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17/2/16

好きなことを仕事にする苦悩。

Image by Olia Gozha

ゲーマーがゲーム開発者になったら、ゲームが嫌いになったお話。

 私は、20代後半で、いわゆる大手のゲーム会社に勤務しています。

 私は根っからのゲーム好きでした。歳が離れた兄がいたこともあり、幼稚園の頃からファミコンで対戦ゲームをしたり、小学1年生の頃にはプレイステーションを誕生日プレゼントにもらって、夢中でプレイしたのを覚えています。中高、大学時代には、通学路のゲーセンで筐体にかじりついていました。

 そんな私が就職の際にゲーム会社を選んだのは、当然でした。

「自分と同じように、子供から大人まで夢中になって、泣いたり笑ったりできるゲームを作りたい。そしてそのゲームのエンドクレジットには、自分の名前が大きく載るんだ!」
 それが私の夢でした。

 友人たちが面倒くさがる就活の中で、私は壮絶な勢いでインターンシップや説明会、エントリーシートの投稿をおこない、かなり早い段階で、自分の好きだった大手ゲームの会社に内定をいただくことができました。まさに天にも昇る心地でした。

 やる気に満ちた1年目、いわゆる「炎上」しているプロジェクトに配属され、今のように制限が厳しくない中、月100時間を超える残業をして、リリースに漕ぎつけました。

 しかし、そこには夢に見ていたような達成感はありませんでした。ゲームと言っても、スマートフォンのアプリだったからです。リリースしたら終わりではなく、週に一度はアップデートをし、プレイヤーに課金させるためにあの手この手を尽くすという状況でした

 終わらない物語、追加され続けるキャラクター、エンドクレジットなんてありません。

 おまけに、新しいアプリの開発のために、他社のアプリを研究しろ、という課題が出ました。日々大量にリリースされる他社のアプリを、課題消化のために睡眠時間を削ってやり続ける毎日が続きました。

 2年目の夏、私は抑うつ状態になり、しばらく休職することになりました。テレビやスマートフォンなどの画面を長時間見ることが、不可能になっていました。大好きだったゲームを、身体が拒否していたのです。

 とはいえ、働かなければ食べていくことはできません。しばらくして復職し、リハビリを経て元の開発職に戻りました。働き方も、「最高のモノのために一生懸命やる」から、「とりあえずテキトーにやる」に変わりました。

 一方で、ゲームへの耐性は、まだ戻っていません。課題のアプリを適度にこなすだけで精一杯、自分から他のゲームをしたいと思うことは、無くなりました。

 もしかしたら、自分が夢に見ていたような素晴らしいゲームが世に出たとしても、私がそれをプレイすることはないかもしれません。私は、自分の夢だったゲームを、嫌いになったのです。

 長くなりましたが、「大好きなことがあって、それをいつか仕事にしたい」と思っている若者へ、私からのメッセージです。

 好きなことを仕事にする喜び。それは、苦労して達成したとしても、保証されるものではありません。私のように、好きだったことを嫌いになってしまう人も、いるかもしれません。

 だから、人生設計するときにはぜひ、「趣味」と「仕事」を切り離して考えることをおすすめします。売上や成果物に縛られない、自由なフィールドで、自分の趣味を存分に楽しんでいれば、いつか最高のモノを生み出せると思います。

 人生のフィールドを広げるのは、他でもない、自分自身の選択なのですから。

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