今思えば、私は幼少の頃からそうだったのかも知れない。
小学校低学年の時だ。
周りのクラスメイトの間では、ビックリマンシールが大流行していた。
貼って貼られて貼り返されて。
そんなキャッチフレーズとは裏腹に、
昭和末期の小学生を虜にしたチョコレートの付属玩具を、
1枚1枚大事にファイリングして、興の全力を注いでいた。
私もそんな流行の神輿に乗っかる一人だった。
毎週日曜日になると100円玉を母から受け取り、
小学生の歩幅には中々の距離に感じられる道程をものともせず、
ただ目的の商品目指して近所のスーパーまで歩を進めていた。
その中でも私は【十字架天使】というキャラがお気に入りだった。
主人公一行の中に混じる紅一点の存在で、
アニメの中では若干五月蠅いぶりっ子キャラ、というイメージだ。
頭上に両拳でぷんぷん言ってるような女性を想像して頂ければわかりやすいだろう。
今となっては中途半端に赤面してしまう存在だが。
小学生はいつの時代も御多分に漏れず、
何とかごっこをするのが定石である。
勿論私の周囲でも、ビックリマンごっこは行われた。
数百種類もあるキャラクターが存在したお陰か、
昔のライダーごっこのように
『俺ライダーやるからお前怪人な』
的な紛争はおきず、
唯々自分のお気に召したキャラクターになりきるだけのものだったが、
そんな中、私も別段躊躇せずに十字架天使のキャラを演じてみた。
すると、クラスメイトの一人が、
『なんだよそれ、お前なんで女キャラなの?』
と宣った。
男が女に、女が男に憧れてはいけないのか?
だが、当時語彙力の低かった私は、それを表現する力も度胸もない。
周囲からの目を気にした私は、
『面白い?ねえ面白い?』
と取り繕うのが精一杯だった。
その後は【マサカリテクノ助】という実に無難で無機質な選択をし、
何とか空気を壊さずに事なきを得たが、
以後その内面を奥深く沈める事に徹する術を覚える事になる。