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17/4/18

小学生時代の、忘れられない思い出・その1

Image by Olia Gozha

「1年生」


小学校へ入学

今でもはっきり覚えているのだが、僕が小学校に入学したとき、桜が満開で、おじいちゃんとおばあちゃんが、入学式のための上等のジャケットを買ってくれた。


入学式の看板が掲げられた校門の前で、お母さんが「写ルンです」みたいなフィルム式のカメラで写真を撮ってくれて、みんなでお弁当を食べた。


これからは保育所とは違う、もっと退屈しない、楽しいことが待ち受けているという予感に胸を膨らませていた。


小学校1年生になってすぐのころは、小学校6年生の生徒が一対一のパートナーとなり、身の回りの面倒を見てくれるという制度があった。お互い名前をひらがなで書いて、自己紹介をした。そのころは小学6年生というのは背がとても高く、大人みたいにしっかりしているのだと思って緊張した。


ホームルームも朝の10:30分とか、それくらい早いうちに終わって、登下校は班行動で行われた。



スヌーピーのペン立て

そんな日々を過ごしているうちに、もうすぐ最初の夏休みが始まるということになり、僕はクラスメイトと一緒に体育館で体育座りをして、教頭先生の説明と夏休み中の注意事項を背筋を伸ばして聞いていた。


教室に戻ると、「夏休みになるとたくさん遊べるね」と、クラスメイトたちと同じ目線で、友達のような関係性を築いている担任のM先生が元気に言った。


教室の左前面には先生がプリントの丸付けなどをするためのデスクスペースがあって、先生はスヌーピーのペン立てを大切にしていた。


「スヌーピーは先生が好きなキャラクターだから覚えてね」


と、M先生は最初の自己紹介のとき父兄と僕らの前で強調していた。


僕が大人になった今思えば、スヌーピーが登場する有名な漫画は、含蓄があって機知に富む、大人の精読にも堪える漫画として根強い人気を誇っている。きっと、先生もそういうことなのだろう。


「夏休みは楽しいけれど、宿題も頑張ろうね」


そんな風に説明を受けてから、クラスメイトのみんなの机に「夏休みの友」が配られた。僕は保育所では退屈していたけれど、小学校は勉強があるのでむしろ好きになれそうだった。


だからその放課後、浮足立って家に帰ると、学習机に夏休みの友を開いて、そのまま8月31日まで終わらせた。もちろん朝顔の観察とか、自由研究のところはまだ空白だった。でも僕の両親は親ばかで、それを見つけてたいそう褒めてくれた。


僕は翌日、宿題が終わったことを先生に見せようと思い、ワクワクしながら朝の朝礼を聞き流していた。おそらく、運動も苦手で普段は目立たない僕なりの頑張りを、先生にほめてほしかったのだ。


朝礼が終わると、僕はまっすぐ先生のデスクスペースに向かい、 M先生を呼び止めた。ひらがなで僕の名前が書かれた夏休みの友をパラパラとめくっていくM先生の表情が変わった。僕は先生のデスクスペースの前で、スヌーピーのペン立てをぼんやりと見ていた。



夏休みの友

両親は、M先生のことをいまだに良く言わない。無理もなかった。自分の子供を泣かされて、喜ぶ両親はそれほど多くはないだろう。


家に帰ると、仕事を終えた両親が、なぜ僕が泣いているのかを問いただす。僕は何も言わず黙ってうずくまっている。両親が、僕の机に置かれた夏休みの友を見て気が付く。


M先生は、僕の「夏休みの友」を消しゴムで全部消せと言った。だから僕は夏休み前の終業式の日の放課後に、みんな一斉に帰宅して残響だけが跳ね返るその教室で、1ページ1ページ、消しゴムを使って宿題の書き込みを消していったのだった。


その日から僕はみるみる気力を失い、昼休みはドッジボールにも参加したくなくて倉庫などに一人で隠れていた。


そもそも僕は運動が苦手なのでサッカー部の男子生徒などに馬鹿にされ、毎日上靴を踏まれたり、何の前触れもなく殴る蹴るの暴力を受けていた。小学校1年生はだいたいそんな感じだった。



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