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17/1/2

「受験学」

Image by Olia Gozha

「受験学」


 「教育学部」では、教育のあらゆる側面を研究する。研究論文はたくさんあるし、大学には助手、准教授、教授もいる。学会もある。制度が整備されている。

 ところが、大学を卒業して受験指導の業界ーつまり、予備校や塾ーで勤務し始めて気がついた。

「まったく制度が整備されていない」

 受験に関してすぐれた本だと思ったのは、和田秀樹さんの「新・受験技法」くらい。それでも、著者は「灘高」から「理Ⅲ」という超エリートコースを歩んだために、東大受験のみを研究するしかなかった。

 学校も予備校も塾も、何か怪しげな世界なのだ。塾では学生アルバイトも、主婦のパートも「先生」。学問の世界にある業績に応じた助手、准教授、教授という序列もなければ、学会もない。

 経験値ゼロの講師も、ベテランも同じ「先生」だ。学会がないから、指導法や教材の研究は完全に個人芸の域を脱することがない。一子相伝でもない。浮かんでは消えるうたかたのようなもの。

 評価機関もない。大学や高校なら、ランキングがはっきりしているけれど、予備校や塾にはそういう第三者の評価機関がない。そのため、大きな駅前ビルとか、タレントを使ったCMを流す予備校や塾が良いかのような流れになっている。

 まともな業界なら、各予備校の東大合格者数を合計したら定員を越えたなんてことは起こらない。そんな誇大広告のようなマネをしたら公正取引委員会やマスコミの攻撃対象となってしまう。

 デタラメな世界なので、暴走族講師やヤンキー講師がもてはやされ、「ビリギャル」などウソっぽい話ばかりが流通する。

  これでは、生徒たちは何を基準に通う塾や予備校を選んでいいのか分からない。塾はサービス業で、経済産業省の管轄。文科省は関係ない。本当にやりたい放題なんです。

 資格などいっさい必要がないため、誰でも「先生」になれてしまう。


 私は、

「これではならぬ!」

 と思い、公的資格をとろうと、英検1級や通訳ガイドの国家試験を受けた。また、難関大を受けたことがないくせに

「こう書けば京大に受かる」

 と教える講師に呆れかえって、自分で京大を7回受けて高得点を取る方法を研究した。実際、そこで得たノウハウを塾生に教えたら、京大医学部、阪大医学部、名大医学部などに合格していった。

 しかし、制度が整備されていないし、評価機関もない業界だから「ーー賞」をとれるわけでもなければ、「ー-教授」になれるわけでもない。世間は、第三者機関が評価しなければ納得しないものだ。

 つまり、私の得たノウハウも、私が死ねば雲散霧消してしまう。「受験」は人生に大きな影響を与える。そんな重大事なのに、だれも研究対象としないし、学問として扱わない。おかしなことだ。教育学より重要なのに。

  先日、生徒が英作文で by mail と書いてきた。高校生だから、メールといえば電子メールに決まっている。しかし、受験参考書には「郵便で」という熟語扱いだ。つまり、手紙やハガキのことになる。

 これは、どちらが正しいという議論ではない。世代間のギャップの話だ。ご存知ないかもしれないが、赤本や青本の模範解答はバラバラで英作文に「正解」など存在しない。

 模範解答どおりに書いても、8割ほどの得点率になればいいほうだ。

  私の調査によると、京都大学の英語も数学も上限が8割ほど。京都大学の医学部といえば、東大医学部(理Ⅲ)と並んで日本で一番偏差値が高い学部だ。つまり、全国で200番くらいまで。50万人受けるとすると、上位0.04%という状態。

 首都圏や関西圏をのぞく地方なら、「県内で1番」というレベル。そんな生徒でも、8割しか得点が得られないということは、100点をとる人など日本にいない入試問題と言うことになる。

 英作文や和訳に限っていうと、私のように「アメリカ暮らし」「英検1級」の人間でも、8割なのだ。ネイティブだって満点はとれない。これは、いったいどういう意図でそのようになっているのか。

 京大の教授のプライドなのか、もっと良い解答があるはずだと叱咤激励しているのか。

 予備校や塾の講師は、無責任に

「こう書けば、ラクラク合格」

 などと言うが、本当にその指導でこんな問題を相手にして合格できるのか。

 疑問は尽きない。

 ノーベル賞の挨拶などを聞いていると、一流の学者でも英語のレベルは大したことはない。おそらく、入試問題を教授に解かせたら8割いかないかと思われる。ましてや、大多数の塾の講師の英語が京大合格レベルであるはずがない。

 ただ、一般の人は良し悪しが区別できないからだまされている。

    

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Image by Jukka Aalho

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