top of page

17/8/28

介護を現実のものとして考えていく【その十・決断】

Image by Olia Gozha

義母が最初の担当医に言われたことを思い出す。


施設に預けるとなると、お母さんの心のどこかで「自分の夫だし私が面倒見たい」という気持ちと「手放してしまった」という気持ちが絶対出てくると思います。


この思いはずっと消えていなかった。


例えどのような状況になろうとも「手放した」「見捨てた」という気持ちを抱え続けていく可能性があることを義母は恐れていた。


例え特養(特別養護老人ホーム)であれ、ほとんど入居は難しいとされる老健(介護老人保健施設)であれ施設に預けるという行為そのものが、表現はよくないが【自分の手で夫をあやめること】となんら変わりがないのだ。


確かに当たり外れさえしっかり見極めれば、施設にいるほど安全なことはない。


周囲の家族も少し気楽にはなれる。



だが最近よく耳にする「熟年円満離婚」のような、互いのプライバシーに関心を持たない夫婦関係ならばいざ知らず、毎日のように当たり前に顔を突き合わせていた夫婦が突然会わなくなるというのはお互いに不安なはずだ。


無論お金の問題もある。


期限のわからない施設生活。


普通に夫婦二人で生活するなら経済的に困ることもないだろうが、施設が絡んでくるとなると話は別だ。


決して一筋縄ではいかない。


葛藤する様々な気持ちを、母は第三者の立場であるソーシャルワーカーに切々と語っていたのだ。



日を置かずしてソーシャルワーカーからこの話を聞かされることになるわけだが、血を分かち合った娘である妻はもちろんのこと私でも義母の本音は薄々は分かっていた。


それを口にしなかっただけのことだ。


夫婦が介護で共倒れになることを危惧して施設を勧めていたわけだが、夫婦という絆の前ではあまりに説得力に欠けていた。


義母と娘は何度か言い争っていたような気もする。


というより娘が一方的に責めてしまう形になっていたかもしれない。


それでも義母の気持ちは絶対に変わらないと理解したところでようやく娘が折れた。


施設を利用しないとなれば帰るところは一つしかない。


家だ。


ただ、家に帰るにしても退院すればそれでOKというわけではない。


在宅で介護をするための準備や打ち合わせなどやることは山積みになる。


ケアマネージャーを中心として様々な関係者が絡んでくることになる。


義母一人で対応しきれるとは到底思えない。


幸いにも時間だけは持て余している義理の息子。


つまり私の出番が来たということになる。



PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page