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16/10/3

介護を現実のものとして考えていく 【そのニ・ウィルソン病?】

Image by Olia Gozha

手足の震えや緩慢な動作、転びやすくなるというのが主なパーキンソン病の症状らしい。


義父の症状はまさにこれに当てはまるものだった。


それまで診療を受けていた病院でもパーキンソンに対して必要な神経伝達を活性化させるレボドパ、そのレボドパの効力を高めるためのカルビドパが配合されたメネシットとという薬を処方されていた。


当然義母も我々夫妻も先生の見立てを疑うことはない。


認知、パーキンソン、そして不随意運動。これらの症状が悪化したための入院したのだと思っていた。


ただ、それ以外にも甲状腺機能の低下であったり、肝硬変の症状があるという状況も抱えてはいたのだが、前者に比べるとそこまで大きな影響は及ぼしていないだろう。


そんな風に短絡的に考えていたのもまた事実だ。


入院してからというもの義父はトイレに行くことはできなくなっていた。


リハビリはしているものの軽い屈伸や、反射神経の確認を行う程度のもので精一杯だった。


しかしプライドがあるのだろう。


用を足したいと思っていても、なかなか自分からナースコールボタンを押そうとはしていなかった。


このまま徐々に衰えていくのを待つしかないのか…


入院してから約1週間経過した頃だっただろうか。担当医師から父の症状について話をされた。


不随意運動

認知症

肝硬変


この3つが重なった時に考えられるものとして「ウィルソン病」というものが存在し、その可能性があるかもしれない。そういう内容だった。


ウィルソン病などという病名ははじめて耳にしたのだが、どうも30000~35000人に一人の確率というかなりの難病らしい。


30000分の1


飛行機事故で死亡する確率に等しい数字らしい…と、事故や死亡というワードはあまりに縁起が悪いので他の例えを探してみよう。


超満員に膨れ上がった横浜スタジアムの観客の中でたった一人だけ。これは約30000分の1だ。


どんなデータベースで導き出されたのか定かではないが、オスの三毛猫が産まれる確率もこれに等しいらしい。


それぐらい珍しいということはこの数字で私自身しっかりと理解できた。


ウィルソン病。簡単に言うと細胞内に銅が蓄積し臓器が異常をきたすという病らしい。


銅が栄養素の一つであることは理解していても、銅が実際どんな働きをしているのかいうことすらよくわかっていない上に、そのような話が出たので聞いているこちら側は正直口あんぐりといったところだ。


それでも、担当医師は丁寧に説明してくれた。


ただしウィルソン病というのは幼少期に発生するケースが多く、高い年齢でもせいぜい40~50歳ぐらいで、既に後期高齢者になっている父の年齢で発症するようなケースは常識的にはあり得ないという。


言い回しとしてよくないことを前置きした上で、担当医師は次のような話を切り出した。



担当医師「もし仮にお父さんがウィルソン病ならば、これは研究レベルというか学会で取り上げられてもおかしくないぐらい珍しいことなんです。」



こうしてウィルソン病の可能性を含め、徹底的に検査を行うことになった義父。


この時の正直な感想は病状がどうとかそういうことよりも、


自分「これでこの病院には暫くいることができるかもしれない。」



なぜなら入院先は救急指定の病院。治療や加療が必要な患者はともかくとして、緊急の入院というだけではそう長居できないことを知っていたからだ。


仮に退院したとしても、どのようなライフプランを立てればよいのかというのは全くの白紙状態。


まして現状は介護1というレベル。しかし義父はほぼ自立できない容態。


少しでも時間を稼げるという意味ではこれはついているのかもしれない。


決してバチは当たらないだろう…


検査結果が出たのはそれから一週間後のことだ。





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