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17/1/15

今より良いときはもう来ない

Image by Olia Gozha

誰か、この感覚をわかってくれる人がいるだろうか。


人生で起きた色々な事象について「このことに関して今より良いときはもう来ない」と自分でわかる瞬間があった。例外なくそれは1つの物事に対して一度だけ心の底にあぶり出されるように現れ、私はゆっくりとそれを理解する。そしてそれが「外れた」ことは一度もない。

一番古い記憶は中学の時、地元のCDショップに当時好きだったKinKi KidsのCDを予約しに行った時だった。店内にはポルノグラフィティの新曲が流れていて、ランキングの棚に並んでいる曲も全部好きだった。

「今より私がJpopとぴったり重なることは無いだろう」

いつも思考は頭から喉元に降りてくるように言葉になるのに、この感覚は決まって腹の底から実感として先に湧き上がってきて、手を突っ込んで探るようにしてやっと言葉にできる。このときから、ずっとそうだ。

あの頃、自分の世界に流れていた流行歌の全ては私を含んだある集団をターゲットにしていたのは確かだ。

少しずつ時代は変わり、私も年を取った。もはや、流行歌と呼べるものは存在しない時代になった。

あの時の感覚を、20年近く経った今でも興味深く思い出す。あの感覚は正しかった。あの時より世に流れる音楽というものが自分と重なり、噛み合った瞬間は存在しない。

世の流れのような大きなものに対してだけではなく、自分の、全く主観的な物事にもふとその感覚は襲う。大学では2年生のときに友人たちと部室で鍋を囲んだときに起こったし、今の会社で、数年前の忘年会の帰りに冷たくない冬の霧雨に打たれながらそれを感じた。

間違っていたことは一度もない、と言えてしまうのは誇るべきだろうか。それとも悲しむべきだろうか。生きている限り、自分も周りの何もかも、止まっていてはくれない。またあの言葉があとから形を作るような瞬間はきっと来る。

いつかは自分の感覚に裏切られたと思うこともあるのだろうか。私は今、「あの感覚に襲われ終わった」物事に囲まれて暮らしている。

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