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17/2/18

あの駄菓子屋

Image by Olia Gozha

 あれは何歳だったろう。

 幼稚園の頃かもしれないし、小学校一年の頃だったもしれない。少なからず小学校二年ではなかったと記憶している。

 小さい頃は、お小遣いは限られている。少ない軍資金で、駄菓子屋に行くのが僕の日課だった。すもも、麩菓子、ゼリー、きな粉棒と夢の溢れた商品ラインナップは僕の心を躍らせた。商店街の一角にそびえる、今にも崩れそうな駄菓子屋には、一人の老人の男が暗がりに鎮座している。何を語るでもなく、何を考えているのかも定かではなく、何を見ているのかも定かではない、この駄菓子屋の何が不思議かといえば、老人の両隣に、若い成人女性が老人の肩に手を添えていることだ。年齢的に思春期に程遠かったとはいえ、綺麗だな、可愛いな、と目を見開いた記憶がある。

 が、なぜ、老人の両隣にいるのかは定かではない。不思議が募る。老人の娘だろうか?

それとも愛人だろうか?一夫多妻制を陰で指示している権力者なのだろうか、と様々な思いが交錯したが、結局謎は解けなかった。駄菓子屋に毎日のように通ったが、成人女性二人は週三、四回の頻度で、老人の両隣に老人の肩に手を添えていた。母親に不可思議な駄菓子屋の怪について話してみたら、「女の子に興味もつなんて早い!」と、なぜか別の解釈で怒られた。他の人にも話してみたが、「あの駄菓子屋に女の人?それも二人も?」と訝しんでいた。

 なんだか僕だけ取り残された気がした。駄菓子屋の商品はあるし、お代はちゃんと、老人は受け取る。

 やはり僕は訳が分からなくなった。むしろ、僕の小さいながらの願望が具現化した結果だろうか。分からない。そう、なぜなら僕はその街を引っ越してしまったから。

 月日は流れ、あれから数十年。僕は成人し、社会に揉まれ、あの商店街の駄菓子屋がある町に行く機会があった。

 僕は駄菓子屋があったであろう場所に辿り着いた。

 更地になっていた。

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