top of page

17/9/21

純情ホスト② ダメホスト編

Image by Olia Gozha

繋ぎでBに在籍していたスーパーおじさん軍団がBを去る頃には、徐々に新しく新人が入ってきていた。



SY社長がおじさん軍団がいる間に、気合を入れて従業員の募集や補充をしていたからであろう。

ふと気づけば、Bのホストはいつの間にか14名程になっていた。



その時期の新人達も、やはり5人中1人が3ヶ月後なんとか残っていたという様な感じに変わりはなかった。


その時期に入店した中で、2~3名を除けば、

ギリギリ顔を覚えているぐらいの従業員ばかりだった。



そう偉そうに表現したが、その中で私も結局は・・・

やはりダメホスト、

全く出来ていなかった。



その時には、私も売上を上げなければいけない状況にエスカレーター式になっていた。

店としては、売上を入ったばかりの従業員に期待するわけにもいかず、

売上を上げろと言われるのが私とS君がメインになったからだ。


その頃を境に以前にはなかった、売上を求められるようになっていった。


もともとの動機が女である。


それまでは、売上を意識してやってきていた訳ではなかった。

ナンバーに入っていないと格好悪いと思った事もなかった。


楽しく飲めれば良かった。

相手と自分が楽しく飲めれば良いと。


しかし当たり前だが売上がなかったら店側は、店の家賃も払えない。

そんな事も考えた事はなかった。


責任を負う立場になっていなかったからだろう。

以前であれば自分のお客さんが来ていなくても、他の主要メンバーの誰かが、お客さんを呼んでいた。


今はもう、その人たちはいない。


もう自分達以外は、まだ右左もわからない従業員たちばかりなのだ。



少し時間差で、社長が次の一手をうった。


私がBに入店するよりも前に、

Bでナンバー1をしていたMKさんという人をSY社長は呼び戻す事に成功した。



以前のBのナンバー1だったMKさんはすごかった。


背は高くなく、スタイルも良くはないが

顔は全体的にバランスのとれた顔立ちをしており、目は大きめ。

日サロで入念に焼いており、七三分けの茶髪で緩めのパーマがその時の女受けを正確にとらえていた。




グループに隠れて、東京でホストをやっていたのだが、

それがバレて戻されたというのもBに戻ってきた原因の一つだと聞いた。



Bに入店する前にMKさんとR華社長が繋がっていた事もあって、

1年弱ほど前の、私がBに入店したての頃、MKさんがプー太郎の時に何回か会った事があった。


その時のホストをやっていない無職の時期でも、

女が好きで、呼吸をする様にナンパをする人であった。





そういった経緯もあってか、

Bへ出戻ったばかりだったに関わらず、

今までのどのホストよりもお客さんを呼んだ。




自分指名のお客さんが一人も来ない日のことをボーズと言うのだが、

MKさんはボーズの日がなかった。

むしろ平均的に3卓ぐらいのお客さんを呼んでいた。


完全にホストを仕事として考えている人であった。


いきなり、まったく見た事もない美人の風俗嬢を連れてきたりするような人だった。

ちなみに余談だが、芸能人の中谷○紀に激似で本気で驚いた記憶がある・・・。




そんな、誰もが認めざるおえない結果を出し続け、

MKさんは入店(出戻り)2ヶ月程度ですぐに店長という肩書きになった。

SY社長の次だ。


そして実質、現場はMKさんが仕切るようになっていく。




MKさんは怒ると非常に怖かった。

頭も切れる人であったので、こちらが考えている事をすべて裏まで見通されていて、

いいわけなど通用しないし、結果が出ない理由も正確にダメだしをしてくる。


さらに・・・超がつく酒乱だった!!


MKさん「K、お前なんの為にホストやってるの?」


私「・・・・・・・・・。」


MKさん「金じゃないの?」



まさか

「かわいい女と付き合うのが目的で~す。」

とは言えない様な空気だ。そんな空気に押されるがまま、


私「はい・・・・お金です。」


MKさん「そんな仕事の仕方だったら、お金なんか貯まんねぇぞ?やる気あんの?」


私「・・・・すいません。」


MKさん「もっとガツガツ行けよ。」


私「・・・・・はい。」


そんな風に怒られるのが日課になっていた。

今であればMKさんが正しい事を言っていたのだと思える。

MKさんも立場上言わなければいけないのもあったのだろう。

それはそうだ、ホストはいつまでもできる商売ではない。

履歴書にも書けない・・・。

つまり


1 早めに見切りをつける
2 ホストでお金を貯め将来は自分で何かをやる


しかない。


ホストをやっている以上それは宿命なのだ。

プレイヤーのホストとしては、いつまでもやれる商売ではない。


自分に真剣に向き合っていなかったからなのか、

その時の自分には辞めるという選択肢はまだなかった。

中途半端に生活ができてしまっていたのも原因かもしれない。


ホストは辞める奴はすぐ辞める。

なぜなら、生活がすぐ成り立たなくなるからだ。


そして、次の段階にも2種類があった。


「ホストとしてしっかりとお金を貯める事ができている人間」


「中途半端にお客さんができて、生活ができてしまう為、

お金は貯まらないがダラダラ続けられてしまう人間。」




私は、後者であった。

MKさんに何度言われても、自分で本当にお金が欲しくて欲しくてしょうがないと思っている訳ではなかったので、MKさんに言われる事を実行に移していなかった。


「ホストが寝るな。」

「寝るのもお客さんと寝ろ。そうすれば、寝ている時間も仕事になる。」

「マメに連絡しろ。」

「暇ができたらキャッチしろ」



毎日に近いほど怒られて私は弱りだしていた。

今であれば、気にかけてくれているからの指導だと思える。

だがその時の私は、MKさんと私のホストとしての志の違いを肌で感じ、

差が歴然としすぎていた為に、それが余計に自分のダメさを感じさせた。


(俺、今はなにが目的でホストやってるんだろ?女?それも一つある。

でもやっぱりお金も欲しいよな・・・・

このままダラダラ続けて、最終的にお金がなかったら・・・みじめだよな・・・

ブランド物を身に着けていたって・・・・実際の生活を考えたらS君と5畳に二人暮らし。

食事はなんとかお客さんに食べに連れて行ってもらってる状態だし・・・。

もう2年もホストをやってるのに売上なんてクソみたいなもんだし・・・。)


久しぶりに

アデランスのお世話になりそうな程悩み出していた。




そんなダメホスト全開だった私だが、

一念発起し、お客さんとホテルに行った事もあった。


・・・そこでまた、ダメホスト爆発だった。





好きだという気持ちが入っていないと、体が反応しないのだ。

そう、起たないのだ(ノー ボルケーノ)。

酒に酔っているという事も原因の一つだとは思うが、


MY SONが反応しない。

好きでもない女とホテルにいるという事が自分の頭を冷めさせる。

女の子が近寄って来た時に考えていた事は正直


(近寄ってくるんじゃねぇよ!)


と思っていた。

結局、酔っているという事を理由にしてなんとか逃げていた。

ちょっと私はデリケート過ぎたのだろう。



好きではない女でも、本能のままに抱く様な・・。

そういう意味で、男らしい男でないと成り立たないのであろうと思う。

女性は軽蔑するかもしれないが、もしその立場になったら、

抱くべき時にしっかりと抱いてくれる男の方が結局は女性も惚れるだろう。

THIS IS MAN である。




やはり体の関係があると全然違うのだ。

女性も情が入るのか・・。

本当に助けて欲しい時に助けてくれる可能性がグンと上がる。

女の子の態度も変われば強気に頼み事もしやすくもなる。


よく水商売のホステスさんなどは、

「お客さんと体の関係になったら、ダメよ。お客さんが来なくなる。」


などというが、ホストの場合はまったく逆である。

男と女でこうも違うものなのかと思うが・・・。



私の場合は最悪で、

ホテルや家に行って何もせずに帰る。

(近寄るな!)

と思っているのが態度にもでてしまっていたのかもしれない。

そうなると、ホテルや家に行くのがむしろ逆効果であったであろう。

相手の気持ちを考えればそれもそうだ。




純粋な事がいい事だとは全く思わない。

抱けない事によって、むしろホテルや家に行く前より関係が冷める事の方が多かった。



そういった意味で、完全にホスト失格であった。

無理矢理はもちろん論外だが、

そういうシュチュエーションになったら誰であろうが

野獣の様に抱けるような男の方が男らしいと思う。


その気持ちは今でも変わらない・・・。




今はもうそんなシュチュエーションはないですがね(笑)






ホスト一人一人が店という看板を借りている個人事業主の様なものだ。

結果がでなければ何もしていないと見なされる。

売上やお客さんが無ければ、自分がそのまま苦しくなるだけ。



結果を出そうとしてホテルにいけばそんな状態だ。

お客さんが気に入ってくれればくれる程、ベッドメイキングの可能性は高まる。

だが、私の場合はベッドメイキングが、そのお客さんとの関係の終わりを意味していた。


酒を飲んで紛らわせようとするが、起きれば現実だ・・。

またMKさんに怒られる・・・。




日々葛藤しながらも季節は夏になっていた。

相変わらず、私は売上が安定するという事はなかったので、0時出勤になったり、1時出勤になったりと情けない状態が続いていた。



そんな状態でも明確に覚えている辞めない理由が二つあった。


1つは、私がいたグループは無断で辞めたら実家に怖い人が来るという噂が立っていた。

それをバカ正直に信じていた。



もう一つは、いつかは・・・

いつかは逆転満塁ホームランを打てるようなお客さんができる、と夢見ていた・・・。



逆転満塁ホームランを打つ確率を高める為には、お客さんを育てる、

もしくは長い付き合いが大事だった。


一つの例で言えば、

知り合った当初はヘルスで働いていた子が、いつの間にかソープで働くようになっていたり・・・。



勿論、ヘルスよりもソープの方が稼ぎは大きい。

ヘルスで稼ぐ子が月収80~100万だとすると、ソープは月収150~200万近くはある。

あくまでも、稼ぐ子の例ではあるが・・。



色恋のお客さんの場合は警戒心が薄くなってから・・・。

つまり自分がお客さんではなく、


ホストの本当の彼女なんだと信じるようになれば無理を聞いてくれる確率が格段に上がる。


そうなるまで女の子によって個人差はあるが、もちろん時間がかかる。


そうなのだ、逆転満塁ホームランなどはほぼない。

結局日々の積み重ねなのだ。



そんな中途半端な仕事の仕方をしている私に一点すらなかなか入らない・・・。

ファールはけっこう打っていたが、所詮自己満足だ。

打った気はするが、点には結びつかない・・・。



店に新規のお客さんが来店して、電話番号を交換しても、後が続かない。

お客さんと連絡を取り続けても、私に好意を持ってくれればくれるほど色恋の方へと流れていく。

そうなるとそのうち付き合う付き合わないの会話になるのは当たり前だ。

付き合えば、男と女の夜のプロレスをしなければならない。

付き合わなければ、早い段階でお客さんは離れていく。

プロレスを恐れ色恋の方へ流れていく会話を、

あえてすごく鈍感な男の振りをして逃げていた。



そんなものは何回も使えない。


自分に強い好意を持ってくれるお客さんであればあるほど、

売り上げに協力してくれるお客さんになる可能性は高い。

協力してくれる可能性が高いお客さんになればなるほどアプローチが激しくなる。


私が煮え切らない態度をとり続ける。

次第にお互い連絡をとらなくなる。


店にもこなくなる。


ジレンマである。


売上を上げてくれる可能性が高いお客さんは、

体の関係を求められる可能性も高い。


全てのお客さんがグラビアアイドルだったら悩み等なかったであろう。

むしろ悩み相談室を自分で開業していたかもしれない。




現実と言えば、お世辞にも、かわいいとは言えない子ももちろんいた。

好きでもない。可愛いとも思えない。



そうなれば、私の経験上

MY SONがCOOLな状態からHOTな状態にならない事はわかりきっていた。



これがファールの内容である。


ホストは私だけではない。

ホストクラブも無数にある。

やはり女の子も好意を好意で返してくれるホストを選ぶ。


それが例え嘘だとしても・・・。





その一方

好意を持ってしまう様なかわいい女の子も、もちろん来店していた。

しかし、かわいい子はコントロール出来ない確率が高い。

お金を使ってくれないという意味ではない。



可愛くて、美人で、ハングリー精神が旺盛な子はお金を稼いでいる子が多い。


当然だろう。

キャバクラでもクラブでもヘルスでもソープでも、

かわいい子の方がお客さんが付きやすい。

(もちろん、接客や愛嬌でお客さんが多い子もいますよ!)


そして、自分自身で稼いでいるからこそ自信があるのか?

プライドが高い。


プライドが高いからこそお金を使ってくれる時は、逆に結構な金額を使ってくれる。


「お金をケチっている」

「お金を持っていない」


と思われたくないのだろう。

金払いもいい。



だが何度も言うが、コントロールできない可能性が高い。

自分が店に行きたい時、自分で店に行くべき時だと思った時に来るだけだ。


自分の意思でお金を使うのではなく、
お金を使わされている


と感じるのが我慢できないのであろう。


頑張っていても、店内の仕事を頑張るだけでは中々結果がでない厳しさ。

頑張りでは中々コントロール出来ない、

自分の気持ちと体の問題に直面していた・・・。



←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

フリークアウトのミッション「人に人らしい仕事を」

情報革命の「仕事の収奪」という側面が、ここ最近、大きく取り上げられています。実際、テクノロジーによる「仕事」の自動化は、工場だけでなく、一般...

大嫌いで顔も見たくなかった父にどうしても今伝えたいこと。

今日は父の日です。この、STORYS.JPさんの場をお借りして、私から父にプレゼントをしたいと思います。その前に、少し私たち家族をご紹介させ...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。

「どんな仕事を選んでもええ。ただ、○○がない仕事だけはしたらあかんで!」こんにちは!個人でWEBサイトをつくりながら世界を旅している、阪口と...

あのとき、伝えられなかったけど。

受託Web制作会社でWebディレクターとして毎日働いている僕ですが、ほんの一瞬、数年前に1~2年ほど、学校の先生をやっていたことがある。自分...

ピクシブでの開発 - 金髪の神エンジニア、kamipoさんに開発の全てを教わった話

爆速で成長していた、ベンチャー企業ピクシブ面接の時の話はこちら=>ピクシブに入るときの話そんな訳で、ピクシブでアルバイトとして働くこと...

bottom of page