top of page

17/8/20

普通の私の出産話し

Image by Olia Gozha

日常にドラマ

妊娠、出産は日常でも本人には一生に何度あるか、もしかしたら出来ない体験。

人間は妊娠確率も他の動物に比べて極めて低く、医療が未発達な時代は出産で母子共に命を落とす危険に晒され、産まれて来た子どもは未熟な状態。

それでも命は紡がれて来た。

だから、産まれる子供ひとり、ひとりにそれぞれの物語。

ママさん達と出産の時の話になると、皆さんハッキリと覚えていて、それは楽しそうに、武勇伝の様にお話しされます。


STORYSには

ネット検索をすると、面白いお話がそれは沢山出て来ます。

この、ストーリーズにもたくさんあるのだろうと軽くですが、検索しましたら、

あまり無い。

ここを使用されている人達の層が違うのだろう。

でも、敢えて書こうかと思います。


呑気で早くて速い

2009年でした。病院まで20分、自宅から歩いていました。

病院の駐車場の銀杏が黄色く色づき葉を落とし、歩いても汗が出ない良い季節だった。

私は、明後日からの産休で予定日までの約1ヶ月間は何をしようか楽しみにしていました。

検診では副院長の老医師から

「順調です。このままなら予定日通りに産まれるでしょう。」と言われ、安心して歩いて家に帰った。

そして、何故か床拭きとトイレ掃除をした。

それから会社へ行って、ちょっと仕事を片付け、あと1日の出勤で休みに入れる様に段取りを取った。

会社を出ると、運送屋の担当のお兄さんとすれ違って、

運送屋さん「もう直ぐですか〜」

「予定日あと1ヶ月間です!(^^)」

なんて挨拶した。


その夜21時、冬支度も整ったリビングで夕食の片付けを終えて、新聞を読もうと座っていると、

お腹から妊娠以来聞いたことの無い音がした。


ポコーッ


「ん?便秘中に腸の中をガスが移動する時に時々した様な音だな。でも、こんなに子宮が膨れてるのに、随分表面で音がしたな。破水とかってウワサによるとパチンッって弾ける音がするらしいいし、なんだろ⁇」

しばらくすると、何かがダラダラ出てくる感触。

おかしい。

尿意は無いけどトイレに行ってみる。


あれ、これって、破水か?

取り敢えず夜用ナプキンをあてて様子を見よう。

ちょっとオロオロ、ウロウロ。

入院準備は出来てるのを確認。カレンダーを見る。

確か数日前に軽い出血があって病院に連絡をしたのを思い出す。あれはやはり『お印』というやつだったのかなどと考えた。


音がしてから30分経過した21時半。

もう一度トイレに行く。

ナプキンを交換しなければならなかった。


これは病院に連絡だな。

電話をして説明をすると、助産師から直ぐに来るように言われた。


「車で行かなきゃ。カギは・・・・あ、自分で運転しちゃダメだ。夫だ。夫。」

大イビキをかいて居眠りしている夫を揺すって起こす。

「ちょっと。 起きて。破水した。」

「フガッ。ううーん⁈」

「暇かも知れないから マンガでも持って行ったら?」

「そうする。」

偶然ながらも旦那は早番で家に居て、病院まで運転してくれた。

車中では、長引いて、明朝会社に私が連絡を出来ない場合は代わりに連絡してほしい、と夫に会社の番号など教えた。実父母に電話を終えたところで病院に到着。

銀杏の木が街頭に照らされ、夜空に黄色く浮かび上がっていた。

キレイだった。


玄関の警備員に言って中に入る。

薄明かりの中、スタスタと私は夫を従えて産婦人科へ行った。

陣痛室に案内された。陣痛室の直ぐ隣が分娩室。

先に分娩に入った方が居て、絶叫。

先の人「痛い!痛いー!痛い!痛い!イダイーッ!イダイーーーー‼︎」

「マジか…。」

「なんか、あれ聞いたらテンション落ちるな。」

テンションとか言う問題では無い。

更に、壁には妊婦を元気付ける為か詩のようなものが、模造紙に手書きされてて

長い苦しみを乗り越えて、出会える赤ちゃんがいるから、一緒に頑張ろう。的な事がつらつら書かれていた。


22時30分

長い戦いになるかも知れない。と覚悟をした。


陣痛らしい痛みもない。

分娩用の着衣に着替え、子宮口の確認に歩いて別室へ行く。

古い分娩用の台を利用した椅子に例の格好で座る。この椅子がまた、見た目拷問用っぽい。

どうやら2cm開いてるとのこと。

陣痛室に戻りベッドに横たわる。赤ちゃんの心音と陣痛の強さを測る機械がセットされた。

助産師さんが胎動は昼間あったか聞いてきた。昼間はあったと応える。


でも、

「あれ、赤ちゃん全然蹴って来ない。陣痛も来ないぞ。心音もあまり聞こえない気がする。不安。」

さっきの 痛い痛い妊婦 は無事終わったのか声は聞こえて来ない。

夫は部屋の隅で義父母へ電話し、持参した少年ジャンプを読んでいた。

私もなんか持ってくれば良かった。とも思った。

立会い出産とか嫌だけど、この流れだと立会いになるのだろうか。

など考えていると、弱い生理痛の様な痛み。

「来たか。このまま強くなるのかな。何分間隔とかあるんだよね。」

とか考えていると、痛みが強くなって来た気がした。

また助産師に付き添われ徒歩にて部屋を移動、子宮口確認。6cm。

でも、全く平然としていると、昼間とは別のk医師がやって来て、何やら助産師と話してた。

k医師「え、今日、検診してたの?そん時は何でもなかったんでしょう?」

「何でそう言う言い方を聞こえるように言うかな。ナーバスになっちゃうじゃん。」

そしてk医師はこれから万が一の事があった場合をグダグダと話し始めた。

k医師「あと5日で正期産になるが、破水してるのでそこまで延ばせないし云々」

「そうですか。(つまり産めって事ね)」

k医師「赤ちゃんに万が一があった時、24時までに産まれれば当直の小児科医師は早産児を受け入れてくれる先生だが、長引いて、24時過ぎると受け入れてくれない先生に交代になって、お願いしても云々・・・」

「そうなんですね。(つまり、今日中に出さなきゃいけないのね。)」

この辺からジワジワジワジワ痛みの波が襲い始めた。

でも、まだ耐えられる。

私は平静を装うった。

k医師「・・・受け入れてくれない先生になると、赤ちゃんに異常があった時は搬送先の病院は40km離れた長岡市の赤十字病院だけど、ベッドが空いてなかったら更に遠い山形県に近い村上の病院になって、そこも空いてなかったら群馬県の高崎の病院になる。」

私 ´д` ;「ふむふむ。そうですか。(村上は遠すぎでしょ。どうせなら高崎が良いな。ここより実家に100kmくらい近くなるし。)ウウー。」

遠い病院の話しが出た途端痛みが大波になって

グワッ

とやって来た。


私 ´д` ;「(痛みは声を出すと逃がせる!)フウーッ、フウーッ、フウーッ?ヒー、ヒー、ヒー?ハー、ハー、ハー!(何て言ったら正解だ?)」

助産師「そうそう、上手、上手。」

k医師「あと5日で正期産になる。けど、延ばせないし、小児科医師は24時過ぎると受け入れてくれない先生に交代になる。・・・そうなったら赤ちゃんとは離れ離れになるし、何かと出向く事になる。」

私 ´д` ;「ハーッ!ハーッ !ハーッ!(分かった、分かった。赤ちゃんと離れ離れになっても文句は言うなって事な!結論、言いたい事を先に言えって教わらなかったのかー⁈)」

私、結構冷静だったんです。記憶も飛ばず。

夫や医師、助産師に暴言吐くって言うアレもなく。


でも医師が1番言いたい事が、

何があっても対応できる連携をしてます、安心してください。って事じゃなくて、

何が起こっても文句言うな。という心情が見えて、そこには頭に来た。

それでも、ここにいらっしゃる医師、助産師達をを信じて産むしか無い。


私の状態から陣痛が強くなってるので

医師がその場を立った。


助産師から立てますか?と聞かれたので、さっきよりも痛みが引いたので

「はい」と応えて分娩室へ歩いた。

夫も続く。

歩いている途中、身体ガタガタ震えだしたかと思うと、のぼせた様な感覚がやって来て全身汗がブワッと吹き出した。

交感神経か、身体中がおかしい。私の体もてんやわんやしながら、いよいよって感じになって来たんだな。


分娩台に自力で登って、横たわる。

分娩台準備が整うと、助産師さんが夫を私の横に連れて来た。

助産師「旦那さん、奥さんの手握っててあげて下さーい。」

私 ´д` ;「(そういう、気遣いなのね。)」

助産師「ちょっと、子宮口確認しますねー。あ、全開です!まだ、いきまないで下さいねー。」

私 ´д` ;「ハッハッフーハッハッフウーッ(大丈夫、皆さんを信じれば。)」

助産師「今、いきむと赤ちゃん苦しくなっちゃうからねー。」

私 ´д` ;「ハッハッフウーッ(なんか、呼吸これで良いのかなー)」

助産師「あ、いきんでくださーい!手はそこの取手を握って!」

私 ´д` ;「(あ、ここは旦那の手を握り潰すとかそういう事はダメなのね。)ふんぬーっっふんっふんーっ」

助産師「頭完全に出ましたよー力抜いてくださーい。」

私 ´д` ;「ハー。(あっ、本当にとてつもなくデッカい大便出したみたいだ。本当かよと思ったけど表現ピッタリ。)」

助産師「男の子ですよ。体重計るので連れて行きますね。旦那さんは一回出て下さいねー。」

確か、よくあるカンガルーケアみたいなのもなくて、計測やら記録に連れて行かれてしまった。

後産といつの間にか切開してたのか切れた所を縫って貰いながら、

助産師さん達の大声が聞こえて来て


「体重、32○○g!」

「えぇ⁈」

「あー、ごめんごめん。さっきの人と間違えた!」

「えっとね、にせん、よんひゃく、きゅうじゅーご!」

「2495ね。時刻は?」

「えーっと?時刻が23時35分」

「えぇ⁈」

「23時35分‼︎」

「はははっ」


処置後、タオルを掛けられ、夫はまた部屋に呼び戻されて無言で横に座ってたので話しかけた。

「マンガ読めた?」

「いや、そんな暇無かった。」

そして無言。

若干寒い。分娩台も寝心地が悪かった。20分ほど寒さに耐えていたら、助産師さんが

「あらー寒いのにごめんねー」と言って、毛布を掛けてくれた。

私は「いえ、大丈夫です。」と要らない遠慮をして嘘をついた。


入院ベッドまで、また歩かされると思ったが、車椅子で移動した。

産まれて初めての車椅子。


赤ちゃんは、クーベース管理(保育器)入りになったが、ベッドに横になって、夫も帰ると年配の助産師さんがやって来た。

「内緒だけど、赤ちゃん連れて来たからおっぱい吸わせてみる?」

え?内緒? と思いつつも、教えてもらいながら小さな我が子を抱いて初乳を飲ませた。

コクコクコクと口を動かすと数秒止まる。また思い出したようにコクコクコク。

産まれたばかりで体力が無いから休み休み吸ってるのよ、と教えてもらい、最初からガブガブいかないのに驚いた。


  朝、8時半になったのを見計らって会社に電話した。

出たのは、いつものNさん。

「おはようございます。あのー、今日最終日だったんですが、昨日の夜産まれたので、今日から育児休業でお願いします。」

Nさん「・・・え、あー産まれたんですねー。えっと、分かりました今日から育児休業ですね。社長に伝えておきます。・・・・・・。」

「あ、じゃあ、よろしくお願いします。」

Nさん「あ、おめでとうございます。じゃあ、よく休んでね。はーい。」


いつもは、気の利いた方なのに言葉が少なかった。やっぱり、急に休みとなると迷惑だよね。なんか感じも変だったし 。寂しい気持ちになっていましたが、あちらは、実は違っていた。


  思いがけず、早産、低体重児となったため、直ぐには我が子を抱け無かったが、思いっきり寝られた。昼間、赤ちゃんを見に行ってみると眠っていて、手を入れるハッチの様な所を開けると、音に驚いたのか小さな体がビクンッとなった。

触ったら壊れそうな気がして、早々に引き上げた。


なんだか、寂しい。

同室の方は皆、赤ちゃんと一緒なのに私は、ただ寝てる。


そして検査結果、異常なく15時間の離れ離れから、やっと、私のベッドに赤ちゃんがやって来た。

温度管理されている室内だったけど、直ぐに小さな体が冷えて、足先が本当に冷たくなる。

昼間は母子同室だったので、私のベッドに寝かせて常に抱っこして温めて過ごした。

かわいいだけじゃ無くて、早く出て来てしまって、自分の責任も感じた。

ごめんね、と言う気持ちもあって離せ無かった。

そして、心の中で、良い子にならなくて良いよ。『大人の都合の良い子』に絶対なっちゃダメ、自分で考えられるように。と願った。

もう一つ考えた。

子どもの内は子ども自身はお母さんと一体と感じるかも知れない。私が勘違いしちゃいけないのは、子どもは私の分身ではなくて、一個人なんだ。だから、操ろうとしてはいけない。自分の希望を背負わせてはいけない。


よく寝る子で、あまり風邪もひかずの孝行息子。

産まれた時も、今日中に!って急いで出て来た。

多分 、妊娠中に「腹が重いー、早く出て来ないかなー。」なんて思ってたのを知って、かも知れない。


そして、そんな息子が2歳のある日に、

「どうしてお母さんの所に来たの?」

と聞いたら衝撃の答えが返って来た。


←前の物語

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

フリークアウトのミッション「人に人らしい仕事を」

情報革命の「仕事の収奪」という側面が、ここ最近、大きく取り上げられています。実際、テクノロジーによる「仕事」の自動化は、工場だけでなく、一般...

大嫌いで顔も見たくなかった父にどうしても今伝えたいこと。

今日は父の日です。この、STORYS.JPさんの場をお借りして、私から父にプレゼントをしたいと思います。その前に、少し私たち家族をご紹介させ...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。

「どんな仕事を選んでもええ。ただ、○○がない仕事だけはしたらあかんで!」こんにちは!個人でWEBサイトをつくりながら世界を旅している、阪口と...

あのとき、伝えられなかったけど。

受託Web制作会社でWebディレクターとして毎日働いている僕ですが、ほんの一瞬、数年前に1~2年ほど、学校の先生をやっていたことがある。自分...

ピクシブでの開発 - 金髪の神エンジニア、kamipoさんに開発の全てを教わった話

爆速で成長していた、ベンチャー企業ピクシブ面接の時の話はこちら=>ピクシブに入るときの話そんな訳で、ピクシブでアルバイトとして働くこと...

bottom of page