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17/2/1

【魂が腐ることを危惧している】

Image by Olia Gozha

私は出版業界の中核を担う会社の、一人の新入社員である。

自分の能力(ビブリオバトル・企画力・突進力)を最も生かせると踏んだ部署の公募に応募し、川崎市教育委員会を皮切りに日本全国の読書教育活動として実現したいことや、3兆円市場に向けた構想を思う存分ぶちまけた。新規部署では新しい風と、あらゆる企画を無理矢理でも実現させる膂力が必須であると確信したからである。


去る10月10日、会社を辞め自力で構想を実現しようかと迷っていた矢先、絶妙なタイミングで10月12日に公募が出され、読書教育に全力を出せる可能性に大いなる情熱を見出した。そこから自分の中のギアが一段上がり、生き生きと営業として成果を出すことができた。12日、出張先で公募の報せを知り、帰りの特急あずさの中2時間半で応募用紙を書き上げ、14日の朝に上長に相談した。この日のスピード感は凄まじかった。上司がさらに上に相談し、私との面談を重ね、ついには役員と話す機会に恵まれた。14日の昼過ぎである。役員は忙しい中、私のために2度も時間を割き、応募用紙の添削まで引き受けてくれた。


「お前のやることは絶対にこの業界に必要だから、自信を持ってことにあたれ」「お前のやりたいことを全面に引き受けられる部署は、残念ながらこの会社にはない。だから最もやりたいことに近いこの部署に挑戦するお前を全力で応援する」「昼前に、担当役員と部長に挨拶に行った。まだ入社して半年の新人だが、誰よりも明確なビジョンと情熱を持って仕事にあたる男が公募に申し込むから宜しく頼むと伝えた」

私は昼過ぎの喫茶店(穂高)で涙が止まらなかった。素晴らしい職場に恵まれ、だからこそ自分の能力を十全に発揮しなければならないと強く誓った。


結果は落選。通った面々が自分よりも企画力・実行力に優れていたとは到底思えず(生意気であることは重々承知の上)、納得がいかないので面接官を務めた部長に時間を都合してもらい直談判。


「情熱的なのは歓迎するが、他の社員との温度感が異なる」「スタートアップの現段階にあなたの想定することは満足にできないと思う」「営業として一皮剥けたら来て欲しい、負担にならない限りでビブリオバトルの協力を要請する」


つまり扱いづらいから今は来るなと言われたのである。


悔しい。非常に悔しい。


何よりも一段上げてしまったギアが元に戻らない。


新入社員としての今の状況は決して悪いものではない。

・新規店の契約を成立させて下半期表彰がほぼ確定。

・第2回ビブリオバトルの全社大会での企画・運営。

・社内ビジネスコンテストで1位を取得、該当部署と事業化。

営業とは別に3つの部署と企画チームを持ち、それぞれのリーダーとしてチームを動かしている。

正直、環境としては非常に恵まれていることは自覚している。能力の実現の場としても、要求をそこそこ満たしてはいる。

しかし、問題は一段上げたギアが戻らないことにある。


上長にも相談したが「ビジョンが明確過ぎる」ことが営業としてマイナスに作用していると指摘されるとは夢にも思わなかった。


私は自分の可能性を、全て発揮する場が欲しい。そんな都合の良いものはない、なければ自ら作らなければならない。今こそ行動の時ではないだろうか。あと半年待て、とりあえず1年は、とりあえず3年は我慢しろ。確かに一般的にはその方が得策だろう。順当に出世してそれなりの満足感は得られるだろう。


だが、このままでは私の魂が腐る。居心地の良い環境は全力で蹴り飛ばさなければならない。

この業界は、何よりも体力がない弱小書店は、このままでは文字通り一つ残らず消滅してしまう。今、本当に今この瞬間に動き出しても間に合わないレベルで縮小を続けている。

今ここで頑張らずにいつ頑張るのか。


これは出版業界への宣戦布告である。

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Image by Jukka Aalho

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