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16/12/20

4年経ってトランプ氏に会うまでに成長した娘への想い

Image by Olia Gozha

4年前、私の反対を押し切ってNavy Academyに旅立っていった次女へのやるせない気持ちをこのストーリーズに書き綴った。私は4人の子供たちの子育てに終止符をつけ、今年一人で日本に住み始めた。

この4年間の次女の努力は親の私でさえ計り知れないほど大変なものだったと想像できる。彼女は4人の子供たちの中では一番体も小さく細かった。ハーフとはいっても典型的な日本人体系なので、多くのがっちりしたアメリカ人の中で、筋肉を鍛え体型を変えていくのは並大抵の努力ではなかったと思う。ましてや彼女はどのフィジカルコースも一番きついものでほかの生徒が選ばないようなものに挑戦するほどの怖いもの知らずなのである。あまりにも体力的にきつく、生理が何か月も止まってしまうのだそうだ。子供たちの健康が私の優先順位だったので、それを聞くのはとてもつらかった。

一年に何回か彼女と会っても現在受けている訓練の内容は聞かないことにしていた。聞くのが怖すぎる訓練ばかりで、聞いたら心配で眠れなくなるからである。どこで訓練を受けているのかも聞かないようになった。すごいところばかりに行くので、想像しただけで心配性の私は疲れるからである。彼女も兄弟には話しても私にはママは知らなくていいよというようになった。他のこどもたちも彼女が今どんな訓練を受けているかは私の前では話さないようにしていた。次女も私にはパーティーや旅行のことなど楽しい話しをしてくれたりしたので、それ以上はあまり聞かないことにして年月がすぎていった。私はただ、私の母がしてくれたようにお守りを会うたびに渡し続け、毎朝無事を祈り続けた。ただの一人の日本の母でしかなかった。

そんな彼女も4年生になり、最後の夏休みに一人で香港に旅行するというので、香港には何の興味もなかったが、ただ親子で二人で旅行できるのはしばらくないだろうとわかっていたので無理やりついていった。いろんなところに一人でどんどん行ってしまう彼女のスケジュールにはついていけず、私はホテルでへたっていた。やっぱり自分の娘ながら、この人すごいわと思わざるを得ない旅になった。飛行機が天候不順でひどく揺れたりすると私は飛び上がるほど怖い人なのだが、彼女は全然平気で本を読んでいた。しょうがないので彼女の筋肉だらけの腕にしがみついていたりしたのだが、これがなぜか落ち着かせるのだ。あの私の手を握り締めていた小さな手に、今は私がしがみついているのだということが不思議でしょうがなかった。車の運転の技術もとっくに私を大幅に超えて、どんな山道でも安心でのっていることができた。助手席にふんぞりかえりながら、この人は自分の進む道をどこまでも上り詰めていくのだろうなと誇りに思う気持ちと、そしてもう手がとどかないところに行くんだろうなという寂しさがいりまじった旅になった。成田でアメリカに戻る彼女を見送るとき、私を抱きしめ”ラブユー、マム!”と頭にキスされたとき、これって彼女たちが子供のころ、私がしていたことだと気が付いた。立場が逆転してしまったようだ。

アメリカ人の大男でもきついとねを上げるといわれる訓練に女性としては珍しくパスした彼女に、なんでそんな苦しい訓練をあなたのような小さな体で耐え抜くことができたのと、一度聞いたことがある。すると口数の少ない彼女はこう答えた。”ママね、すべてメンタルの強さだけなんだよ。それがすべてなんだよ。”と。

次女は先週、Navy Academyの中から優秀な生徒5人の代表に選ばれて、次期大統領に会うことができた。学校も彼女の努力を認めてくれていたのだ。

今回次女のことをまた書こうと思ったのは、アメリカで日本人の母親をもちながらも、自分の限界に挑戦し続けてアメリカの国防のために全力を尽くそうとしている一人の女性がいることを日本人の若い人たちにも知ってもらいたいと思った。周りのだれも彼女がここまで頑張れるとは思っていなかった。でも、彼女はもうすぐ卒業して任務に就く、母親として誇りに思うと同時に一人の女性の仕事に真剣に取り組もうとする姿勢に私はいつも感動させられる。



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