top of page

17/9/5

何も考えていない両親が、老後破産まっしぐらだと分かった話

Image by Olia Gozha


介護破産や老後貧乏といった特集を見ると、前もって家族間でよく話し合いましょう、といった解決方法が書いてあります。


ただ、実際に、家族会議で親の老後のことを聞いたらこうなった、というのはなかなか見かけないので、お盆に帰省したときの(夫の両親との)家族会議の一部始終を書いてみようと思います。




1、家族会議をしようと思ったきっかけ



私(妻)の祖母が亡くなり、私の母から、祖母の家の土地は借りているから、家をどうしたらいいか、と相談がありました。


相続すると、月々2万円の地代を支払い、家の固定資産税1万円を年1回支払い、しかも家の管理もしなければならない。さらに、地主に対して原状回復する義務があり、家を取り壊すには100万円以上かかる、という状況にあると分かりました。


祖母は資産がほとんどなかったため、母は相続放棄をすることになりました。




私の祖母が亡くなったことで、私たち夫婦とも祖父母はもういないのですが、次は、親の老後が待っています。


祖母の相続放棄の一件から、老後の問題は他人事ではない、親の老後について今から考えておかないと、自分たちまで破産しかねない、という危機感が一気にやってきました。


そんなとき、ちょうど帰省のタイミングだったので、(夫の)両親の老後について根掘り葉掘り聞いてこよう、ということになりました。



2、実家での家族会議 -聞き取り編-




家族会議について書く前に、(夫の)両親の状況を簡単にまとめます。


父:65歳。収入は厚生年金。定年退職し、家事やモモ(ねこ)の世話をしている。


母:60歳。収入はパートの給料。国民年金は65歳からもらう予定。


資産:築30年の自宅と、車2台あり。貯金と借金については不明。




実家に着くと、夫はすぐ本題に入りました。

話題が飛び飛びで、まとまりないですが、話の流れは、だいたいこんな感じでした。




夫「この間、涼子さんのおばあちゃんが亡くなって、涼子さんのお母さんが大変だったんだって。それで、ウチはどうかなと思って、いろいろ聞きたいんだけど」


母「なんで教えてくれなかったの?香典とか、何かしないといけないんじゃないの?」


私「いえ。母に聞いたら、お返しも大変だから、何もしないでほしいって言ってました」


父「大変だったって何が?」


夫「おばあちゃんの家は、土地は借りていて、家だけ自分のものだから、どうするのかとか。あと、お葬式の費用とか、いろいろ」


私「母から相談を受けて、私たち二人でいろいろ調べて、相続放棄という方法があると母に教えてあげました」


夫「それで、ウチは、貯金っていくらあるの?あと、借金ってあるの?」


父「ぜんぶお母さんがやってくれてるから、大丈夫だよ」


夫「いや、お父さんも把握してないとダメでしょ。で、いくらあるの?」


母「借金はないよ。家のローンも返し終わったから。あんた、財産を狙ってるの?」


夫「逆だよ、逆。何かあったら、自分がお金を出すことになるから、聞いてるんでしょ」


母「貯金は500万円だよ。あんたとお姉ちゃんを大学に出したから、お金ないのよ」


父「そうだそうだ!こんなこと言われるなら、仕送りしないで貯めておけば良かったよ」


夫「だから、今、一緒に老後のことを考えてるでしょ。心配してあげてるじゃん。うーんと、聞きたいことがいろいろありすぎるから、一つひとつ聞くよ。まず、生活費。毎月いくらかかってるの?」


母「家計簿付けてないよ」


夫「じゃあ、大体でいいから。どのくらい?」




まずは、毎月の生活費を大まかに確認しました。




夫「あと、この家の修繕費とか、何か大きな出費とかあった?それか、これから何かする予定あるの?」


母「この間、ちょうど天気が晴れてて、良かったのよ。外壁塗装をしてもらってね。100万円でやってもらったよ」


父「2年前に、俺が屋根を塗って、落ちそうになって、命がけだったんだよ。それなのに、この間、お母さんが屋根を見て「剥がれてるね」って言ったから、●●おじさんにやってもらったよ」


母「私が、ちょっと剥がれてるねって言っただけで、お父さん、すぐ●●おじさんに電話して、契約してきちゃったよ。でも、ちょうど晴れてて、塗装もすぐ乾いて、良かったよ。5日間で終わったよ。だから、あと10年は大丈夫そうね」


夫「なんですぐ契約するの?100万円でしょ?もっと安く出来なかったの?」


父「最初、130万円って言われてたんだよ。でも、●●おじさんが100万円で良いって言ってくれて…」




外壁塗装の話が延々と続くので省略します。




夫「外壁塗装の話はもう終わり。今、年金はいくらもらってるの?」


母「あんた、本当に私たちの財産を狙ってるんじゃないよね?」


夫「だから違うって。今、収入がいくらで、毎月いくら使ってるのか、収支を出さないと、老後がどうなるか、ちゃんと分からないでしょ。ねんきん定期便とか、あと、税金の納付書とかある?ちょっと見せてよ」




母に、ねんきん定期便、住民税、固定資産税の納付書などを出してもらいました。




夫「そういえば、車の買い替えとかどうするの?あと何年くらい乗るの?お父さんの車が、もう4年で、お母さんの軽が10年くらい経つよね?」


父「お母さんは仕事があるし、俺も使うから。80歳くらいまでは乗るんじゃない?」


夫「車検もお金かかるし、1台でいいんじゃない?2台も必要ないでしょ?」


父「いや、いつも車検は▲▲のおじさんに見てもらってるけど、安いよ。車検、すごい安いから。ウチの車は、30万kmくらい走っても、全然大丈夫だって」


母「そういえば、近所の◎◎おじいちゃん、85歳くらいになる?あのおじいちゃんの運転がね、危ないのよ。狭い道路でも、スピード落とさず向かってきて、すれ違ってくるじゃない?」


父「◎◎のじいさん、85歳なの?俺もこの間、すれちがったよ。あれ、危ないよな。あのじいさん、そのうち事故起こすよ」


夫「じゃあ、お父さんたちも、あんまり年取って運転しないほうがいいんじゃない?ボケる前に車の運転やめてさ、タクシーとかにしなよ」


父「俺はボケないから、大丈夫だよ。それに、そこまで長生きしないから」


夫「いやいや。死ぬならいいんだよ。生きてるから、車とか税金とか、とにかくお金がかかるんでしょ」


父「お前、ひどいなぁ。大学まで出してやったんだから、「自分が何とかしてあげる」とか言ってよ」


夫「それが無理だから、どうするか一緒に考えようとしてるじゃん。それに、今こうやって一緒に考えて、見通し立てるだけでも恩返ししてるよ。普通は何か起こってから、どうする?どうする?ってなるよ。さっきも言ったけど、涼子さんのおばあちゃんが亡くなって、相続が大変になりかけたでしょ」


母「じゃあ、もし私たちに何かあったら、モモ(ねこ)だけは、あんたたちでなんとかしてあげてね。この子は、誰かいないと寂しがるでしょ。今は、お父さんがいつも家にいてくれるからいいんだけど。4時間以上、ひとりで留守番させないで、一緒に家にいてあげてよ」


夫「え?なに言ってるの?二人ともフルタイムだから無理に決まってるでしょ。モモよりも、お父さんが死んだら、お母さんはどうするの?お母さんは国民年金だけでしょ?お父さんの遺族年金を足して、それでやっていけるの?」


母「お姉ちゃんのところに行くからいいよ」


夫「いや、一緒に暮らせないでしょ」


母「そうなのよー。連休にウチに帰ってきて、2~3日とか、ちょっとだけ一緒にいるならいいんだけどね。お姉ちゃんと一緒に暮らすのは無理ね、口うるさいから。いつもケンカになるから大変なのよね」


夫「話を戻すけど、お父さんは、車いつまで乗るの?2台もいらないでしょ?」


父「いや、ばぁばの家の草むしりとかあるから、まだまだ当分乗るよ。あと15年くらい?」


夫「15年って言ったら80歳でしょ。それに、ばぁばも亡くなって、もうずっと空き家でしょ。で、草むしりとか片付けとかで週に1回は車で30分かけて通って、しかも固定資産税も払わないといけないんだったら、もう売ったらいいじゃん。そしたら、車2台もいらないでしょ?」


母「あんたはドライ過ぎるのよ」


父「そうそう。お前は冷たいなぁ。ばぁばの家の思い出とかあるでしょうよ。ばぁばがボケて施設に入っても、お家に帰りたいって泣いてて、家をひと目見るってきかなくて、何度か見に帰ったりしてたんだよ。(きょうだいとか)みんなそのうちボケるんだから、小さいときに暮らしてた家に帰りたい、ってなるから。ばぁばの家は残しておかないと!」


夫「昔の思い出より、自分たちの老後を考えないと。お父さんがボケたら、どうするの?そしたら、介護とかでお金もどんどん必要になるから、ばぁばの家の維持費を払ってる場合じゃなくなるよ。二人とも生活できなくなるよ」


父「大丈夫。俺はそんなに長生きしないから。ボケる前に死ぬから」


夫「いやいや。みんなそのうちボケるとか言って、自分は長生きしないって言って80歳まで車に乗るって言うし。言ってることが矛盾してるよ。近所のおじいさんが85歳で運転してて危なっかしいとか言って、自分はボケないから運転するって?それに、じぃじもばぁばも介護が大変で、それでも、二人とも90歳過ぎまで長生きしたでしょ。お父さん、自分は早く死ぬとか言うけど、じぃじもばぁばも90歳過ぎるまで生きたんだから、お父さんたちはもっと長生きするでしょ。なんで根拠もなく、大丈夫大丈夫って言って、考えようとしないの?」


母「あんたたちが、ウチに来たらいいじゃないの」


夫「二人とも仕事があるから無理だって。だから、どうするか一緒に考えようとしてるんでしょ」




あれこれ脱線しつついろいろ話を聞きながら、年金受給額や母の給料、毎月の生活費や車の維持費、税金など、現在の収支を一通り確認しました。また、収支に関する書類一式も持ってきてもらい、聞き取り調査はひとまず終わりました。




夫「このままだと、本当に厳しいかも。パソコンで、まとめてくるから」


母「私たち、普通でいいのよ。贅沢したい訳じゃないんだから」


夫「は?持ち家があって、車が2台あって、ねこも飼ってて、なに言ってるの?それが普通っていうんだったら、世の中のほとんどの人は、生きていけないでしょ」


母「だって……あ~、なんかどっと疲れた。今日はパート行きたくないなぁ」




両親をリビングに残し、私たちは聞き取ったメモと書類一式を持って、部屋を移動しました。




3、実家での家族会議 -シミュレーション編-




スキャンできる機器がなかったので、私は、書類を一つずつ確認しながら、デジカメで何十枚も撮りました。


夫は、メモや書類を見ながらエクセルに入力し、現在の収支と今後の収支をシミュレーションし、赤字になるタイミングを確認していました。


そして、翌日、両親にシミュレーションしたものを見てもらいながら、説明しました。


夫「いい?お母さんが65歳まで働いて、車も買い替えないで乗り続けて、お父さんが75歳になったら二人とも車を手放して、その後はタクシーを使う場合のシミュレーションがこれ。あと、お父さんが75歳になったとき、モモはもういない前提ね」


父母「で、どうなの!?」


妻「二人とも、老後は別にいい、とか言って、とっても気になってるじゃないですか」


夫「二人とも健康で長生きだったら、本当にぎりぎりだけど、なんとかなりそう。だけど、お父さんかお母さんが認知症になったり、介護が必要になっても、施設に入るお金ないよ。それに、お父さんが年上で、女性の方が寿命も長いんだから、お父さんの方が早く死ぬでしょ?お父さんが死んだら、お母さん、一気に赤字になるよ。それで、そのあと10年くらい、どうやって暮らす?この家の修繕費もあるし」


母「えー、どうするの?このままじゃ、やっていけないってこと?」


夫「うん。収支を付けてみて分かった。もうね、ばぁばの家の固定資産税を払ってる場合じゃないよ。車2台持ってる場合じゃないよ。ほんと、かなり厳しいっていうのが、よく分かったよ」




両親の老後がかなり危ういと分かったところで、家族会議は終わりました。




4、おわりに




今回の家族会議で、『両親の老後がどうなるか確認しなければ!』という私たちの目的は、一応達成できたと思います。


そして、両親に、このまま何もしないでいると、どういう老後になるか(老後破産になると)分かってもらえただけでも、大きな成果だと思います。ただ、いきなり家計診断をしたので、財産を狙っているのかと疑われたり、父も母もかなり戸惑っていました。ごめんなさい(。>﹏<。)



これから先、両親が『健康で長生き』という理想を前提とした老後を迎えられるか、まったく分かりません。認知症や介護など何かが起こってしまうと、老後破産まっしぐらです。それを防ぐために、これからどうするのか、帰省のたびに家族会議をして、いろいろ話し合っていきたいと思います。



長くなりましたが、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。



←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&amp;co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page