第9話 〜心動かすもの~
私が合格したのは奨学金オーディションであって、バークリーに入学を許可されたわけではありません。
苦難??は続きます。
日本の大学を受けるのと同じで願書を提出します。
日本の大学と違うところはこの願書さえ通れば入学ができるということです。
ということは...願書命ということです。
願書はバークリーに資料を請求すると一緒に送られてきます。
オーディション会場にも置いてあったと思います。
この願書はやや3部にわかれていて、
一つは専攻予定の楽器(ボーカル)について今までに勉強に使った本とか、
どんな学校に通っていたとか、どんな先生に習ったか、とか...いわゆる経歴をかくものと、
小論文、あとは推薦状です。
試験がないので、小論文は結構合否を左右すると思われます。
それはもう。。。必死こいて書きました(T_T)
理想的な内容としては
「私を合格させれば、きっとあなた方にとって利益をもたらす働きをするでしょう」
みたいな感じで、
バークリーで学んだことをいかに将来的に生かしバークリー音楽大学という名前を世にしらしめるか?というような事を書くといいようです。
ちなみに私は、
「日本には本格的にジャズボーカルを勉強している人は少ない。
それは日本にジャズボーカルを教える大学がほとんど ないからだ!(実は洗足大学がありますが)
だから私自身がバークリーで学ぶことの素晴らしさを体験し、それを日本に伝える役目を果たしたい!」
このような偉そうな文を、書かせていただきました。
ハッタリとは言え、説得力あるでしょ?!我ながらグッジョブ^^;
もちろん可能な限りネイティブに添削してもらうことをオススメします。
そして推薦状ですが、
音楽を習っている先生やボイトレの先生など、とくかく多いほうがいいので頼める人にはお願いしましょう。
ただし、良いことを書いてくれるように頼みましょう。(あたりまえだ)
私は理論を教わっていた先生がバークリー卒だったので、お願いしたらそれはもうツボをついた素晴らしい推薦状を快く書いてくださいました。
もう一通 、バークリーへ行くために色々相談にのってくれいていた人がカルチャースクールで歌を教えている先生で(同じくバークリーで1年学んだ経験のある人)、その人にもお願いし、
2通の推薦状を提出しました。
そしてもうひとつ...
英語力に関する推薦状です。
この書類は事前にTOEFLかTOEIC(こっちはダメだったような気も...うろ覚えですが)のスコアを持っていれば特に必要ないと思いますが
なんと私、どちらも受けたことありませんでした^^;
これからアメリカの学校受験しようって人が...なんというマヌケさ。
なので、どうしても、どうしても
英語力に関する推薦状が必要だったのです。
TOEFLのスコアを持っていない以上、相当素晴らしい推薦状でなくてはなりません。
後で聞きましたが、英語のネイティブに書いてもらった推薦状はかなり効力があるようです。
高校や大学の英語の先生に書いてもらうというのも手ですが、この場合強力な推薦状とまでは行かないのかも。
やはり”人のいいネイティブ”を探して書いてもらいましょう!?
わたしは、当時英会話を習い始めて半年目くらいの時で、その先生が幸運にもカナダ人でした。
なんとしてもこれは推薦状をゲットしたいところです。
ところが、当時の私の英会話力は相当なものでした(ダメ加減が)
推薦できるところなど、まずナイ状態だったと思われます。
とりあえずそのティーチャーに「英語の推薦状が必要なのだ」ということを告げると
意外にも快くオーケーしてくれ、その場で書いてくれました。
(しかしインタビュー代だといってレッスン一回分請求された)
で、ルンルンでそれを理論を教わっていた先生見せると
「これじゃ推薦状にならないよ」という厳しい一言。
確かによく見てみると
会話力、単語力、などの項目がマークシート形式になっている よい ふつう がんばりましょう みたいなところが、ほとんど
ふつう
になっていたのです。
私は、ふつう でも「ラッキー♪」くらいの英語力でしたが^^;
これでは推薦状としてはまずいのだ 、ということをティーチャーに告げました。
すると
「教師として、嘘は書けない」
というではありませんか。
ごもっとも!
しかし!
引き下がるわけには行きませんでした。
私は無理を承知で
「全て、excellent(よい) にマークしてくれ」
と頼みました。
「嘘を書いた事で学校側から非難されるのはごめんだ、第一向こうで授業を理解できるのか?」
というようなことを言う彼に向かって、この時
私は初めて例文以外の英語を話しました。
「 I want study music!!! not english!!!! 」
はい、そうですね。
文法、間違ってます^^;
正確 には「I want to study music」ですね。
しかし、頭で考えず、本当に心の声を伝えられた!という達成感がありました。
これこそがホンモノの英会話です!
私の迫力に押されたのか、文法は間違っていてもはっきりと私の意志は伝わったようです。
「私は音楽を勉強しに行くんだ!英語を学びに行くんじゃない」
これに彼は感動(観念?)したのか 推薦状を書き直すことを約束してくれました。
数日後に受け取った推薦状には
マークシート形式の部分だけじゃなく、その用紙の裏に
彼女はきっとアメリカに行ってもうまくやれるだろう。
英語はまだまだ日常会話程度だか、彼女のパーソナリティーを持ってのぞめば
必ず会話力向上につながるはずだ。渡米までにまだ時間があるし、今後も彼女のサポートを約束する。
というようなエクストラな推薦文まで添えてくれていた。
ありがとうグレン。あなたは最高です。
(時間かかった、とか言って追加料金取られたけど←しっかり者)
さすがにこの推薦状を勝ち取った時は胸が熱くなりました。
まさに、無理だと思っていたものを、無理だと諦めない事で勝ち取ったのです。
不可能な事などないのかもしれませんよ。
もしあるとしたら、それは自分が諦めた時、なのかもしれません。
一ヶ月後、バークリーから
「 私達はあなたの入学を待っています。」
という手紙が届きました。
しかも、英語力が足りない人は有無を言わさずバークリー入学前に入学させられるという英語のプレスクールもパス。
文法間違いの、あの一言がもたらした”ミラクル”。
人の心を動かすのは、やはり人の心という事です。
さていよいよ入学の日が迫ってきました。
第一章 はこれにておしまい。
なお第一章は2004~2006年にかけて書いたものです。
第二章 いよいよ渡米、そして........挫折。10年の時を経ての現在迎えている私の人生の第二幕?!へと続きます。
お付き合い頂けましたら幸いです。