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17/2/18

12月23日、朝。

Image by Olia Gozha

目が覚めて大きく伸びをしたら何かに手が当たった。

そのまま顔を上に向けると、カラフルな箱が目に入る。

僕は慌てて起き上がり、被さるくらい身を乗り出して箱を眺めた。


水色の包み紙に、サンタさんとトナカイとツリーの絵がぱらぱらと散らばっていて、左上には赤と緑のリボンがくっついている。

リボンを止めた銀色のシールにはぐにゃぐにゃの文字が書いてあった。

この前ケーキ屋さんで見たチョコプレートとそっくりだ。

なんて読むの、と聞いたら、ママが教えてくれた。

だからこれも読めるよ、「メリークリスマス」って書いてあるんだ。


そうっと箱を持ち上げて、包み紙の端っこを探す。

それから少しずつ、ゆっくりテープをはがしていく。

途中で包み紙が破れてしまったけれど、そんなことはすぐに忘れてしまった。

破れた隙間から見えた箱には、僕が今一番欲しいものの名前が書かれていたからだ。

包み紙を全部外して、箱を両手で持ち上げてみる。

思わず、わぁ、と声がこぼれた。


そのとき、僕は気づいた。気づいてしまった。

僕が一番欲しいものを知っていて、僕の枕元にこっそり置いていくことができて、クリスマスの日を間違えちゃう人。

そんな人、一人しかいない。

これはイチダイジだ。


僕は箱を置くと急いで部屋を出て、ママのいる台所へ走った。

そして洗い物をするママの背中に向かって叫んだ。


「ママ、大変! あわてんぼうのサンタクロースが来た!」

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