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16/7/29

母がアルコール依存症だと気づいてから10日間地獄を見た話。7日目。

Image by Olia Gozha

闇金事務所


超回復。

母は顔色が随分と良くなった。

顔つきも柔らかい。


おかゆを昨日から食べ始め、食事を経口で摂れている。


何よりも幻覚がないようだ。

落ち着いていて、いつもの勝ち気な母に戻り始めていた。


ただ、借金の返済が頭から離れないらしく、落ち着きがないのは変わらなかった。



「返済に行く。お父さん、車で連れて行って。」



行く、と言ってきかなかった。

とにかく返済期限が迫っているのだ、と。


昨日1日寝ただけなのに、またお金のこと?

まだそっとしてあげたい。

ゆっくり寝て欲しい、と思った。


心配だったので私も付いて行った。


銀行かな?とのんきに思っていた私。

着いた場所は闇金事務所だった。



怯えて震える母


いつもの勝ち気な感じで入店した母。

長机が2台縦に並べて置いてあり、パイプ椅子が4つ。


奥のパイプ椅子にはおばちゃんが一人座っていた。


「今日はこれでお願いします。」


と何枚かの一万円札を差し出した。

すると奥からスーツ姿の男性が出てきて、何も言わずに携帯電話を母に渡した。

私が横にいるからか、直接は何も言わない。


不気味だった。


携帯電話を手にした母は、その直後震えだした。

眼を見開き、だんだん目線は足元の方へ。
体が縮こまり、小さくなっていく。


幻覚が見えていた時と全く同じ表情になっていく。


震える手で携帯電話を私にゆっくり渡す。


一体何を言われているのだろう。

もしかして怒鳴られているのかな。


私は携帯電話を受け取り、”もしもし” と言った。


受話器の向こうからは何も聞こえない。

きっと母ではないことを察知したのだと思う。


私は何度も、”もしもし” と言ったが、そのうち電話は切れた。


震える母を抱き寄せた。


わたし「もう、今日はこれでいいでしょう?見て分かりますよね?」


と吐き捨てるように言い、事務所を出た。


奥に座っているおばちゃんが、

ハンコがいくつか押してある、紙で出来たポイントカードみたいなものを見つめて

ずっと泣いていた。


どうも地獄を見ているのは私たちだけではないみたいだ。


闇金の怖さを知った。


それから母は、闇金の幻覚にずっと怯えていたんだと、この時気づいた。


コインロッカーの荷物


母がだいぶ落ち着いてきたので、少しづつこの数日間のことを聞き出すことにした。


夢を見ていたような感覚らしい。


あまり覚えていない、と言う。


「そうそう、あんたの家から帰ってくる途中にホームレスの人と1日一緒に酒飲んだわ。」


場所はなんとさっき行った闇金事務所のある地区で、実家から近かった。

そこにいたの?

あんだけ心配させといてさ…ホームレスの人と酒?

何だそれ。



「そういえば、あの荷物はあそこに預けたまんまじゃないかなあ…」

わたし「あそこて、どこ?」

「駅のコインロッカー…」

わたし「えっ⁉︎」

「ほら、だって鍵がここに」

わたし「はあ⁉︎(呆れる)すげー日数経ってるし‼︎」


問い合わせると、

確かに母が置いてきたという駅のコインロッカーが数日閉まったままだということが判明。


預けたのは、私の家に来た時に持っていたあのどでかい紙袋。


中身着替えやんか…(ため息)


私が明日、取りに行くことになった。


ロッカー代いくらかかるんやろ…

お金ばっかりかかる…もう何なん。


怒りを通り越し、なんか無の境地だった。

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