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16/8/3

日本一、京都大学を多く受験した人

Image by Olia Gozha

日本一、京都大学を多く受験した人

 

   ブログを書いていると、ときどき自分で気づかないことを指摘して下さる方がみえる。storys に投稿を始めたのは、「A子ちゃんのこと」を書いたら、

「良い話なのでこのサイトに投稿されたらどうですか」

 というメールを受け取ったことがきっかけでした。

  先日は、

「高木さんは、日本一多く京都大学を受験した人ではないですか?」

  というメールを受け取った。そうかどうか知らないが、そうかもしれない。

  これは、別に威張れる記録ではなくて、どちらかというと恥ずかしい記録かもしれない。

「そんなに奥さんが許せませんでしたか?」

  と、いさめてくれた方もみえた。私は、大学受験の5日前に全身痙攣で入院させられてしまった。診察台の上で、看護婦さんに手足を押さえつけられた経験がトラウマになった。そこまで勉強したのに、捨てられるわけがない。

  当時、私は塾の建物と土地を買うために1億円ほど銀行から融資を受けていた。返済に失敗したら、連帯保証人の両親まで家から追い出される。子どもが三人いて、経営に失敗したら食わせていけないから、選択の余地はなかった。

  正面には、塾のあることないことを近所に言いふらすライバル塾がいて、背後からは、奥さんが

「あなたは、勉強のできない子を冷遇している」

 と、非難の嵐。私を憎むあまり娘たちに私の悪口をふきこむものだから、娘たちまで私から距離を置き始めていた。頑張って働いても、四面楚歌の家庭環境になってしまっていた。

 キリスト教会の人たちは、ノーテンンキに

「奥さんの言うように、落ちこぼれた生徒の塾に変えたら?」

 と、言った。それは、倒産しろと言うに等しい言葉だけれど、自分が何を言っているのか分かっていないのだろう。理解者も、味方もいなかった。

 いや、いた。それは、四日市高校のトップクラスの子や、暁高校の特待生レベルの子たちだった。

「だからといって、京都大学を7回も受ける人はいませんよ」

 と言った方もみえた。

 でも、そうだろうか。

   私は、確かに奥さんの言うことは見限って

「娘たちを養えたら、何でもする」

  と思い始めていた。何でもやる。だから、センター試験を10回受けるのも当たり前のことだった。それが、塾生のためになるのなら、何のためらいもなかった。

    昼間は名古屋の専門学校で非常勤講師。帰宅後は、自分の塾で指導。そんな生活で精一杯で、よぶんなことを考える暇がなかった。

  日本社会は、特に田舎の人たちは、変化を嫌う。

  私が、英語講師から数学講師に転身しようとしたら、職域をおかすなという圧力がかった。自分の塾で、コンピューターを用いて順位を出して学力別クラスを作ったら

「オレの息子をあほクラスに入れおって!」

 と、母の方に苦情がいった。

 高校のランキング表を張り出したら、いなべ総合の卒業生らしい母親から電話がかかってきて

「いなべ総合って、そんなに偏差値低いんですか!」

 と、言われた。

 自分で京大を受けて、ネットで成績開示したら

「おまえのようなジジイが合格したら、若者が一人落ちるだろうがぁ」

 と、ブラックメールがきた。

 生きるとは、こういうことだから気にもしなかったが、めんどうくさかった。

 ちょうど、バブルが弾けて、少子化が始まり、大規模塾が生き残るためにこんな田舎にまで進出してきた。その時に、長女から順番に大学に進学する時期と重なり、家計が苦しくなっていった。

 生き残りには、差別化がマストだった。

 高校生むけの塾に転身が軌道に乗るのが早いか、資金繰りに行き詰って倒産するのが早いか、ギリギリの状態だった。家財道具を売り払って、最終的にはカード審査も通らない状態に陥って、夜逃げを覚悟した日もあった。

 ところが、投稿しておいた Youtube やブログ経由でホームページから申し込みが次々と舞い込み、高校クラスは満席となり、通信生も徐々に増え、京大医学部、阪大医学部、名大医学部に合格者が出た頃に、完全に軌道にのった。

 面白半分で京都大学を受けたのではなかった。英検1級を受けたのではなかった。窮地に陥りそうだから、いつも必死だったのだ。

 ある日、長女が大学受験前に

「これを使って」

 と、バイトで稼いだお金を持ってきた。特に話したわけではないが、やはり一緒に暮らしていると、父親の状況が分かっていたのかもしれない。

   アメリカかぶれと批判されることもあるが、私は塾生の悲鳴を聞くと黙ってられない。強制的に「班」を組ませて勉強させたり、自分の校内順位を教えてもらえないというのは、人権侵害ではないのだろうか。

 学校は、難関校に合格したい少数派を嫌う。格差の象徴と受け取るらしい。こんなことをしているうちに、アメリカの中学生も高校生も自由に勉強をしている。東大や京大でさえ、世界のトップになれないのは、この自由を束縛して規制と強制だらけの学校のせいだと思う。





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