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16/12/11

世界47カ国女子バックパッカーができるまで(19)

Image by Olia Gozha

新しい職場、新しいホストファミリー

ロンドンから電車で二時間半。そこは南西のコッツウォルズ地方と呼ばれる場所。

お風呂の語源となった町であり、ローマ時代の大衆浴場の遺跡が残るバースという町に私はボランティア教師として赴任した。


バースは、白い石を積み上げて作ったテラスハウスが並ぶ、とっても美しい町だ。



人々は少しでも太陽が出ると肌寒い中でもタンクトップになり、日光浴を楽しむ。街中とはいえ、パブの中には定年退職したであろうご老人が昼間っからエールビールを飲んでいる。

公園には鳩がたくさんいて、餌をやる地元民のほのぼのとした風景も広がる。

私が赴任したのは、バースの街中に位置する全校生徒1000人を超える巨大なセカンダリー女子校、Haysfield schoolだった。

昼過ぎにバースのセントラル駅に着くと、そこに迎えに来た学校のコンタクトパーソンに出会った。

ケイシー「はじめまして!ケイシーと申します。」

Roi「やあ、僕はロイ。宜しく。」


ケイシーのお世話役、ロイは50代も後半の白髪交じりでのっぽな男性だった。

彼は美術の先生らしく、しきりとかけている眼鏡を押し上げる癖があった。左手の中指が第二関節からなく、美術の授業の中で誤って切り落としてしまったのだという。


秋風が吹き、枯れ葉がハラハラと道を舞う中、ロイの運転する埃だらけの藍色のセダンがhayesfield schoolの門をくぐって敷地に入った。


Roi「ここが、今日から君が通う学校だよ」


ケイシーは車から降りるとひとしきりの感動を込めて、その建物の外観を見上げた。


町と同じ白亜の石を使って作り上げられた建物に、こじゃれた窓がいくつもついていた。日本にあれば、学校というよりはむしろ美術館といった方がその雰囲気にふさわしいだろう。

遠くに見える校庭では、ジャージ姿の女の子たちがバスケットコートでボールを奪い合っているわー、とかきゃーとかいう声が聞こえていた。

高い天井に大きな窓から陽の光が差しこむ廊下をロイの後について歩くと、校長室に通された。


Erika「初めまして、私はエリカ。ここの校長よ。」


ブロンドの髪をボーイッシュなショートカット
にして、大きな目にアイライナーをきゅっと引いた40代後半に見える小柄な女性が現れて、ケイシーに握手を求めてきた。


ケイシー「はじめまして!ここに来るのをとても楽しみにしていました。」

校長室の中には、10代くらいで栗色の髪の毛をくしゃくしゃにして、好奇心旺盛な目をした可愛らしい女の子もいた。

Megan「こんにちは!」

Erika「こっちはあなたのホストファミリーで、メガンよ。今日はこれから、彼女と一緒にお家に帰ってちょうだいね。」

フレンドリーな校長に、可愛らしいメガンを目の前にしてケイシーは嬉しくなって頷いた。

今度こそ、という気持ちがあった。



その時は日本人がひとりもいない環境でも、なんとかこれからの半年をやっていけそうな気がしていた。気を抜くと寂しさのかけらが溢れてきてしまいそうになる中で、どこか客観的に冷静に自分を眺めている自分がいた。



『いまの自分には、ここにいることが必要なのだ』と、その自分は言っていた。


その先に何が起こるかも、知らないままに。










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