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年明け

Image by Olia Gozha


2018年。年が明けて1週間が過ぎた。

昨年の暮れは実に忙しかった。週に2回、車で東京まで行ったり、孫が4-5日やって来て帰った後、姉が5日間も居た。この古い寒い家で新年を迎えるのは初めてである。

門松も、すぐ横の川辺にある松の木から、形の良い枝を頂戴し、庭先の赤い実のついた南天の枝を添えて、階段の入り口の両脇の門と玄関先にも大きな松飾を手作りして飾ってみた。玄関を入ってすぐには水仙を山ほど飾った。全て、家の周りからの頂き物で済んでしまった。他所の家の飾りものを参考にしながら、自己流のしめ飾りを作ってみた。

 

こうして新年を迎える3日前は東京で息子たちと過ごしていた。年の暮れをみんなで食事をすることになり、どうしても一度は連れて行きたい鮨屋があるというので、出かけたのである。その店は目黒の住宅街のど真ん中にあり、タクシーでもカーナビで案内してもらわないとたどり着けないほど、静かな通りにあった。カウンター席の小さなお鮨屋さんだが、これが知る人ぞ知る名店なのだ。まず最初に酒の肴が数種類、それに合わせて、銘酒が蕎麦チョコくらいのぐい飲みで出される。どれも、唸るほどおいしかった。最後にいよいよ握り鮨が手渡されてくる。これで一通り食した後の満足感は何とも言い難い。私はそれほど食通ではないが、魚の鮮度、旨味、料理の幅の広さ、日本酒の種類とこれほど整ったお店はあまり知らない。店を出るとき、店主から1冊の本を手渡された。ありがとうとお礼を言って、その店を後にした。

 

年が明けて、来客も居なくなってベランダの陽だまりの中で、先日の鮨屋のご主人から頂いた本を読んでみた。その店の成り立ち、日本中の魚市場から仕入れる魚、勿論築地の魚河岸もあるが、北海道から、九州、沖縄までご主人がご自分の足で歩いて、目で確かめたものしか取り入れない、しかも旬で鮮度が第一。日本酒にしても酒蔵に出かけて、吟味したものを出す。徹底的にこだわりをもって、美味しいとうなずける、そんな料理を出す。すごい精神の持ち主だった。もっと驚いたことに、この本に出てくる、新潟の酒マイスターは私と同じ高校の同窓生であったり、なんと、ご主人の田舎が、伊豆の伊東だったり、もっとびっくりしたのが、ご親戚が高知県の中村にいて四万十川でとれたアユを目黒の鮨屋で出すという。こんなに近しい人が居たのかとびっくりした。伊東の海は毎日散歩している。まして、私は小学校まで、中村に居た。四万十川で夏は泳いでいた。

この本を読み終わって、もう一度あの目黒の鮨屋に行ってみたいとひそかに思っている。

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