その夏、わたしは標高1400mの森の中に住んでいました。
標高が高いのもあって気温は涼しく、8月の真夏の盛りだというのにもっぱら長袖。
なんだかちょっと夏の暑さも感じておきたいよーということで
夏の終わり県内最大級の花火大会に行ったのです。
満開の花火 にぎやかな屋台 浴衣姿の女の子
会場につくと、そこは夏の匂いと空気と老若男女で満ち満ち
うっわ~暑い!この湿度!!夏だ、夏だ!!
久しぶりの喧騒に子どもみたいにテンションもあがりながら、人ごみの中を歩いていると
突然目の前にインド人のおじさんが現れ、いきなりものすごい剣幕でまくしたててきました。
インド人のおじさん「日本人は、いっつも チュウが好きだ!ナンデモ チュウだ!チュウ バッカリだ!! そうやってチュウバッカリで、スグしない!ナンデナンダ!!! why?!!!」
わたし「(・・・ちょっと、いきなり何の話?笑)」
「チュウ バッカリで、すぐ今じぶんでキメルことしないね!ナゼね?考えチュウ!移動チュウ!仕事チュウ!電話チュウ!チュウチュウチュウ!!!アナタ オカマデナンヤイタコトアリマスカ!」
…!?
アナタ オカマデナンヤイタコトアリマスカ?!
この突然のチュウチュウリフレイン。下ネタの話?…喧騒と相まってわたしの耳には
「あなたオカマで悩んだことありますか?!」そう聞こえました
わたし「オカマで?! ないです(オカマ悩むってどういう…)」
ナンない?!NO-------!!!!!
「ナンない?!NO-------!!!!!オカマでヤクと全っ然チガウね!!スペシャルナンデキル!じぶんでツクルともっと イイね! アナタ ナンデモデキル!!!!今アナタ 知る時がキタ!!!!」
そういうとインド人のおじさんは白い粉を取り出して、なにやらこねだしました。
そしてそれを布でできた巨大てるてる坊主みたいなものにのせると
「このオカマの中に手をイレテヘキメンに叩きツケルんだ!さあ!!!ヤッテ!!!」
オカマの中に…?? なんとそこには、窯があったのです。
オカマ=お窯(!)ナ ン だ こ の 展 開
窯は入口が狭く、中はクラクラに熱せられていて叩きつけた反動で壁に手があたると火傷しそうだった
インド人のおじさんはそっとわたしに生地を手渡し、無言でうなずきました
まわりの喧騒はそのままなのに、なぜかここだけ別の時間が流れているみたい
手にはたしかにナンの生地。たこ焼きではない。
深呼吸し、生地がのった手を窯に挿し入れました。打ち付ける直前もう一度
「えっと、、これでいいん…かな?」
そうインド人のおじさんの顔を見ると、急に真顔で
「ナゼ ソコで考えるね〜!!!日本人スグ悩むね!ひとりだとナゼ不安なるね!?じぶん信じるね!ヤルと決めて手をイレたら、迷ったりチュウチョしたらダメね!イサギヨさ大事ね!」
…んん~!ええい!
手首のスナップをきかせ壁に打ちつけると、生地は張り付いたままみるみる間に膨れあがりました
わぉ
「アナタ手のひら、チョット見せて」
…ん、はい。
「イイ手…!!!コレはナン上手に焼ける手!!!」
…そう?ありがとう♪
すると窯の中からひょいっとナンを取り出し、何の躊躇もなくわたしの手のひらの上にのせたのです
…ぁあっ!あっっつーーーーーっっい!!!
なんッッ! ?!(涙)
「アナタこれツクッタ!スペシャルなナンね!!」
「ナンデモ自分でヤッテみることじぶん味わうこと、それ楽しいねー!!日本人、ハートもっと出してほしいね!!ヤルチャンス来たらチュウチョしてる場合じゃないね!!したいことエンリョする?今チャンス来たら今するね!!! OK? 楽しーーーーーーーーーく♪」
手の熱さにドギマギしながらうなずくと
ナンといっしょに食べなさいとキーマカレーを器にそそぎ入れここでお食べと椅子を出してくれました
花火を見に来たのに思いがけずナンを焼くことになった、夏の日。
*
森に帰ったわたしは、やってみようと思いつつ、なかなかやらずにいたことを
手はじめにはじめることにしました。
酵母をおこして自家製酵母パンをつくったり(グレープフルーツでつくった酵母にレーズン酵母、りんご酵母、野菜&玄米酵母などなど)、夜な夜なパンや料理の実験をするのにハマっていきました。
その酵母で焼いたナン。
インド人のナンとくらべたらずいぶん不格好だけれど、
キャンプのお鍋で焼いたナンは美味しかった。
翌日はフォカッチャを焼いてみました。 納得いかない出来。 笑
そんなこんなで、日々実験チュウ