top of page

17/9/18

純情ホスト① 立て直し編

Image by Olia Gozha

口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる①~⑱

からの続きになります。



ほんのり田舎育ちの少年。

夜間家に鍵をかけないような家庭だったので、

適度に人を疑うという自己防衛を身に付けるのに時間がかかってしまっていたのかもしれない。







ホストの大半が飛んでしまった、我が職場であるホストクラブ「B」。

ほぼ壊滅状態だったが

いつまでも上の人間がその状況を静観しているはずがない・・・。



1月の末、グループ内のもう一店舗のホストクラブから、上の人間が派遣されてきた。

名前はSYさん。

Bでの役職はSY社長になった。

もちろん、雇われ社長である。

普段は温厚な人だったが気分屋で、一旦スイッチが入ると何をするかわからない怖さがあった。


顔は・・・

正直イケメンではなかった。

背も165cmぐらいか?

スタイルがいいわけでもなく、なぜ社長に抜擢されたのか不思議に思っていたぐらいだ。


SY社長と仕事をしていく内にだんだんとわかってきたが、

グループのトップに愛想を振りまくのが上手く、

トップに可愛がられていたからこその人事だった。




あまり詳しくは書けないが、グループのトップはとてつもない威圧感をまとっており、

自信の表れだろうか、大きい声で勢いよくしゃべる人で、それがまたホストを萎縮させていた。

車はフェラーリ・運転手付きのベンツのSクラス・ベンツSLクラスのクーペ、

エトセトラエトセトラ。

自宅は高級住宅街に豪邸。

クルーザー所有。来るたびに高級時計は違うし、その時計一つ一つもかなり高そうなものだった。

その頃の、もう何年も前の話なので大丈夫だと思うが、

誰もが知っている有名人を何人も店に連れて来たりもしていた。


極めつけは


「殺すぞ。」


と言う余りにもありふれた発言がリアルに感じるような人だった。


そんな理由から、今思うのは

SY社長がトップに媚びを売っていたとしても、

その様な人の前での、

「極度の緊張状態」と「恐怖からくる萎縮」

という状況の中で、トップに気に入られる程のトークを出来るというのは、

それはそれですごい事だったのではないかと思う・・。



そして

その壊滅状態から、SY社長が立て直しを開始した。


立て直し第一弾として、

とりあえずは繋ぎだったのだろう。

かなり驚いた出来事が起きた。




名古屋の老舗ホストクラブから、

経験豊富な年上のホストたちが6名程入店した。

歳はみんな26~32歳ぐらいだった。


その頃の私たちからしたら、

超お兄さん(おじさん)である!




私(いきなりおじさんがいっぱい来た!!!!)



と思っていたら、スーパーおじさん軍団だった!!


若干の型落ちではあるものの、6名の内3名はベンツで出勤、

連れてくるお客さんも年齢が高く、私たち小僧には見向きもしないようなマダム達だった・・・・。




そのおじさん軍団の中で、リーダーはUさんと言う名前だった・・・。

歳は28歳ぐらい。


センター分けでサラサラの茶髪が子供っぽい感じではなく、

上品で程よい感じのホスト風味を醸し出していた。

肌は健康的な黒さを維持されており、

細い切れ長の目に悪さを感じさせた。




とてつもないオーラを放っていたが、

振る舞いは非常にジェントルマン。


落ち着いて話す人で、自分のペースが崩れない人だった。

マイペースとかではない。


相手を自分のペースに合わせさせるのだ。




子供だと思われていただけだと思うが、

私たちに、おじさん軍団はみんなとても優しかった。




Uさんは、さすが老舗のプロホストのリーダーであった。

Uさんのお客さんは、ソープの女性が多かった・・・!

ソープのお客さんを捕まえるのは非常に難しい。



名古屋から一番近い有名なソープ街は岐阜県にある、「金津園」という地域である。

(名古屋市にもあるのだが、ソープ街とまではいかない。点在しているのが多い)





私は行った事がないので比較出来ないが、

金津園は全国でも屈指の接客の厳しさだと聞いた。


実際、金津園で働いているお客さんの席に着くと大体厳しかった!


普段金津園で働いている自分たちが、性サービスも含めた上で非常に厳しい接客を要求されていたとしたら、ホストたちに厳しくなるのも無理はない。


ソープの女性の席に着いて相手が会話をする気がない時は地獄だった。


(お嬢さん、会話がない方が気まずくないかい?さぁ、その重い扉を開いてこっちにおいでよ!!)


と心の中では叫んでいた。

ソープ嬢の中でも、特に厳しいお客さんになると自分が認めていないホストとは意地でも話さないという感じだ。


私「お酒、結構飲まれるんですか?」

ソープ嬢「・・・・・・・・・・・・・・。」


私「あまり強くはないんですかね?」

ソープ嬢「・・・・・・・・・・・・・・。」


私「お酒飲むと、どうなります?」

ソープ嬢「・・・・・・・・・・・・。」


私「酔うとラテン系になったりします?」

ソープ嬢「あぁ!もう!うるさいな!!」


という具合だ。



(なんでこんなにディフェンスが硬いんだ!!!!!)

と何度も思った・・・。


だが、めげずに何度も率先して席に着く事によって、徐々に認めてくれてくれるのが嬉しかった。


仮に、もし自分がキャバクラやクラブに飲みに行って、最初にキツイ態度で対応した女性がめげずに何度も自分の席に着いて来たら


(この女、なかなか根性あるな・・・)

(嫌なはずなのに、この席を避けないのは偉いな・・・)


と思って、確かに私でも好感を持つようになる気がする・・。



風俗は絶対に無ければならない仕事だと今はわかる。


綺麗事は言うつもりはない。

風俗の女性を別に尊敬はしない。

かといって、下に見ることもない。


たくさんある仕事の中の一つだ。

私は風俗の女性とも真剣に付き合っていたりしたので、それを証明としたい。


ただ、ひょっとしたら風俗で実際に働いている子は自分自身に


「体を売っている商売」


という意識があったのかもしれない。


心の奥底では負い目があったのだろうか?

自身を卑下したりしている子も多かった・・・

そんな感情があったと仮定すると


「ホストに舐められない様に」


という理由で、ひょっとしたらホストに厳しい態度をとっていたのかもしれない。


まぁ、ソープ嬢という事で逆にホストにチヤホヤされて単純に横柄になっている子もいたが・・・。

(もちろんあっけらかんとして明るく、負い目など感じさせない女の子もいましたけどね)


話をUさんに戻すと、


Uさんは頭も切れた。


一番の核心である、

「なぜそんな状況のBに来たのか?」

という理由だ。


細かい話はまったく知らないが、

Uさんは独立して、自分の店(ホストクラブ)を持とうと考えていた。

だが、老舗ホストから独立の許可がでない。

その老舗ホストにもどこかの怖い団体のお守りがあったのであろう。


それで、

老舗ホストをやめて一旦「B」に入店する。


U「短期間(2ヶ月程度)だけですよ」


とBのグループのトップに前もって話を通し了承を得る。

Bのグループのバックが了承して入店。

Bに入店した時点で老舗ホストとは話がついているだろう。

以前の章の

「口下手童貞少年、ナンバーワンホストになる⑤崖っぷち編」

でも書いたがBのグループのバックが一番力があり、

Bのグループが名古屋の風俗業界で一番バックにお金を払っていたので、

恐らく老舗ホストは

「分かりました」

としか返答できなかったと思う。


Bへの入店の時点で老舗ホストとは話がついているので、

それ以降、老舗ホストのバッグが口出しできなくなる・・・。

Bで短期間働き、

Bを退店した後、連れてきたホストたちと一緒に晴れて堂々と自分の店を出す。


前店を黙らせる為にBに入店・・・

Bを経由して自分の店を出すという事だ。


その時、アダルティな世界を垣間見た少年だった。



Uさんは、売上の締め日には、


U「今月いくらでナンバーワンになれるの?」


とキャッシャーに聞き、


U「これ、売上につけといて。」


と言い、現金で100万円をポンと置いたらしい。

期限付きとはいえ、Bに在籍している間それなりに売上を上げるという条件もあったのだろう。

後は、そんな腰掛けの状況だとしても、

ナンバーワンを維持するというプロ意識の高さ故だろう。




そうだとしても100万を現金で置くのには驚いた。

・・捨てる様なお金なのだから。

歩合など、あってないようなものだし、

私・S君・新人の状況の中では、100万も出せば余裕でナンバーワンだった・・・。

その時が、

プロとしてのホストを見たのは初めてだったかもしれない。




S君から後で聞いたが、

S君はUさんの事を心酔するようになり、

持ち前の行動力でUさんに電話をして、ホストとしての自分の悩みを打ち明け

アドバイスを求めたらしい。


U「騙したとしても、最後の最後の別れるまで、相手に騙されたと思わせないのがプロだ。
騙されたと相手が思わなければ、それは騙していない。」



とS君が教わったと言っていた。


カッコ良すぎて私も一度はホストをやっている内に言ってみたかった・・・(笑)


S君はその他にも具体的な事なども色々Uさんに教えてもらい、

そんな事がきっかけだったのかはわからないが、

S君は徐々にプロとしてのホストへと変貌を遂げていく・・・。


元々ホストとしての素質が十分にあったS君だ。

少し進むべき方向を教えてもらっただけで、持ち前の行動力で急激にホストとして成長していく事になる。


それが、まさかあんな事件に繋がるとは・・・・。

それはまだまだ先の話である。



←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page