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17/2/6

俺が遊び人だって知ってたくせに

Image by Olia Gozha


眠らない街、東京、六本木

その片隅で出会った



いつもどおりの軽いナンパ

可愛かったしノリも良いし…

隣に座らせてグラスを空けていく


途中までは正常な判断が出来ていたけど


策士…ここにあり


可愛い顔した彼女はかなりのヤリ手

飲む分以上に飲まされる

あっという間に理性はどこかへ消えていった



お決まりのように

タクシーに彼女も乗せて自宅に帰る


彼女にしなだれかかればイイ匂いのするその手が心地よいリズムを刻んでくれる

意識を手放しそうなところで自宅到着

足元のおぼつかない俺は彼女の腰に手を回す

ピンヒールの彼女はしっかりとした足取りで隣を歩く


見慣れた部屋で少しずつ意識を覚醒させる

名前しか知らない彼女は

床に座って俺を見上げる


「こっち…」

手をひいてベッドルームにたどり着けば

ヤルことはひとつだけ

そう思ってTシャツを脱ぎ捨てた


…そこから先の記憶は無い


まぶしくて

目がさめた


「おはよ」

ビクっと体が震える

ソファーに座っていた彼女がにっこり笑って振り返る

「え?」

「忘れてるね…さすが遊び人」

「えっと…」

「はい、お水」

手渡された水にお礼を言って飲み干す

「ん」

さらりグラスを奪われてそれはキッチンのシンクにおかれる

「えっと…」

「昨日はどうも」

「…やんな?」

思いついた名前を呼べばそうだとうなずく

「で、大丈夫なの?時間?」

時計を見ればあと1時間

「…シャワー」

そう呟いてバスルームへ

「借りたよ♪」

言われてみれば彼女はすっぴんでそこにいる

「かまへんけど…ちょ、待っとって!」

急いでシャワーを浴びながら昨夜のことを考える


どうやったかな…ヤッたかな…


腰にタオルを巻いた状況でリビングに戻れば

彼女は俺のマグカップで何かを飲みながらソファーでくつろいでいる

「…」

「…あ、コーヒーいただいてるー」

「いや、えぇけど」

「飲む?」

「…おん」

「はい」

「…ありがと」

「いいえ」

湯気がふわふわと宙をさまよっていく

なんでこんな我が物顔なんやとか思ったけどそれはまぁイイことにした


「なぁ」

とりあえず下着とジーンズを履いてから問いかける

「なに?」

「昨日…さ…」

「シテないよ。

 寝ちゃったから」

「…そっか」

「なんてね」

「え?」

にこり笑う彼女はシャワーの間にすっかりメイクを終えている


「また来ていい?」

「お、おん」

「電話番号教えて?」

少しだけ首を傾げる仕草が手馴れてる

それにノっかって番号を教える

電話が鳴る

彼女は電話を耳に当ててないから出てみれば

「それが私の番号」

後ろから声が聞こえる


この子、間違いなく策士


出かける支度をしながら

この子が気にハマりかけていることに気付く


首筋に手を添えれば慣れた様子で頬に手が添えられる

微笑みを浮かべた唇を塞ぐ

絡める舌にも戸惑いは皆無で代わりに刺激されていく

自分のものにしたい…

机の上で鳴る携帯が見えた瞬間、俺は彼女の首筋に痕を残した

当分の間消えないような濃い痕を…


エレベーターの中で繰り返すキス

彼女は器用に俺の首にかかってるネックレスを外す

気づいた時にはそれは彼女の首で輝いてて

「これ返しにまた会いにくる」

耳元でそう囁く

「わかった…約束やで」

かぶっていたキャップを彼女にかぶせエントランスで別れた


仕事中

彼女からの連絡は無くてショートメールもLINEも見返したけど無くて

なんでやろ

ものすっごい落ち込んで

家に帰る

と…

テーブルの上に大人びた文字でかかれたメモが置いてあった

いつの間に…


『おかえりなさい 

 逢いに行ってもいいですか?』


俺はすぐさまスマホを取り出し彼女に電話する

滑稽や…

これじゃまるで彼女の思うツボ


2コールで出た彼女は言う

「昨日会ったところで待ってる」

六本木のあの雑多の中で野蛮な中で待たせるなんて…

気づけば俺は車のキー片手に家を飛び出していた…


昨日出会ったCLUBの前で

昨日とは違う服装の彼女を見つける

急いで車に乗せて発車すれば

「はい」

渡されたのは俺が昨日家で飲んでたドリンク

「あ、ありがとう…」

こうやって気が利くところにまたつかまれる

滑るように道を走り家に辿りつく

「ありがと」

お礼を言って車を降りる背中を見守りながら自分の気持ちに改めて気づく


手を繋いでエレベーターに乗り込む

すぐさま壁際に追いやってその唇を塞いだ

舌を侵入させればまたもうまく絡みつく

ダレに教わったん?

1秒も無駄にしたくなくて駆け込んだ玄関

ドアを閉じて靴を脱ぐ間もなく彼女を抱き締める

相変わらず鼻腔をくすぐる甘やかな香りに意識が飛びそうになる


「俺のモンなってや…」

キスの合間に伝えた想い


「…いいよ」

合間に返ってきた答え


息つく間もなく深く浸食していく


ベッドのうえでTシャツを脱ぎ捨てる

昨日…シてない

彼女に触れて想いだす

抱きしめられて眠った…すごくよく眠れたんや…

大事にその体に触れてそっと重なりあう


「…ほんまに好きや」

漏れた声は吐息に消えた



…俺が遊び人だって知ってたくせに



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