましたが、幸いにして母親譲りの美貌を備えていたため、マゾヒスティックな男性客でその店は繁盛しました。

 しかしながら、休み癖に振り回されたスタッフは次から次へと入れ替わり、ついには自分一人で店を切り盛りしていかなければならない状態になってしまいました。それでも娘はめげることなく、やる気が起きないときは休業にしてどうにかこうにか続けました。

 おりしも世の中は不景気の真っ最中で、数年後にはその界隈近くの巨大な販売店が軒並み撤退することになり、その界隈を出歩く人口自体が年々減少していくことになったのですが、娘は店舗を移動したり数少ない選択肢のなかから厳選した新スタッフを雇い入れるなどしてやりくりしていきました。

 そんなある日外人が店にやってきました。中卒の娘にその外人の話すことなど理解できるはずもありませんでしたが、店のスタッフを口説いているというか、売春宿かなにかと勘違いしているくらいのことはわかりました。娘は持ち前の強気な態度でその外人客を追い出し、以後外人出入り禁止にしてしまいました。その界隈は一種の政策的なものから、すでに外国人観光客が大方を占めていたせいもあり、店は残されたわずかばかりの貧しい内国人マゾヒストを相手に経営していかなければなりませんでした。

 そしてついに店をたたむ日が来てしまいました。こういうのを自業自得というのでしょうか。こういうのを人災と呼ぶのでしょうか。人災と天災の違いは何でしょうか。その後娘がどうなったのか知りません。知りたい方はもう少しこの国の政治や経済について勉強してください。あしからず。

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