自分の命か、子供の命か。
妊娠15週を迎えたリリカは、医師から非常な選択を告げられた。
医師「一刻も早い、抗がん剤の治療を行います。妊娠中は血液が普通の人より1.5倍と多くなるため、抗がん剤の効果が弱くなります。また、脳に転移もみられるため、治療中に抗がん剤の効果がでない場合、痙攣・発作などが起こる可能性がります。そのような発作が起きるとリリカさんの命も危険にさらされる場合もあり発作が起きた時点で子供の命をあきらめていただくしかありません。そのようなリスクがあっても妊娠継続をしながら治療を選ぶか、今回はご自身の命を優先していただき、ここで、中絶を選択することもできます。すべて、リリカさんが決めてください。」
リリカは言葉を失った。漠然とした。死に対する恐怖心ではなく、悔しさと悲しさがこみあげて
涙があふれてきた。
なんで私が?なんで今?
頭の思考回路が体と切り離されたような気がした。
ただ、自分の命だけの選択はないと、答えはすぐにでた。
この子が、私の中に宿ったには、理由があるに違いない。
医師に伝えた。
リリカ「先生。治療頑張ります。子供もあきらめません。わたしが、病気になって、だからといって子供をおろすことなど絶対にできません。私が子供を守ります。守らないといけないです。なので治療しながらの妊娠継続をお願いします。」
そうして、すぐにリリカの妊娠継続をしながらの病魔との闘いが始まった。
10月5日 妊娠16週を迎えたころ入院生活が始まり、
タルセバという抗がん剤治療薬が投与されることになった。
医師「タルセバを妊娠中の母体に投薬することは日本で前例がなく、世界でも4人しかおりません。リリカさんが日本で初めての試みとなりますことから、胎児にどのような影響がでるかわかりませんが、とにかく希望をもって頑張りましょう。」
こうしてタルセバの投薬が始まった。
2週間は副作用がどのようにでるのか、経過観察の為、入院をした。
間質性肺炎を危険視されたが、幸いなことに乾燥肌になったのと、髪質が変わったくらいで
TVなどでみかける脱毛や吐き気などは、ほとんどなかったので退院した。
それから、毎月1回の経過観察で大学病院へ通院した。
リリカは発病した際にも、妊娠中であったことから、CTを撮る際に造影剤を使わずに撮影したほどだ
経過観察も、CTを何度も行うことができず、レントゲンで影をみるといった診断がされた。
医師「レントゲンで肺の影をみるところ、投薬前と後では半分になっております。妊娠中で薬の効き目が悪いと想定しておりましたが、かなり良い結果で驚きました。胎児も発育不良なく、すくすく成長しております。引き続き、タルセバを投薬頑張りましょう!」
リリカは喜んだ。本当にうれしかった。子供にあえる大きな一歩を踏み出した。


