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17/1/14

⑧幼き日の傷が残したもの…

Image by Olia Gozha

事務所であてがわれた仕事の受付票を持ち、指定された工場行きのマイクロバスを探しあてると、恐る恐る乗り込んだ。


見回すと男性ばかりで、一番前に中年の女性がひとりいるだけで、私の年頃の女の子はいなかった。


初めてのバイト先で、何処に行くのかもわからず、緊張で身を硬くして座っていた…。


間もなく薄汚れたコンクリートの工場に着いた。幸い私の仕事は、ベルトコンベアーの上の印刷物を、一枚にばらす単純作業だった…。


夢中になっていると、事務服を着た女性が『お弁当頼みますか~?350円です~!』と廻ってきた。


私は行きの電車賃しかなかったので、持金はない…いいです~…と答えた。


昼休みになり、皆が昼食を取る中私は外に出た。

フラフラと工場の塀づたいに歩いていると、後ろから声をかけられた。


『どっかに食べに行くの~?、行くならソコの図書館の食堂いいよ~!』


…とマイクロバスの中見かけた、人懐っこい笑顔の男の人が…

私は一瞬なんと答えようかと…


口から出てきたのは


『私今、お金ないんです~!』

と…正直に言ってしまっていた。


すると彼は少し驚いた顔をした後、

『ほんじゃ貸してやるよ!あそこ安いし凄い旨いんだよ~!』と、前から約束してたみたいに私を促した…


私は迷ったが、少し言葉に訛りの残るその人に甘える事にした…。


二人で美味しい昼食を取り、午後の仕事にも夢中で励んだ…


やがて

仕事が終わって再びマイクロバスに乗り、事務所に戻り、各地から戻って日当を貰う列に並んだ


無事、1日分の日当を貰うと彼の姿を探した…。


見ると足早に駅に向かっている後ろ姿が…


急いで追いつき、借りた昼食代を差し出した。


すると彼は手をヒラヒラさせ、

『いいよ~おごりだ!お疲れさん!』

と言うと、人混みに消えて行った…。


場違いなバイトにひとり来て、昼食代もない私に奇異なものを感じた?


哀れに思った?(笑)


でも私は少し照れた彼の笑顔に、暖かいものを感じて、その日の緊張が溶けていく気がした…。


それからも、私は本当に沢山の人に助けて貰った…。


赤の他人が、何も返せはしない私に、信じられないくらい手を貸してくれた…。

ピンチになると不思議と誰かが、手助けにあらわれた…

だから私はやってこれた…。

荒む事なく、生きてこれた…

続く…


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