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16/9/28

世界旅後手持ち300ドル、家族も友人・恋人、時間もお金もすべて失い失意のまま帰国したバックパッカーが自分の夢を叶えてきた記録

Image by Olia Gozha

あの頃、インド洋を眺めていた

呆然として、夕方のインド洋を眺めていた。


2014年9月も終わりに差し掛かった頃。スリランカの首都、コロンボの小さな海岸にある小さな岩の上に、私は腰かけて海を眺めていた。

海の波間はキラキラとさざめき、セピア色の夕暮れが差し迫っていた。

目の前を、仲の良さそうな小学生くらいの現地の兄弟がじゃれあいながら走ってゆく。さびれた海岸には人影がぽつり、ぽつりとあるだけで波打ち際には時期はずれのマリンブルーのビキニを着たふくよかな西洋の壮年女性と、男性カップルが手を取り合って歩いていた。

私は全身が、ただの筒になってしまったかのような虚脱感を覚えていた。岩の上に座っている自分が、自分自身でないような気さえもしていた。約18時間。中東のヨルダン、アンマンから出発した飛行機はドバイでの乗り継ぎを挟み、スリランカのコロンボに到着したときには既に出発から18時間もの時間が経過していた。私の身体は疲労感でいっぱいだった。

ケイシー「はあ・・・」

どこからともなく、ため息がでた。そのとき、一つの人影が近づいてくる気配を感じた。

現地人「neckless?」

顔を上げてそちらを見ると、痩せて肌の浅黒い現地人が、大きくくぼんだ目を光らせながらこちらを見下ろしていた。


彼は細い腕に長いビーズを繋げたネックレスを幾本も下げており、それを売り歩いているようだった。

ケイシー「ごめん、それどころじゃないの・・・」

旅先では、現地人と絡むのが大好きだった自分が嘘のように、その時にはそんな気持ちになれなかった。

彼は強引にそのネックレスを売りつけるようなこともせずに、少し不思議そうに私の顔をのぞき込んでから裸足の足で砂浜を踏みしめ去っていった。


私はまた、自分の空想の世界に耽っていった。

半年前、世界一周を終えて移住を決めたヨルダン。そこで起こったいろいろな思い出が頭の中をかすめてゆく。

大好きな彼と、その家族。たくさんのかけがえのない友人。職場の同僚の顔、かかわったすべての人々の笑顔が思い出されては消えてゆく。


ドバイ空港のトランジット待合室で、もう涙は枯れ果てるほど絞り切った。これ以上、どこにも水分なんて残っていないと思うのにまだ、じんわりと目の奥が熱くなってくるのを感じる。


ヨルダンに移住を決めてからの数カ月は、本当に楽しかった。心から想いやってくれる友人や、彼もいたし家族もできた。仕事も見つかり、たまに遊びにくる日本人の相手も楽しかったし、職場の同僚も本当によくしてくれた。

・・・なのに、なのになのになのに今は、私はそんな人間関係、時間もお金も全てを失って日本に帰るのだ。

悔しくて、切なくて涙がまたぽろりと目からこぼれ出た。

どうしてこんなことになってしまったのだろう。


神様がいらっしゃるなら、ああどうか教えてください。私はどこから、間違ったのでしょうか?

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