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16/7/13

詐欺じゃないけどセコイ仕事の話

Image by Olia Gozha

20年ほど前、カニを数えていたことがある。

バイトとして、カニを売っている卸売業者で働いていた。

どういう仕事かというと、工場の仕事である。工場と言っても大きくない。バイトの僕と、社員の方お一人しかいない。

冷蔵庫の中にカニ(毛蟹)が入った箱がある。

それまで知らなかったのだけど、毛蟹はグラムごとに一箱に入っている数が違う。つまり箱は1種類、2尾入っているとすれば1尾当たり1キロの蟹が入っている。逆にいうと1尾250グラムの蟹なら8尾入っている。一箱に4尾入っているとすれば1尾あたり500グラムの蟹、ということになる。

※この当たり、細かい数値はちょっとうろ覚えです。でもまぁつまりそういうことです。

つまり、箱のサイズというのは1種類しかなく、蟹のグラムで入れる数を変えている、ということ。

もちろん箱の外には「何尾入り」と書いてあるからそれ自体は詐欺じゃない。

では、何が詐欺っぽかったのか。

まず業者から蟹の箱を仕入れてくる。それが自社の工場の冷凍庫に入る。

僕らの仕事はその箱を一度開け(別に封がされているわけではないのでカポッと蓋を取るだけ)、それぞれのカニを秤で測る。

というのも、カニも当然、生き物だから、すべてがぴっちり同じ重さなわけじゃない。8尾入りであれば皆250グラムなわけだけど、中には280グラムのものもあったりする。8尾入りの中に200グラムが入っていれば「小さいじゃないか」となるけど280グラムのが入ってたら別に誰も文句言わない。

つまりちょっと大きいのをはじく作業。

弾いた大きいのは当然、大きいものとして売る。

細かい数値は忘れたけど、感覚として、10箱測ると結局11箱になる。つまり、大きいカニは弾いて、適正(ピッタリのグラム数のカニを追加、そのカニだってもうちょっと小さいカニの箱に入っていた大きいもの)なものを追加する。

別にグラム数足りないカニを追加しているわけじゃないので詐欺では無いけれど、つまりは「セコイ」話だよね。

それを小売店に納品市に行ったりすると(僕は単に付いていってただけだけど)、「◯◯屋さん(僕のバイト先の名前ね)に頼むと10箱が11箱になっからなー」とか冗談とも嫌味とも付かないことを言われた覚えがある。

結局のところ、そのバイトは1ヶ月くらいで辞めました。ゴム手袋をして作業しているんだけど、めちゃくちゃ手がカニくさくなるんです。

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