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13/5/19

ジャメイカないす。 -ファンキーな'90年代ジャマイカ旅行記-03 おとり捜査に協力も…

Image by Olia Gozha

 とりあえず、刑事ミスター・ライトと僕は、ダウンタウンでカネを盗られた場所へ行くことにした。昨日の記憶をたよりに、どうにか例の広場に到着。ミスター・ライトは広場にいる人たちに聞き込みをしている。カネを巻き上げたあの三人組を彼等は皆知らないという。昨日と同じように井戸端で洗濯をしているオバチャンたちも、恐喝3人組のボスだと言われていた男も三人を知らないそうだ。その後、カネを払うのに両替をしたバーへ行って話しをするも、やはり見ず知らずの三人組だったと言う。
 うーむ、うまいこと騙されちゃったもんだ。昨日ラスタマンkenにリラックスしろとアドバイスされてたのに、いざという時ビビって周囲の様子を見極める事ができなかった自分に腹が立つやら情け無いやらで悲しくなった…。

 ここで刑事ミスター・ライトは、ランチ後の午後1時半にもう一度会って捜査をしようと言う。海辺でのんびりしようかとジャマイカまで来たのに午後も捜査にお付き合いかよと思ったが、保険のためのリポートを書いてもらわなくちゃならんこちらの立場としちゃあ断われんでしょ…。

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 さて、捜査の再開となった訳だが、待ち合わせをした場所は昨日僕が恐喝3人組のうちの一人目に会ったあたりだった。
 いきなり刑事ミスター・ライトは、此処でおとり捜査をするのでおまえ一人でここからダウンタウンへ向かって歩け、もし犯人が出てきても気付かれないように私は50メーターほど後をゆっくり車で付いて行くからと言う。
 ところが彼の車は真っ赤でとても目立つし、たとえ恐喝3人組が僕を見つけても様子がおかしいと思って出てこないんじゃないかなあ…。それにその道がダウンタウン方向に向かう先の脇にある100メートル四方の空き地の片隅には、堀立て小屋が数軒立ちならび、日本でいうところのホームレスっぽい人たちがお住まいになっていて人通りもあまり無い通りなんですよ。おとりはいいけど何かあったら刑事ミスター・ライトは責任とってくれんのかよって不安いっぱいに…。
 しかし腹を決め根性入れてその場を歩くことにした。午後の炎天下&冷や汗、脂汗で身体中汗でびしょびしょ。刑事ミスター・ライトの車をつき従えながら20〜30分ほど周囲を歩いたものの犯人たちは姿を現わさずじまいで場所を変えようということになった。

  刑事ミスター・ライトの推理では、今モンテゴベイ港には軍艦が入港しているのでその乗組員かもしれないということだった。確かに午前中の聞き込みでは、このへんでは見慣れない連中らしいことがわかったが、軍人にしちゃあ恐喝3人組はちょっとしょぼいルックスだったけどねえ……。しかし彼は自分の推理にかなり自信がありげだったので、とりあえず二人で港へ向かうことにした。

  軍港のゲート前に到着。軍艦の乗組員目当ての商売をたくらむジャマイカンたちでごったがえしいる。ここで刑事ミスター・ライトは例の如くおとり捜査を僕に命ずる。ゲートの前で一人で立っていろという。
 しばらく一人で立っていると(飢えた狼たちの前にほおりだされた羊の如し……)、やはりと言うべきか大勢のジャマイカンたちが商売目当てに言い寄ってくる。3人目に話しかけてきた白タクの運ちゃんが「タクシーはいらないか?」と言ってくるので、いいかげんウンザリしていた僕は 「向こうへ行ってくれ!」 とちょっと声を荒めて返事をすると(このくらい態度をはっきりさせないとジャマイカンはあきらめんのよ)、その男は 「FUCK OFF!」 と言って僕の前を立ち去ろうとした。

 と、その時そばにいた別のタクシーの運ちゃん(この方は営業ナンバーのタクシー)がいきなりこの白タクの運ちゃんに喧嘩をふっかけ、僕の前で拳をにぎりながらの睨み合いが始まっちゃった。ゴングが鳴ったすぐ後に睨み合うプロレスラーのような二人を見ておいおいどうなっちゃうんだよと思っていると、営業ナンバータクシードライバーはいきなり自分の車のトランクを開けて、ナ、ナ、なんと大きな鋸(よく片目片足の海賊が持っているような半月に近い三日月形でギザギザの刃のついたやつ)を取り出して、白タク運ちゃんに切りつけようと構えた。白タク運ちゃんも負けじと足元にあった拳四つ分くらいの大きな石を拾い上げ、営業ナンバータクシードライバーに石を向け睨んでいる。一瞬のうちに目の前で展開する、人が死ぬか瀕死の重傷になりかねない事の成り行きに口をあんぐりして見ていると、まわりのジャマイカンたちが双方を止めに入ってきた。

 で、地面の土ぼこりをまい上げながら何人もが入り乱れての大騒ぎが始まる。そして僕に向かってどっちが悪いのか裁定したいが最初におまえはあの男に何て言ったんだ、と一人が大声で聞いてきた。答えあぐねていると、どこに身を隠していたのかようやく刑事ミスター・ライトがやってきて仲裁に入ってくれる。彼が警察手帳を見せるとようやくあたりは静まった(やれやれ…)。彼は営業ナンバータクシードライバーの海賊鋸をとりあげ、僕を彼の車へ連れていった。運ちゃん二人は自分の非が無かったことを証明するために喧嘩になった経緯を話せと僕に叫んでいる。が、こんな興奮状態でうまく説明できるような英語をアタシャ喋れません。

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 これじゃあ捜査にならんという事で我々はその場をは離れることにした。車中で僕は 「"so much trouble in the world(世界はトラブルでいっぱいだ)"とボブ・マーリーが歌ったけれど、まんまでびっくりした。」 思わず刑事ミスター・ライトに話しかけると彼も頷いていた。
  しかし、約束の盗難リポートも書いてくれずに、僕を使って必死に犯人捜しをする彼もきっと手柄がほしいんでしょうなあ。なんかこいつもジャマイカンやなあ、としみじみ感じ入ったのでした(笑)。 

  結局この日(金曜日)はこれでポリスステーションに戻り捜査終了とあいなった。しかし日は既にかなり西に傾いていた…。
 リポートは週開けの月曜日に渡す。明日からウイークエンドで私はオフだが何か手がかりが見つかったら連絡してくれと言って彼の自宅とポリスステーションの電話番号を書いたメモを僕に渡してくれた。

  保険会社用のリポート欲しさにつきあった一日の捜査では恐喝3人組は見つからずじまいだった。あーこれでお金も戻ってこないし、リポートをもらえる月曜までここモンテゴベイに足止めだし、まいったなあと空を見上げた。しかしこのウイークエンドの二日間で事態は更に急展開していったのでした。 

  ジャメイカ──侮れない処じゃ!

「」


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