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16/12/28

ゆれる

Image by Olia Gozha

ボクは新幹線に乗るとき、


必ず「通路側」の席に座る。


理由は後ほど述べるとして、


まず「窓側」の席の魅力は何と言っても、


普段は決して味わうことのできない景色を、


かぶりつきで楽しむことができるところだ。


それはまるで、


スーパーヒーローにでもなったかのようにとにかく速くて、


ほんの数秒ではあるものの、


妙な高揚感。


海や山などの大自然を、


その土地その土地の名物を、


沁み入るように味わうことができる。


ただし、


ふと我に返り、


用を足したくなったときや、


突然の電話がかかってきたとき、


窓側の席に座る人は、


通路側に座る人の前を横切らなければいけない現実が訪れる。


「あ、すみませぬ」


と手刀で軽い会釈をして、


相手方の足にぶつからぬよう、


細心の注意を払いながら通らなければいけない。


ほんの数秒ではあるものの、


妙な緊張感。


ただそこを通りたいだけなのに、


なぜかものすごく悪いことをしているようで、


あれが本当にめんどくさい。


その緊張感と、


窓から見える景色を、


天秤にかける。


ゆれる。


ボクはゆれるのよ。


で、


「通路側」の席の魅力は何と言っても、


身動きが取りやすいところで、


お手洗いが近い方や喫煙者の方、


小さいお子様連れの方など、


頻繁に座席を立つ可能性が高い(ことになるかもしれないじゃん!あんな狭い空間にいて何百キロという不慣れな速度に気分が悪くなるかもしれないじゃん!おなか痛くなっちゃうかもしれないじゃん!という脅迫観念に駆られるボクみたいな)人は、


通路側の席に座るのではないだろうか。


窓から見える景色を楽しむ人を横目に、


いつ来るやもしれないアクシデント、


もとい便意を恐れ、


ボクは通路側の席に座る。


何も起こらなければ、


とにかく退屈で仕方がない。


暇を持て余し、


本を読む。


そこへ後ろから、


女性の声が聞こえてくる。


「コーヒー、お茶、アイスクリーム、お弁当はいかがですかぁ?」


車内販売のお姉さんだ。


「車販女子」


とでも言わせてもらおうかしら。


ボクの横を通り過ぎると、


前の列のお客さんが呼び止めた。


車販女子は、


カートをそのお客さんの横に停めて、


注文された品はどうやらカートの下に入っている物らしく、


取り出そうとしゃがんだその時だ。


ボクの目の前に、


車販女子のたわわな果実、


もといお尻がドーン!


ハイ、もう一度、


二度見でドーン!


制服ぱつんぱつん!


星野源くんのエッセイを読んでいる場合じゃねーわ!


目のやり場に困ってしまうようなタイプの人間ではないボクは、


この機会を逃してはいけないという使命感に駆られるように、


それはまるで研究者のような眼差しと心構えで、


凝視した。


そして、


お会計が済むと車販女子は、


車両から去っていきました。


ボクの瞳に焼きついた、


車販女子のたわわな果実と、


窓から見える景色を、


天秤にかける。


ハイ、


車販女子の圧勝ぉー。


ゆれる余地なしぃー。


帰りの新幹線はもちろん、


通路側に決定ぇー。


ボクは以前にも増して、


窓側の席に、


一切の魅力を感じなくなりました。


、、、ん?


、、、待てよ。


窓側と通路側の席に挟まれた、


あの「間の席」は座ったことがない。


間の席の魅力って、


一体なんだろう?

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