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13/7/27

ヨーロッパ自転車旅の途中、アムステルダムで知らないおじいちゃんとサッカーTV観戦した話

Image by Olia Gozha

「わしはロッテルダム出身だから、フェイエノールトが好きでな」

そう言ったおじいちゃんの目は、大阪のおっちゃんと同じ目をしていた。


自転車ヨーロッパ旅。


うずうずからの、思いつきで。


2011年夏。僕は大学3年生で、うずうずしていた。

うずうずしていたので、行ったことのない海外に行くことにした。

並外れてうずうずしていたので、思いつきで自転車旅行をすることにした。


自転車を飛行機に載せられるのか航空会社に交渉するところから始まり、

自転車の梱包、空港への送付手配、コース策定、宿の手配など、

様々な紆余曲折を経て、ヨーロッパに突っ込んだ。


航空券は、フランス・パリ着。11日後、ドイツはデュッセルドルフ発。

パリからルクセンブルク、ベルギーはブリュッセル、ブリュージュ、

アントウェルペンを経由してオランダはロッテルダム、ハーグ、

と電車と自転車を乗り継いでアムステルダムまで、予定通りたどり着いた。

あとは電車でドイツに行って、あちこち見て回るだけだ。



アムステルダムの広場にて。


予定通り来れたので、予備にとっておいた1日を、

アムステルダム散策に充てることにした。

ゴッホ美術館、ハイネケンビール博物館、アンネ・フランクの家など、

観光名所を一通りまわり、広場に落ち着いた。


時刻は午後5時頃。夕食にはまだ時間がある。

ふと目についたのは、アムステルダム名物「コーヒーショップ」

やけに派手なネオンの電飾が目に痛い。

アムステルダムでコーヒーを飲む店は「カフェ」という。

では、「コーヒーショップ」とは何か?


アムステルダムの「コーヒーショップ」とは、「大麻」の店。

アムステルダムでは大麻が合法である。

日本人が吸ったことがバレればもちろん日本で逮捕されるが、

アムステルダムで吸って日本で黙っている旅行者も少なくないという。


コーヒーショップにも、観光客向けとそうでないものがあり、

広場に面したものは観光客向け。8ヶ国語で解説が書いてある。

日本語でも解説が書いてあった。


若干の興味を持ち、入り口から薄暗い店内を覗いてみると、

タバコのように紙で巻いて、大麻を吸っている若者たちの姿が見えた。

そういえば僕はタバコを吸えなかった。

そんなに興味もなかったので、なにもせず店を出て、広場のベンチに座った。


まだ日の暮れないアムステルダムの街を、なんとなくぼーっと眺めていると、

隣りに座ったおじいさんになにか話しかけられた。

ちょっと驚いたが、どうも英語では無さそう(おそらくオランダ語)だったので、

「ごめんなさい、英語しかわからないんです」

と返すと、英語で話しかけてくれた。


「何してるんだい?」


あまり喋れない英語で頑張って返す。


「コーヒーショップに行こうと思ったんですけど、やめました」

「そうか…。あれが好きなのかい?」

「いや、吸ったことないですけど、ちょっと怖いですね」

「やめたほうがいい。若者が沢山入ってるが、あれはよくない」


おじいさんの口ぶりを見て、

日本で言うパチンコみたいなもんなのかな、と思った。

法律で禁止されていないからと言っても、

アムステルダムでも大麻のイメージは、決して良い訳ではないようだ。


だが正直、突然話しかけてきたおじいさんに対して、少し警戒した。

アムステルダムはゲイがとても多く、たしか同性結婚もできたはずだ。

おじいさんとはいえ、少し危ないかもしれない。

とりあえず話してみる。


日本から来た、という話だとか、

おじいさんがずっと学校で社会?英語?の先生をやっていて、

この1年くらいに退職したばかりで、

アムステルダムの教育施設?教育委員会?かどこかに行った帰りだという。


「もし予定がないなら、ご飯でも食べに行かないかい?」


警戒心はあったが、学校の先生をやっていたということが本当なら、

まあ、大丈夫だろう。

と判断して、僕はおじいさんについていくことにした。


つづく。




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