私は川の堤防で自分自身で導き出した答えを実行しようとしていた。
風俗誌を買って、実家に隠し持っていた。
ヘルスに行く為ではない。
風俗誌の後半にホストの店が載っているのだ。
ホストの写真も掲載されており、どうせ働くなら自分がかっこいいなと思う人たちが働いている店を選びたかった。
ホモではない。
かっこいい人たちの何がかっこいいのかを知りたいと思っていたのだ。
いまでこそ水商売全般に対する認知度があがってきているが、その頃のホストは、あまり情報がなかった。
とてもダーティーな雰囲気が漂っていた。
1月中旬、働きたい店を迷いに迷ったあげく、決定した。
名古屋には女子大と言われる地域がある。
キャバクラや高級クラブが集まっていて、名古屋で一番飲み屋が集まる場所を「錦」という。
そして女子大という場所は「錦」からはタクシーで5分から10分ぐらいの位置にある。
かなり前に(戦前?)女子大学があったからこう呼ばれているという話をタクシーの運ちゃんに聞いた気がする。
正式名称は名古屋市中区栄4丁目。
ホストクラブや韓国クラブ、韓国エステ、フィリピンパブ、その他ここには書けない怪しい店が所狭しと密集している地域であった。

そういった種類の店舗からもわかる様に、昼間はシャッターが閉まっている店舗ばかりであまり人気はない。
だが夜になると一転、多国籍な人々やそういった店で働く従業員、ホストと思われる人間や明らかにヤ○ザっぽい方たちなどでダーティな雰囲気を醸し出している街だった。
(今現在は風営法が厳しくなったせいで、だいぶ昔の面影は薄らいだらしい。)
そして、私が風俗誌で選んだ店は女子大にあった。
当時私は名古屋に住んでいたわけではなかったので女子大がどういう場所かは、あまり詳しくはわからなかった。
お昼すぎ頃に店へ、レッツテレフォン!!
プルル・・・プルル・・・
誰もでない・・・。
(やはり夜か・・・)
親が寝静まった、0時頃に再度レッツテレフォン!!
プルル・・・プルル・・・
店「はい!お電話ありがとうございます!!」
私「あっ!!あのう・・・・そちらはバイト募集されてますか?」
店「はい。募集していますよ。」
私「そちらで働きたいのですけど。」
店「わかりました。それでは面接の日にちは・・・明日の0時に店に来れますか?」
私「大丈夫です。」
店「お待ちしてます。それでは明日。」
電話が1月の深夜にも関わらず、汗で湿っていた。
しかし
(やっぱりやめとこうかな?)
という迷いはなかった・・・。
次の日の夜、少し大きめのカバンに兄から勝手に借用したスーツ、Yシャツ、革靴、ネクタイを押し込み、親が寝静まった頃に家を抜け出し、電車に乗っていた。
私の住んでいる町は、名古屋市のベットタウンという位置づけの為、深夜の23時に名古屋方面へ向かう電車にはほとんどお客さんは乗車していなかった。
我が町から女子大の最寄り駅である栄までは、電車で30分程度の距離なので、自分の気持ちが落ち着く間もなく、栄に到着していた。
栄とはいえ、自分達が車でブラブラしていた位置とはだいぶ違っていた。
その時代は、スマホがまだないので風俗誌に掲載されていた店舗地図の切り抜きを、たまにポケットから出して場所を確認しては、店の方へ歩いていった。
まったく行った事がないエリアではなかったが、深夜の0時頃になると様子がガラッと違っていた。
深夜に、その女子大のエリアに足をのばすのは初めてであった。
(俺、大丈夫か?)
一匹の仔羊(SHEEP)がネオンに迷い込んでいた。
今までは車の窓ガラス越しにしか見ていなかったネオン街を徒歩で歩いていた。
窓ガラスはない。
もちろんボーイズもいない。
とても不安である。
殻を割られたヤドカリの様な気持ちだ。
しかし、自分の気持ちに精一杯の虚勢をはり
(関係ねぇ!自分自身で自分の人生面白くするんだろ!?)
と一歩一歩足を進めて店へと距離を近づけて行った。

そして・・・・奮い立たせたのは良かったが、結局道に迷い、5分程度遅刻して店の下に到着した。
私が向かった店の名前は・・・・
「B」。
ドアを開けるのにも緊張で5分程度かかった。合計10分の遅刻である。
ものすごい緊張だが、ここまできて引き返す選択肢は無い。
ドアを引いた!
「すいません!遅くなりました!本日面接を受けさせていただく井出です!」
「待ってたよ~。こっちに来なよ。」
店はまだ開店前で中途半端に暗く、店の広さは30坪ぐらいの広さだった。
自分の中で想像していたホストクラブよりは、だいぶ狭かった。
ボックス席でおしぼりを巻いている人が二人いた。
一人は髪をセンターで分け、その分けた前髪がとてつもなく立っており、昆虫の触覚みたいになっていた。
体型は小太り・・・・いや、太っていた。
もう一人は髪を七・三で分けており、お世辞に言ってもちょっとやんちゃなサラリーマンといった感じで、薄い顔立ちで体型はひょろっとしており、猫背が目立っていた。
履歴書を渡したが、ほとんど見ている気配はなく、履歴書に関しての質問もないまま、
「君が井出君?いやいやいや、いけそうじゃん。なんでホストやろうと思ったの?」
「興味がありました。」
「そうなんだ~。」
話をしながらも、おしぼりを袋から出しては広げ、またキレイに巻き直すという作業をし続けていた。
太っている方の人が
「俺Sって名前でやってるから、よろしくね。」
七・三の人が
「俺はTっていうから、よろしく。」
「はっ、ハイ!よろしくお願いします。」
(…よろしく?面接は?
顔でOKという事か?それならそれで悪い気はしないが…。)
違った。
ホストという職業は最近の面接だとどうなのかはわからないが、
顔ではない。
態度でもない。
99%受かるものだった。
少なくとも私がホストをやっていた期間の中で面接で落とされたやつはいなかった。
それは何故か・・・?
ルックスがある程度良くても、しゃべりや接客が伸びず、場の空気も読めず使いものにならないやつもいる。
逆にブサイクでも、色々なお客さんに揉まれたり、おっぱいを揉んだりしながら、巡り合ったお客さんにより自信をつけ、本当に恰好よくなっていくやつもいる。
つまり・・・
使ってみないとわからないのだ。
さらに言えば、
どうせ渡す給料なんてものは、お客さんがいなければ
雀の涙どころか雀のドライアイ
という表現をしたくなるぐらいだ。
もちろん、その時の私はそんな事は知らなかった。
S「なんでこの店選んだの?」
私「写真で格好いいと思う人が多かったからです。」
S「そっか~。確かにそうかもね・・・・。まっ色々大変な事も多いと思うけど頑張ろうよ!」
(やっ、やっ、優しい!)
もっと怖い人だらけだと思っていた私は少し安心していた。
当然ヤ○ザな方とも繋がりが無いわけはないだろうと思っていたからだ。
結局そんな考えが大甘だったと思い知らされるのは・・・
まだまだ先のことだった。
そして、おしぼりの巻き方をちょうど覚えた頃におしぼりは全て巻き終わった。
S「あれっ、そういえば今日からもう働けるの?スーツは持ってきた?」
私「はいっ、持ってきました。」
S「やるじゃん。じゃあ、今日から働いちゃおうか。」
私「はいっ!お願いします!!」
私は店のカウンターの前で私服を脱ぎ、兄から無断で借用してきたスーツに身を包んだ。
今思えばさすがであった。
私は兄より若干身長が高かったのでスーツの丈は短い。
ブラックスーツなのに靴下は白。
髪型はちょっと長めの茶髪のウルフカット。
そう、まったくスーツが似合っていなかった。
(大丈夫かな?)
外見も含めて大丈夫ではなかった。
トークに自信はない、ウブ、ピュア、童貞、家庭環境も普通、雑種の犬、猫が一匹・・・。
目標はベンツに乗る、お金持ちになる、ではなく女のみ・・・・。
それでも、ホスト一日目が始まろうとしていた。
まだお客さんの来店していない店内には有線のユーロビートが鳴り響き、ブラックライトが店の照明として使用されており、紫色に近い、濃い青色のソファーが怪しく光っていた。
(本来はメインの照明にブラックライトは法律の関係でダメだと聞いた事がある)
時間も深夜1時に迫ってきた頃。店のドアが開いた!
「おはよーさん。」
背は高くないが、長髪に縁無しサングラス、黒いロングコートに太めのスーツで、そのスーツも高級そうだ。
(ムムッ!ちょっと怖そうな人だぞ!)
S「おはようございますRさん。こいつ今日面接にきた井出って新人です。」
私「お願いします!」
R「ふ~ん、そうなんだ。」
冷たかった。
初対面でこんなに素っ気なくされた事はなかった。
道端に落ちている石ころの様な扱いだった!
(寂しい!!!)
それから5分程度たった頃だったか・・またドアが開いた。
「おはよっす~。」
「おはよー。」
またしても二人出勤してきた。
一人はNさんという名前で茶髪の中分けのミディアムヘアーでとても甘いマスクをしている。
もう一人の名前はAさん。ほとんど金髪に近いショートヘアーで顔は薄いが整っている顔だった。
S「Nさん、Aさん、今日から働く井出って新人です。」
私「よろしくお願いします!」
N「おぉ・・・よろしく。」
A「よろしく。」
やはり冷たかった!
(なんでこんなに冷たいんだ!?
もっともっと優しくしてくれよ!!
もっと愛をくれよ!
初日ですよ?
もっとフレンドリーな感じできてくれよ!?
新人君が働きづらい環境になっちゃうだろ!?)
と・・もちろん言えるはずもなく、勝手に一人で気まずい感じになっていた。
話かけづらい、というか話しかけるなオーラ全開である。
そして石ころ(私)など気にする人間がいない様に、私はその場にいないかの様にRさん、Nさん、Aさんは話をしていた。
つらかった。
今までは、どこの職場(バイト先)でも大体は、初日の人間には周りが気遣ってくれ、話をしてくれていた。
工場勤務が関係あるのかはわからないが、工場の時は、相手も決して話上手ではないのがだいたい雰囲気でわかった。
なので相手も私と話そうと頑張ってくれているというのが、こちらにも伝わり、相手が友好的に接してきてくれるんだなというのが読めたからだ。
もちろんこちらも精一杯頑張って話をしてその気持ちに応えていた。
今回は違った。
理解できないドライ具合だった。
今まで体験した事のない従業員の方々の対応だった。
・・・・のちのちその理由を理解する事になるが。
そんな中でどうしていいかわからず、入り口付近に立っているだけだった。
そんな私に、蜘蛛の糸が垂れてきた。
先ほどおしぼりを一緒にまいていたTさん、ヤンチャなサラリーマンぽい人である。
T「こっちで基本的な事教えてあげるよ。」
私「あっ・・はいっ!」
(私なんかに気を遣っていただきありがとうございます!!)
妙に卑屈になっていた!
ビップルームと言われていた奥の方で皆様がトークをしていたのでボックスの方で仕事を教えてもらえる事になった。
お酒の作り方や、お客さんのタバコにライターで火を点ける時の注意点……
というか教えてもらったのはそれぐらいだった。
私「Tさんはどれくらいホストやってるんですか?」
T「俺もまだ二か月ぐらいだよ。」
私「そうなんですか~。」
T「一応、昼間に他のバイトもしてるからね。」
そんな会話をしていると、
「いらっしゃいませ~!」
お客さんが来た!!
女の子「なんだ~、まだ誰もいないじゃ~ん?」
女の子「まっ、いいじゃん。」
女の子「ねぇA、私達どこ座ればいいの?」
四人組の女性達だった。
そしてそれは信じられない光景だった。19歳の頃の記憶になるが・・・
全員結構かわいかった!
(お金を払ってなんでこんな子たちがくるんだい?ホワイ?信じられない…。
わからない・・。
逆にお金を出してしまう男が、君たちならたくさんいるんじゃないのかい?)
そんな事を考えながらも、アイスを容器に入れ、水をピッチャーにいれそのお客さんのテーブルへ運んだ。それだけで、緊張していた。
無理もない、今までの話相手は鉄パイプだったのだから・・・。
テーブルにアイスと水を運ぶと、NさんとAさんがその女の子達のテーブルに座っていた。
女の子「何この子?」
A「あぁ、今日から働く井出っていう子だよ。」
女の子「そうなんだ~。っていうか井出って本名じゃん!ウケる!」
(私めのなにがウケていらっしゃるんですか??)
何が起きているのかわからなかった。
そう、ホストとはだいたい源氏名を使うものなのだ。単純に言えば店用の名前である。
A「何か好きな名前とかないの?」
そんな事を考えた事などなかった!
私には親からさずかった名前がある。
名前を変えるには市役所に行って用紙を提出して・・・
といっている場合ではなかった。
私「えっ?いや~別にこれといって…。」
A「そっか~。まっ、明日までに考えときなよ。」
その後、私はカウンターのあたりでまた石ころに戻っていた。
そうこうしている間に
「いらっしゃいませ!」
また一人お客さんが入ってきた。
(えっ!!まじかよ!?かわいい…。)
信じられなかった。
私の入店前のホストのイメージとは、
「女の子を騙してお金を稼ぐ」
と思っていた。
騙されるって事は正直な所、
一般の男に相手されない女の子がホストに貢いで相手にしてもらう=
あまりかわいくない女の子ばかり、
だと思っていたからだ、
R「おう、そこ座ってろよ。」
私(かっ・・・かっこいい・・・!こんな可愛い子になんて上からの発言!)
その時の私の脳内BGMには、さだまさしの関白宣言が流れていた。
もちろん先ほど同様アイス、水をテーブルに運んだ。
私「いらっしゃいませ。」
女の子「・・・・・。」
(美しいバラには棘がある!!!)
アイスと水を運んだが、先程の席とはうってかわり、完全無視だった!
私の人生で初めてバラの棘が心に刺さった。
そしてまたカウンター付近に戻り石ころに戻ろうとしていたとき、
T「ほら、一緒に行くぞ。」
Tさんに呼ばれ一緒についた席は・・・Rさんのお客さんでついさっき完全無視の席だった。
(まじかよ!?さっき完全無視されたし、私はお気に召されてないのでは・・?)
などと考えながらも、もちろん右も左もわからない。
Tさんに続くように女の子が座っているボックス席の丸椅子に座って接客へと入った。
私はもちろんお地蔵さん状態である。
(Tさんのテクニック・・・勉強させてもらいます!!!!)
一方Tさんは・・・
T「いらっしゃいませ。」
女の子「・・・おはよ。」
Tさんに対してもあたりはきつかった!!!
いきなり途切れる会話。勝手に気まずくなる私!!
私を呼んで席についたので、私はてっきりホストとしての会話のテクニックを披露してくれるのかと思いきや・・・・
Tさんにもほぼ無視に近い状態だった!!!
恐らく・・Tさん自身も一人で付くのが不安だっただけっぽい!!!
・・・その時のTさんは突き抜けるほどダサかった!!!
少し私とTさんでお地蔵タイムを過ごしてから、Rさんがボックス席の女の子の隣に座った。
女の子はバラに棘状態、
Rさんは縁なしメガネで怖い雰囲気…
Tさんは頼りになりそうもない、
ピンチだった!
人一倍、気を遣ってしまう私には耐えられない空気・・・
本物のお地蔵さんになりたいぐらいだった。
少しばかりのお供え物と赤い頭巾があればそれ以上何も望まない状態だった!
R「今日から働く井出ってやつだから。さっきも言ったけど、俺の名前はR、よろしくな。」
私「・・!井出です。よろしくお願いします!」
女の子「よろしくね。私はY子っていう名前だから。」
Rさんは実は優しかった!バラの名前はY子さん。
Y子さんはその後、Tさんと私に対してはやはりあまり愛想はよくなかったがRさんに対しては、ちょっと男勝りな感じのしゃべり方ではあったが、今風に言うとツンデレという表現がぴったりな女性だった。
1時間経たないぐらいの時間がたった頃であろうか・・・
店のドアが開いた。
二人の男性がまた入ってきた。一人は結構年輩に見える男性。
もう一人はミディアムヘアの茶髪で、ベージュっぽい上着に黒いパンツ、一人だけ明らかに恰好が違っていた!
N「おはようございます。」
A「おはようございます。」
ミディアムヘア「おう、おはよう。」
その挨拶の仕方・恰好の自由さ・出勤時間で上の人間だという事はすぐわかった。
私はSさんに奥のビップルームに呼ばれ、呼ばれた先には先ほど入ってきた二人がいた。
「君が井出君?私はこの店の専務をやっているK野といいます。」
その年輩に見えた男性は、うっすら茶髪の長めの髪型で、男前ではなかった。
正直言うと・・・・どちらかと言うとブサイク寄りの顔だった。
やはり従業員達の中では一人だけ年輩であり、35歳ぐらいだろうか?K野専務と言った。
「よろしくな。俺はR華。一応社長です。」
もう一人の私服っぽい人はR華さんといった。年齢は25歳ぐらいだろうか。
顔は薄い顔立ちだったが鼻筋も通っていて、身長は高くないが、かなり男前だった。髪型のせいで余計に若く見えていたのかもしれない。
もちろん若すぎる社長に私はビックリした。
私「よろしくお願いします!」
K野「よーし、じゃあ・・・面接合格!給料システムを説明するね。
一応三か月間は給料保証期間という事でお客さんを呼べなくても給料は出るから。
それで保証期間が終わってからは売上がないと給料はでないからね。
そして保証期間が終わってからは総売上の30%バックだから。」
私「はいっ。わかりました。」
面接合格の意味がわかったであろうか?
他の店はどうかわからないが、特にBではホストの人件費が不当に安かった。
売上を上げれないものには給料を払わないという事だ。
人件費がかからないのであれば、雇わないわけがない。
店側にとっては、売上を上げれるように成長したらラッキー+どちらにせよ損は無いという事だった。
今でこそ馴染みのあるブラック企業という言葉を遥かに凌駕した条件だ。
ディープブラックとでも言えばいいのだろうか・・・?
しかし、その時の私はピュアボーイであった。
人を疑う事を知らない子犬の様な少年。
今となってはおかしいとわかる事だが、保証期間が終わって、もしお客さんを呼べなかったら一か月間働いて給料が0円という事だ。
しかも、保証期間中の日当もあってないようなものだった。
それがわかるのは、一か月後の給料日だったのだが・・・。
そんな右も左もわからないまま、初日だったが閉店まで働いた。
初日は、お酒をあまり飲まなかった。
店の片づけをして、外に出た時にはもう明るく、日光で目が痛かった。

そして、スーツを脱ぎ、私服に着替え、Tさんも同じ駅という事で一緒に駅まで歩いて行こうと誘ってくれた。
T「いや~。
ほんと厳しいよこの世界は。
俺も後一か月で保証きれるからやばいよ・・。」
私「そうですよね~。
僕も早くお客さん見つけないとまずいですね。
でもそういえばRさん、見た目とは違いけっこう優しいですね。
Rさんって何歳なんですか?」
T「んっ、Rさん?19歳だよ。」
カルチャーショック!!地球が二つに割れた。
T「そういえば、NさんとAさんも19歳だったな。」
地球が四つに割れた!
信じられなかった!
自分と同い年だなんて・・・。
自分なんか丈があってないスーツに丸椅子に座ればホワイトソックスがこんにちは状態。
一方、あの三人はバシッ!
と自分の体形にしっかりあっている隙のない恰好・・・。
同じ19歳なのに差は歴然だった。
そんな会話にカルチャーショックを受けている間に私とTさんは栄の駅まで到着していた。
T「じゃあ、また明日。」
私「明日もお願いします。」
営業中はダサイ場面もあったが、Tさんの存在はとても嬉しかった。
そして、私が帰る方面の電車はやはりとても空いていた。
私「とりあえずやるしかないな……。」
そうつぶやいて、1月の朝日の中を、電車を降りてからは早足で家まで歩いていた。
自分で考え、自分で決め、自分で行動をおこした。もちろんまだ右も左もわからない非日常の世界であった。
私は、ホストをやってよかったな、と今でも思っている。
とてもすばらしい経験であったと……。
しかし当然、いばらの道だった……。
まだ季節は1月の真冬の中、答えのない答えを探し求め私は、ネオンへ飛び込んだ。