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16/9/1

第15話:瞳から愛が溢れ出す人たち

Image by Olia Gozha

 インドで出会った澄んだ瞳の数々

気がつけば、インドに5年も住んでしまった。最初はそんなに長くいるつもりはなかったのに。

なぜかと理由を聞かれるならば、瞳から愛が溢れ出る人たちにたくさん会ってしまったからなのかもしれない。


インドで私が一番夢中になったのは、聖者に会って話すことだった。

それは、愛溢れる瞳を見れるからだったし、その愛のバイブレーションの中でひと時を過ごせるのが何にも代えがたい喜びだったからだった。


でも、そんな瞳をしていたのは、聖者だけじゃなかった。


無邪気で、くるっくるな大きな目をした子供たちもそうだったし、

キラキラ光るまぶしい笑顔をした肉体労働者の青年たちも、

小さなテーブルに数個だけのフルーツを載せた貧しそうな果物屋の店主も、

毎日、日向ぼっこしてるだけの90歳のおばあちゃんもそうだった。


日々出会う、そんな人たちが向ける瞳から、いつも愛が溢れ出していたのだ。


私は、そんな彼らに憧れていたのかもしれない。

どうすれば、あんな風に、澄んだ瞳から愛が溢れ出してくるようになるのか知りたいという動機が、私をインドに5年間もつなぎとめていたのだろう。


日本ではあまり見ることのできない、瞳だったのだ。


南インドで、毎週会いに行っている大好きな聖者がいた。

その聖者は、とても自然体で、そして可愛らしかった。

悟りを得ると、こんなにも赤ちゃんのような可愛らしさが出るものなのかということを知った。

その聖者は、私の家の近所に住んでいた。


ある日、近所でばったりその聖者に会った。

そして、いつも思っていたことを勇気をもって話してみた。


「実は、私、あなたの瞳から愛がどんどん溢れ出しているのを見るのが、怖いんです」



その聖者にいつも会いに行きたいのは、彼の瞳を見たかったからだし、愛のバイブレーションが心地よかったからだった。でも、同時に、直面するのがとても怖かったのだ。


「私は、あなたの目を直視できないんです。なぜだか怖いという気持ちが出てくるんです」


「今度、○日に、うちにまた来なさい」そう優しく言って、聖者は去っていった。


約束の日に行ってみると、聖者は、私を目の前に座らせ、目を直視した。


最初は怖くて、逃げ出したくなった。でも我慢して直視し続けた。

すると、しばらくして恐怖心は去っていった。


聖者がとても身近に感じられた。

次に近所で会った時は、憧れの聖者が、普通のおじさんに見えるほどだった!




日本にいたときは、こんな風に、「愛がむき出し」になっている人々に出会ったことがなかった。


誰もが、愛が欲しい、欲しいと、意識的であれ、無意識的であれ思っているだろう。


でも、実際に「むきだしになった愛」に直面すると、恐ろしくて目をそらしてしまうものなのだ。


5年間インドに住んだ結果、私は、この瞳の理由を知ることができたのだろうか。


インド哲学を学んで、瞑想も修行してみて、その理由は分かったと言えるかもしれない。


つづく・・・





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