そろばんを始めて自信がついて、その後勉強もスポーツもうまくいったけど地味でダサいとそろばんをやっていたことをひた隠しにした。そんな私が就職活動で再び特技はそろばんだと、今度は恥じることなくいえるようになったというお話です。(ちはやふるみたいな話)
趣味が自分を作ることがあるんだということが伝わりますように。
当時の私は引っ込み思案で成績もよくないおとなしくて地味な子だった。
小学生でそろばんを始めた。最初は、姉が習っていたからだけど、指をはじくしぐさが楽しくて夢中になった。先生が言った。「いいかい。電卓で計算するものは電卓を作ることができないが、そろばんで計算するものは電卓を作ることができるんだ。」・・・(私:かっこいい!!!!)この言葉が、私のそろばんへの情熱を掻き立てた。そうして、小学生時代はそろばんの練習に励んだ。おかげで、小学4年生で大会に出られる資格を得た。
初めての大会、最初は「まあ、初めてだしリラックスしてやろう。」そう思った。隣に座った男のことも話したり、ちょっとしたイベントに参加してる感じだった。だけど・・・。「この問題を正解した方は読み上げ暗算決勝戦進出。正解者は挙手!」「「はい!!」」「その二名前へ!」片方は私だった。驚いた。まさか一番をとれる可能性が出てくるなんて思わなかった。舞い上がった。すぐに前へ出て、決勝相手の隣に座った。「願いましては・・・・。」・・・・「優勝者はこちらに決定!!!」負けた。席に座るとき、男の子が励ましの声をかけてくれたが反応できなかった。悔しかった。こんなに勝ちに執着すると思わなかった。最初の「まあ初めてだし」と思った軽いノリの自分を恥じた。この経験が、ただそろばんができるようになるではなく、優勝できる実力をつけるという意思をもたらした。
その後、私の力は上がって県大会に出場するようになった。そこでは自分の及びもしない有段者たちと戦えた。田中姉弟(仮)など高校生と中学生でこの大会では常連だという。今回は自分より上の実力を知り、ますます上には上がいるなあと実感していた。お昼ご飯後、ちょっとしたレクリエーションがあった。くじを引いて、ペアになった人と一枚20問ほどの見取り算の問題を解き、回答時間が早かったペアから順に順位がつくというもの。ペアが見つかった時、先生から「すごいのとペアになったな」と言われた。あの田中姉弟の姉だった。問題を解き始めると、ペアが両手でそろばんをはじいた。ものすごいスピードで。負けないようにと何とか私も片手で計算するが、スピードの差が歴然。私がたった3問ほどで、彼女が残りを解き、審判のもとへ。しかし、、、「間違いがあります。」計算しなおしだ。どこが間違ってるかは教えてもらえないため、もう一度初めから取り組むが、彼女がなかなか苦戦している。その時、弟がやってきて、「姉ちゃんが悪い」といった。この言葉を聞いたとき、私が実力がなさすぎるせいで相手の調子を崩していることに気づいた。彼女も彼もはこの事実に気づいていつつも、実力が足らない私に気を配って彼は「姉ちゃんが悪い」といい、姉もその通りという風にうなずいたのだ。その後、何とか入賞はしたものの、彼女の成績を考えたからだいぶ低い順位だった。実力がないと実力がある人の足を引っ張ることになることを痛感させられた。・・・・(先生、私両手打ちやりたい。実力ないせいで実力ある人の足引っ張るなんてもう嫌だ)
その後は両手打ちを練習し始めた。思いのほか両手打ちは苦戦したが、練習自体への情熱があったおかげで、両手打ちを練習しつつ級をどんどん上げていった。そして、ある日の県大会。3部、2部、1部と部門別で戦った。私は3部で初めて総合問題準優勝、読み上げ算優勝、読み上げ暗算優勝をとった。この時、2部、1部の上級生は優勝し、私たちのそろばん塾が優勝旗や金メダルをかっさらった。快挙だった。この経験から自信を持ち、「特技はそろばんだ」と小学校で言うようになった。自信がつき、成績も上がってクラスで積極的に発言するようになり、班長もやった。だけど当時、そろばんは不人気で同学年の子もほとんどそろばんをやめていき、気づいたら私しか習っていなかった。そしてある日、「昔もん。そろばんやるなんて昔もんやん。名前も古風やし、昔の人間なんだ」とからかわれた。最初は違うもんと否定していたが、思春期に差し掛かり、スポーツ少年団でスポーツをやってる子が優勝するほうがみんなから尊敬される様を見て、特技がそろばんだということをやめてしまった。クラス替えの時に配られた自己紹介カードでも、特技欄に「そろばん」と一度書いて、消した。
その後、中学ではバスケ部に入り、高校では陸上部のマネージャーを務め、地元の大学に進学した。
そろばんも、二段を習得し、やめていた。
就職活動、
「説明会遅刻するー!!!」慌てた。
電車は岐阜発、説明会会場は大阪。岐阜から鈍行で行く予定が目的の電車が言ってしまった。必死に考えた。「何とか30分前には会場につきたい。そのためには大阪へ〇時着、それを可能にする交通手段は・・・・①岐阜→名古屋→大阪’(新幹線)②岐阜→米原→大阪(新幹線)。名古屋経由か米原経由かの新幹線を使う。ATMに行っている余裕はない。予算的には、今財布に〇円、余裕を持たせたいから実質△円、①だと×円、②だと□円、岐阜から米原は鈍行だし、予算も抑えれて、時間も間に合う。②だ」急いで窓口で切符を買い、大阪へ急いだ。
・・・ってことがあったんだ。」家族に話すと「あんたすごいね、とっさにそんな風に頭回らないわ」と言われた。褒められて悪い気はしなかったので、いい気分のまま履歴書を作成をした。その時、特技欄が目に留まり、小学生の頃を思い出した。「そろばんか。」そうつぶやいたとき、先ほどの褒められた内容が思い浮かんだ。そもそも、とっさに判断を下せる頭の回転をどのようにつけたんだっけ。昔の私はどちらかといえば愚図だった。変わったとしたら・・・・・・・・。「そろばんだ。」そうだ、そろばんだ。私に勉強できる頭と、新しいことに挑戦する勇気、勝ちという目標への執着心、それらすべてをくれたのがそろばんだ。私を作ってくれた習い事だ。特技の欄にそろばんのことを書いた。昔消してしまった特技を取り戻した瞬間だった。
自信を得て、無事に内定をいただきました。
」