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17/2/10

いちばんの助け(うつ病)

Image by Olia Gozha

 どうやってうつ病の人を支えたらよいか。何をしてあげられるか。そんなあたたかい気持ちをもってくださる方々に、心からの感謝をこめて、いくつか提案をさせてください。これはあくまでも私の主観的な意見で、何が助けになるかは、人それぞれでしょう。でも、ちょっぴり普遍的な部分もあるかも知れません。


1、特定の治療法を勧めない、強要しない

 これはもちろん、「精神科の受診を除いて」の話です。健康法や生活改善法、サプリメント、カウンセリング、ヒーリング、○○療法などなど。「こういうものもあるよ」、とちらっと話すだけで充分です。それで本人が興味を示さなかったら、それ以上勧めない方が良いと思います。なぜなら、本人は症状と闘うだけで、もうせいいっぱいなのです。しかし、真面目な性格の人は、「やはりこれをやった方が良いのだろうか」、と相手の勧めを真剣に受け止めてしまい、その健康法にさらなるエネルギーを費やし、余計に消耗してしまうことが多いからです。精神科医の友人が、「治療もある意味、刺激だから。今はとにかく刺激から自分を守って。」、と言ってくれたことがありました。この言葉は深く心に響きました。


2、助ける側が無理をしない

 共倒れにならないためにも、助ける側が自分に出来ないことをする必要はありません。私の場合も、母は実家での療養を提案してくれましたが、私はあえて、入院を選びました。それは正解でした。病院では堂々と患者でいることが出来ますし、お世話をしてくれるスタッフの方々はちゃんとお給料をもらって、それを仕事としているわけです。


3、うつ病に特定の原因はない

 幼少期の何かが原因だったのだろうか。職場の人間関係のせいなのだろうか。性格が原因だろうか・・・ これは、うつ病の本人も、しばしば悩み、結局答えが出ない問いです。うつ病は数えきれないほどの、さまざまな要因が積み重なって、発症します。「きっかけ」となる出来事はつきとめられても、それはきっかけでしかありません。原因探しは本人も周りの人も消耗するだけで、実りがありません。医療関係者としてうつ病の人と向き合う場合も、ある特定の「解釈」は、大きな落とし穴だと、私は思います。「何だか解らないけれど、この人は疲れすぎてうつ病になってしまった。」 少々極端かも知れませんが、私はこの解釈が一番正解に近いと思っています。


4、ぜったいに絆を絶たない

 「私たちみたいに精神の病気を抱えている人って、人との絆にすがって生きているところがあるよね。」 入院友達とこんな話をしたことがあります。それは、決して四六時中一緒にいろということではありません。むしろ、放っておいてほしい時もたくさんあります。でも、一度、うつ病の人と信頼関係を築いたら、それを裏切らないでほしいと思います。逆に、出来ない約束はしない。例えば、「苦しくなったらいつでもメールしてね」、と言ったなら、どんなに忙しい時でも、一言でもいいから、必ず、すぐにメールを返す。健康な人なら、返信がなくても、「まぁ、あの人は筆不精だから」と見逃すことも出来るでしょう。しかし、本当に苦しい時に、迷惑かなぁという気持ちを乗り越えてメールや電話をして、返事がない、ということは、うつ病の人にとって、大きなダメージになります。「信頼していたのに・・・」という落胆と、孤独感に襲われます。誰かひとりでも、そういう信頼の出来る人がいると、それは、この上なく大きな支えであり、回復の助けとなります。


5、必ずいつか本人が道を見つける

 うつ病の人を傍から見ていると、「いつになったら元気になるのだろう」「私が何とかしてあげないと、ずっとこのままなのではないだろうか」、と焦ってしまうことも多いのではないでしょうか。でも、必ずいつか、本人が自分で回復への道を見つける、私はそう信じています。そして、その「道」は、ぜったいに「本人が」見つけなくてはならないのです。時間はかかると思います。でも、きっかけは、どこに潜んでいるか分かりません。私の知り合いは、ある日、転んで足を骨折し、その途端に長年のうつ病が治ってしまったそうです(笑)。私は、入院中のある日、散歩がてらに本屋に行って、「わたしはマララ」という本を見つけました。15歳にして教育の機会均等のために立ち上がり、タリバンに撃たれ、その後も活動を続けているマララさんの手記でした。病院で一気に読んで、「私も、私に出来ることをせいいっぱいやろう!」、と思いました。これが、新しい職業、新しい目標へと私を向かわせるきっかけになりました。そして、まさにその目標が、うつ病からの回復の、大きな力になっています。

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