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16/11/28

パン屋ボーイ ~三角巾にエプロンつけて男子がパンを売ていますがなにか~

Image by Olia Gozha









「志望動機を聞かせてもらえますか?」




「パンが...好きだからです。」






この一言が全ての始まりだった。パン屋さんでのアルバイトを始めて気づけば半年が経つ。




ちなみに言っておくが、僕の仕事はサービスやレジなど、いわゆる売る方である。パンを製造する方ではない。




日々、女の子に囲まれて奥様方にパンを売っている。


女の子に囲まれて...






そう、この職場には男がいないのだ。







厳密には、製造に一人、サービスに一人男子がいるので計3人だが、


わが店舗では約20人が働いているので、




3/20=15%




たったの一割しか男子がいないのだ。


しかも、他の店舗では1か所でしかサービスで男子が働いていない。しかも一人らしい。




はっきり言って天然記念物です






ここからは、そんなパン屋を通じて考えたことをつづるとしよう









初日出勤の恐怖





今日は初めての出勤日、ちなみに人生初バイト、超緊張。


実は面接前に一度行ったきりお店には来たことがなかったので、行っておけばよかったとかなり後悔した。




僕の中ではパン屋さんはのんびりと働けるイメージがあったが、実際はそんなことはない。


混雑する時間帯には長蛇の列ができ、たった一つのレジで対処しなければいけないのでなかなか大変である。


しかも、なぜか事前研修みたいなものはなかった、いきなり着のみ着のままジャングルに放り込まれた気分である。




さすがに、その日はレジの横でパンを袋詰めする仕事に終始した。


あれほどただパンを袋に詰めることはもうないと思いたい。




初日ということもあり、周りのスタッフがたくさん話しかけてくれた。


優しい人たちだ、と思っていたが...




「吉田くんは○○大学なんですよね?」




「高校の時バレー部のキャプテンだったって本当ですか?」




「大阪出身なのに全然方言でないんだね」







え、え、えぇぇ……………………。





初対面の、全く知らない人たちから自分の個人情報をつらつらと言われる恐怖。


なんでそんなに知ってるんですか、とも聞けない。


いやぁ本当に怖かった。四面楚歌とはまさにこのことだ。




女子ばかりの職場に男子が入るというのはやはり期待が高まり、情報が広まったと後から聞いた。かなりみんな楽しみにしてくれたらしい。




期待を裏切ってすみません。


イケメンじゃなくてごめんなさい、


関西人なのに面白くなくてすみません、と本当に言いたい。




ちなみに、初日に会った人が山口さん、山本さん、山田さん、山影さん。


ヤバい山だらけだ、と思ったのは今更言えない。









 女子中心の世界





仕事にも少しずつ慣れ、徐々に社畜と化してきた。


5連勤をしたことや、直近12日中10日働くという偉業を成し遂げることもあった。


とうとう、同期の女の子に


「吉田君いつもいるよね」


と言われるまでになった。


その時、まんざらでもなくにやけてしまった自分をぶん殴ってやりたい。




大学には女子が少ないし、部活にもマネージャーしか女子がいない僕にとって、パン屋さんは変な空間であった。


いつ行っても女の子ばかりである。




ちなみに言っておくが、女子がいっぱいいるからパン屋さんで働こうと思ったわけではない←ここ重要

僕の大学では塾講師や家庭教師のアルバイトをする人が多い。

実際僕もこの前までは受験生として頑張って勉強していたわけで、その経験を活かすのも一つだとは思った。


でも、なんか面白くない、いつまで自分は塾や受験にとらわれるんだ。

そんな思いが自分の中にはあった。まだ19年しか生きていないからこそ、もっといろんな世界を知りたい。

その上で、ちょっとおしゃれなところで働きたい。笑


気づけばパン屋に電話していたのだ。




話は戻るが、実際に面接にいって担当の人から


「職場女の子ばっかりですけど大丈夫?うつにならない?」


と注意を受けるまで全く気付かなかった。




働いてみると、特に最初の方は距離感がつかめなかった。


(なんかみんな僕以外の人とは楽しく喋ってるんじゃね?)


そんな被害妄想をすることもあったが、徐々に社畜と化し、喋る機会が増えるにつれ仲良くなっていけた気がする。

周りのスタッフもみんな優しく、気さくに話しかけてくれたのでとても助かった。




何と言ったらいいだろうか、きっと高校の部活での男子のチームの女子マネージャーってこんな立場なんだろうな、と思うようになった。


実際の社会の中でも、特にキャリアなどでは女性が少数派となっていることが少なくない。

特に日本はジェンダー・ギャップ指数(男女の平等さをはかるもの)で世界111位(2016年)など、依然として男女の間に隔たりがあることは間違いない。


今回、自分が少数派の立場に立ったことで、もっと周りの立場の弱い人に目を向けられるようになり、成長したと思う。





ビニール手袋がSサイズだと僕だけ手に入らないのだ。つらい。




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