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16/6/24

「海外」を初めて見た外国人に東京を案内したら、全てが想像を超えていた話

Image by Olia Gozha


皆さんは、訪日外国人を見て何を感じますか?


なんか怖い?

声が大きい?

何考えているかわからない?

大量の荷物を持って、自撮り棒で写真を撮っている?




逆に、外国人は日本に来て何を感じますか?

今日は、日本旅行に来た従兄と東京観光をしたとんでもない体験を通して、日本に来た外国人が何を考えているのかの1例をお伝えしたい。


・両親は台湾出身だが、日本生まれ日本育ちの26歳。東京在住。

・中国語で日常会話はできる。

・関東の地方自治体職員



従兄(お兄ちゃん)

・生まれて38年、台湾を出たことがない。台北在住。

・中国語しか話せない。

・夜間の専門学校を卒業後、父の経営する工場に勤務

・仕事以外ではほとんど外出しない



お兄ちゃんは、なぜ日本に来たの?


いわゆる「オタク」で、旅行に一切行かなかった従兄を惹きつけた日本の魅力とは?



「日本も漢字を使っている。」

 漢字の発音や使い方は違っても、漢字そのものが示す意味はほぼ共通だ。

 日本も漢字を使用することは、中国語圏の人にとって大きな魅力である。



「テレビでしか見たことがない桜の花が見たい」

 お兄ちゃんは、日本のテレビ番組を普段からよく見ている。
 一緒に見ると、半年前の古い番組だったりするが、台湾のテレビよりも面白いそうだ。


「ラーメンや蕎麦等の日本食は、日本で食べたら台湾で食べるよりもおいしいか興味がある。」

 日本語が書いてあったり、日本式とPRしていたりする商品や看板は、付加価値が付くそうだ。
 実際には間違った日本語表記や、明らかに日本と関係ないものも多いが。



「親戚がいるから」

 知り合いがいる場所には、行ってみたくなるものだ。
 日本人の1人1人が、海外の人を引き付ける「魅力」になり得るだろう。



旅行のスケジュール

 何度か、旅慣れた外国の友達に東京を案内したことがあるが、彼らは基本的に事前の計画が無く、臨機応変な旅を楽しんでいた。

 しかし、初めて海外に出るお兄ちゃんは違った。


東京に来る2か月前、

「東京のどこ行きたい?なに食べたい?」

お兄ちゃん「行程表なら作ったよ。」

「???」

お兄ちゃん「道に迷った時、行程表の漢字を指させば、日本語も英語もできなくても、道が聞けるでしょ。折角日本に行くのに、効率よく回らなきゃ、時間も勿体ないよ!」

 ≪行程表≫は、電車の乗換等も調べ上げた詳細なもので、私をさらに驚かせた。オンライン上で助言や意見を聞いて改良を重ねたらしい。

 日本が好きで何度も観光に来ている台湾の人が多く、日本の観光や買い物についてオンライン上で活発な意見交換が行われているそうだ。




旅行記(2016.3.25~3.29)



1日目(旅行者:お兄ちゃん)

17:00成田空港到着
 ↓
空港のカウンターで
「スカイライナー乗車券*」
「地下鉄3日間乗り放題乗車券」
を買う
 ↓
池袋の一蘭でラーメンを食べる

*スカイライナー(空港と都心を結ぶ特急列車の名前)



(言葉が通じない為)乗車券の写真を空港のカウンターの人に見せ、購入する予定が、カウンターに人がいない。    

 Q「お兄ちゃん、どうする?」 
 A「インターネットで相談した。」


お兄ちゃん「カウンターが閉まってる。券売機の使い方もわからない。どうしよう。」

ネット住人1「別のカウンターがB1階にあるはず!頑張って!」

お兄ちゃん「B1階のカウンターでスカイライナー(鉄道)の乗車券は買えた。でも、地下鉄乗り放題の乗車券は売ってなかった。どうしよう。」

ネット住人2「池袋のビッグカメラ(家電量販店)で売っているよ。」

お兄ちゃん「みんな、本当にありがとう!」


 1時間の格闘の末、お兄ちゃんは電車のチケットを買うことができた。
 東京で困ったとき、台湾の人から迅速にアドバイスを得られるとは驚きだ。


 お兄ちゃんと私は池袋で合流し、お兄ちゃん念願の一蘭のラーメンを食べた。


 ラーメンは超人気店ならではの美味しさだった。

 お兄ちゃんはさぞかし感動しただろうと思いきや、その感想は意外なものだった。

空港で緊張しすぎてお腹を壊してしまった。ラーメンも、期待が大きかった分、意外と普通だった。」



2日目(旅行者:お兄ちゃん、私)

築地市場で玉子焼きを食べる
 ↓
東京タワーに登る
 ↓
月島でもんじゃ焼きを食べる
 ↓
浅草、隅田川沿いの桜を見る
 ↓
都庁展望台に登る
 ↓
蕎麦を食べる


 朝食は食べずに魚市場で有名な築地市場に向かった。週末の朝は地元の人や観光客でごった返していた。

 冷たい風に乗って新鮮な魚の匂いがした。

「築地市場で玉子焼きを食べるの?」

お兄ちゃん「刺身は食べられない。それ以外なら。」

「築地といったらやっぱり刺身でしょー」

お兄ちゃん「食べられないから仕方ないでしょ。あの有名な築地の雰囲気を味わって、卵焼きとか食べられればいい。」

 生食を苦手とする外国人は少なくない。

 私たちはその日、まぐろカツ、玉子焼き、わらびもち、シュウマイを食べた。


 普段は「寿司!刺身!」を探しながら築地市場を歩いているが、「刺身以外のものを食べる。」という別の視点で歩くと、刺身以外にも美味しいものが沢山並んでいた。

ここでも、お兄ちゃんの感想は私の予想を超えたものだった。



「このごちゃごちゃした感じが台湾にそっくりで、おもしろくない。早く次行こーーー」



 今年はソメイヨシノの開花が遅れ、東京タワーの周囲でも桜はあまり咲いていなかった。

 お兄ちゃんは桜の木があると枝の写真を撮影し、移動の間はタブレットをいじっていた。

 前を見ないから、歩く速度がとても遅い。私は正直、あまりいい気はしなかった。


「なんで下ばっかり見ているの?用事があるなら、カフェで座ろうか?」

お兄ちゃん「いや……すぐ終わる。いま友達に報告しているから。」

「報告?」

東京の桜について情報交換するLINEのグループに、リアルタイムで投稿しているそうだ。

お兄ちゃん「東京タワーの下はこんな感じ。まだあまり咲いてないね。」

メンバー1「じゃあ新宿御苑も期待できないかな。」

お兄ちゃん「明後日に見てみるよ。今から浅草の様子を見て来る。」

メンバー2「情報ありがとう。」

 メンバー約40人は全員が台湾在住で、面識はないそうだ。会話はとても盛り上がっていた。

 どうやら、日本の桜は世界の人を惹きつけ、結びつける力があるようだ。


 結局東京観光の間、お兄ちゃんは桜についてLIVE中継をしながら道を歩いた。

 私は桜の木があるかを探しながら道を歩いた。

 こんな歩き方最初はおもしろくなかった。

 しかし、普段と違った視点で歩くと、いつも視界に入っていても、実際には認識していないものが多いことに驚き楽しくなった。



3日目(旅行者:お兄ちゃん、私)

皇居の桜を見る
 ↓
お台場で温泉に入り、夜景を見る


 月曜の朝は道を急ぐ社会人や学生が多く、どこかせわしない。

 空はどんより曇っていた。

 静まり返った電車の中で、お兄ちゃんはそわそわしていたが、我慢できなくなった様子で、私の耳元でささやいた。

 車内の人が一斉にこっちを見る。

お兄ちゃん「これがかの有名な満員電車だね。」

「どう?」

お兄ちゃん「いらいらして、ちゃぶ台をひっくり返したくなるなぁ。」

お兄ちゃん「電車の中はこんなに人がいるのに静かだね。駅で電車のドアが閉まってから発車するまでの間、なんの物音も無いあの雰囲気に耐えられない。」

 日本を出ると、電車内での携帯電話の通話は禁止されていない場所がほとんどだ。

 私が海外に旅行に行った時も、電車の中では誰も寝ていない上、誰かしらが話をしていることが多かったように思う。


 私達にとっては当たり前の日常が、お兄ちゃんにとっては不思議だらけだ。



4日目(旅行者:お兄ちゃん、私)

明治神宮
 ↓
新宿御苑で桜を見ながら昼を食べる
 ↓
アメヤ横丁でお土産を買う




 私は有名な商店街「アメヤ横丁」にある靴屋の椅子に、1人で座っていた。試着もせずに座っているのは迷惑だと知りながら、立ち上がる元気がなかった。


 

 その45分前、私達は菓子屋に入った。お兄ちゃんの家族が指定した店で、店内は海外からの買い物客でごった返していた。彼らは顔が殺気立っていて、ものすごい勢いで商品を買い物かごに入れていく。

 この店は
免税手続きができること
ブログで紹介されていること
等を理由に人気があるようだ。

 もみくちゃにされ、お兄ちゃんとはぐれた私は、気付いた時にはその店から逃げ出して靴屋の椅子に座っていた。

 冷たい風が火照った体にあたるのが心地いい。

「買い物終わったらラインしてね」

お兄ちゃん「もうちょっと待って。それより、これがどこにあるか、店員さんに聞いて。」

  チーズいか燻製(実際の写真)        


私は立ち上がり、戦場に戻った。


 お兄ちゃんは、台湾の家族とLINEをしながら商品を探していた。
 大半が自分用ではなく、家族のために買うお遣いだからだ。

 ここにも文化の違いがあるようだ。

 私が日本人と旅行に行くと、買うものは自分用が大半で、家族の土産は挨拶程度の人が多いように感じる。


お兄ちゃんは全く買い物を楽しんでいないどころか、泣きそうだった。


お兄ちゃん「(買い物かごの中身の写真)他に買うものある?」

姉1「ぜんっぜん足りない。もっと買って。」

姉1の夫「そんなじゃ免税額に届かないでしょ!」

姉2「詰め込めーー!!」

お兄ちゃん「何を買っていいのかわからないよ(泣)」

姉1「私が前回日本で買ったものと、そっくり同じ物全部買って!」

姉2「同じ物を、私達の分もよろしく。」

「こっちも、同じのそっくりよろしく。」

 どうやらお兄ちゃんの姉2人は、

お土産を沢山よろしくねー」

と言いながら、正月にお年玉として両替済の日本円60,000円をお兄ちゃんに渡したそうだ

 

実際にお兄ちゃんが買ったものの写真(ほぼ自分用ではない)


 お兄ちゃんが、

こんなにも大きな期待を背負って日本に来ていたこと
日本のモノがこんなにも魅力的であること

に驚いた。



5日目(旅行者:お兄ちゃん)

荷物をコインロッカーに預け、上野公園の桜を見る
 ↓
成田空港へ


 職場の昼休みに、お兄ちゃんから電話が来た。携帯越しに緊迫した息遣いが聞こえて来る。

「私鉄上野駅から空港まで行きたいけれども、朝利用したJR上野駅構内のコインロッカーに荷物が入っている」

お兄ちゃん「もう一回、JRにお金払ってホームに入らなきゃだめ?」

「改札の係員に言えば大丈夫だよ。」

お兄ちゃん「話してくれる?改札の係員に電話代わるね。」

駅員「もしもし」

「改札内のコインロッカーに荷物を入れて、出せないらしいです。」

お兄ちゃん「改札に入れた!」


一安心していると、また電話が来た。

お兄ちゃん「改札の係員が違う人になっていて、外に出られない…。もう一回電話で話してくれる?」

 私鉄、地下鉄、JRそれぞれが違う改札で、料金が個別に発生することは、外国人にはなかなか理解できないようだ。



 そしてお兄ちゃんは無事に台湾に帰って行った。 

お兄ちゃん「次は紅葉が見たいです。親子丼、梅干しも食べてみたいな。」



まとめ

 外国人にとって日本が「外国」である。私達には想像し難いが、日本旅行が大冒険という人もいる。


 彼らは同じ時に同じ場所に立っていても、私達とは違った視点で「東京」を見ている。


 観光客が私達のマナーを守るのは当然必要な事だ。


 一方で私達日本人も多様性を認め、外国人がどんな気持ちで何を感じているのかを知り、温かく迎え入れる気持ちを持てればと願う


 意識的にいつもと視点を変えると、実際に見えるものまで違ってくる。


 困っている外国人を見たら手を差し伸べてほしい。


 クールな日本がもっとクールになることを切に願っている。





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