16/6/5
自分らしくを大切にする人生 その8 ~ガラクタ整理で人生が好転。体調を崩し、JICAを辞め、将来の展望が持てない不安な時期から、一転、ガラクタ整理師となり、本を3冊出版することに。~

JICAを辞めた僕。次にやりたいことが見つからず不安な日々を送っていましたが、ガラクタ整理で人生が好転し始めました。
今僕はガラクタ整理師として、本を書いたり、講演会をしたりしていますが、もともとものが少なかった人間ではありません。
逆にものが多いほうでした。JICAを辞めるころちょうど、カレンキングストン(『ガラクタ捨てれば自分が見える』著者)のセミナーが日本で初めて開催されるということで、受講。
そのセミナーをきっかけにどんどんものを整理し始めたのでした。
整理する前の家はこんな状態。。。
キッチンの天袋はあけるとものがなだれのように落ちてくる。
賞味期限切れのものが溜まっている。
押入れには引越しで使ったダンボールがそのままつまれていて、引越しの時に整理しないまま何年も放置。中にはカビがわいたものすら。
でもみたくないから、押入れの中に入れておいて、見ないふり。
コンサートチケットの半券は全部とってある。旅行先で行った美術館の入場券、ロープーウェイの乗車券、観光パンフレット、全て保管。
本棚には500冊くらいの本。さらに押入れの中のダンボールにも本がいっぱい。中には高校から読んでいない授業のプリントまで。
そして、友だちが予告なく家にやってくるとすぐには家に入ってもらえない。
「ちょっとまってて!」と10分くらい外で待ってもらっている間に、見えるところだけとりあえず片付ける。向こうの部屋には入らないで、冷蔵庫は開けないで、など触られたくない、見られたくない、そんな場所がたくさん。
こんなふうにものでいっぱいだった僕の人生ですが、
カレンキングストンさんのセミナーを受講して、ガラクタ整理をすることで人生が変わる、ということを学び、徹底的に整理をしたのでした。
スペース(空き)ができればそこに自然に変化がやって来る。
変わりたいなら、ガラクタを手放して、スペースを作りましょう。自然に変化はやってきます。
その言葉を信じて、どんどん僕は散らかったものだらけの家を整理し始めたのでした。
そして、整理はただものを片付けるだけでなく、僕の心と向き合う、そんな時間にもなりました。
自分の気持ちが喜ぶものを残し、自分の気持ちを下げるものを手放す、
そのように習ったので、実践。
それは、つまりは、自分の基準で、自分の心の声に従って整理をすることでもありました。
つまり、ガラクタ整理は自分を大切にすること。
象徴的だったのはスーツ。
JICAで仕事をしていた僕はスーツをたくさん持っていました。JICAではスーツを着て、日本の省庁の方と打ち合わせをしたり、海外出張にいったり、途上国の象徴の次官と会うこともありました。
そんなスーツだったのですが、自分の気持ちを下げるものでもありました。
つまり、
スーツは僕にとってJICAで仕事をしていた頃の象徴。
自分の気持ちや本音は抑え、組織の一員として、周りの期待にこたえようと仕事をしていた頃の象徴です。「社会人なんだから」「JICA職員なんだから」「お金をもらって仕事をしているんだから」と、いろんな社会の「~すべき」の中で生きていた時に来ていたのがスーツ。
しかし、それで体調を崩し、救急車で運ばれ、2週間も仕事ができなくなった、その経験から、自分を大切にすると決めた僕。その僕にとってスーツは気持ちを下げるものだったのです。
でもいざ手放そうと思うと、迷いが出てきました。
「今はJICAを辞めて、やりたい仕事を辞めて仕事をするって思っているけど、将来お金に困ったりした時にまた組織で働かなくちゃいけないときもあるんじゃないか。」
「もしかしたら、会社の面接を受けるときに着なくちゃいけないんじゃないか。」
「いつか着ることになるんじゃないか。」
そんな頭の声が聞こえて来ました。
今はこうして熱意に燃えているけど、将来はわからない。着ることだってあるんじゃない?など不安が出てくるとなかなか手放す気持ちになれなかったスーツたち。
でも僕の心はとても素直に、スーツを見ると気持ちが下がったのでした。
もうこれを着て、自分を装って仕事をするのは嫌だ。大きな組織で働くのは嫌だ。
もっと自由に、自分のやりたいことをやる人生を生きたい。
「よし、やっぱり、スーツを手放そう。」
と、スーツを全て手放したのでした。
そして、僕はスーツだけでなく、仕事で使っていたかばんも、シャツも、靴も、気持ちが下がるものはとにかくどんどん手放しました。
そして、整理をしながら、とにかく、
「自分を大切にする人生を生きるぞ。生まれ変わるんだ。」
「これまでの自分の本音を押し殺す人生は辞めよう。それを象徴するものはとにかく手放そう。」
とと自分に言い聞かせていました。
また、本棚にもたくさん、たしか500冊くらい本があったのですが、それもどんどん処分しました。
実家の母親はよく、「本は財産」と小さい頃から僕に教えていて、僕もそう思っていました。
本棚に並ぶ本を見ては、
「これが僕の努力の証だ。」
「大学でがんばったなぁ。」
「これが僕の知識だ。」
なんて思っていたのですが、
ガラクタ整理に出合い、もう一度本を振り返ると、実はほとんど読んでいない本たち。
気付くと、それらのほとんどは「劣等感」で買ったものでした。
周りの人は本をたくさん読んでいる。例えば、大学院では哲学・倫理学の専門でしたが、周りの院生たちは毎日のようにたくさん本を読み、指導教官の先生の部屋に行くと、壁じゅうにたくさんの本。洋書もたくさん。
それを見ていると、あまり本を読まない僕がだめな存在だと思えてきて、
「本を読むべき」
と思うようになっていたのでした。
それは劣等感。まわりが出来ているのに、自分は出来ていない。周りのようにできるように。
そんな思いで本をどんどん買うようになりました。
それは読みたいという気持ちではないのです。むしろ、読むべき、読まなくちゃ、そんな気持ちから。
本屋でいろんな新しい哲学書が出ていると、これも読んでおいたほうがいいんじゃないか、これも勉強しておいたほうがいいんじゃないかと、自分が本当に読みたい、という気持ちを確認することもなく、「読まなくちゃ」と買っていました。
そしてどんどん増えていって、結局500冊近く。
しかしそんな劣等感で買った本は実はほとんど読まないまま。
本棚に並んでいる本のほとんどを僕は読んでいなかったのです。
本棚を整理しながら、ほとんど読んでいないものたちばかりあることに気付き、
「読むべき」という気持ちや劣等感で本を買いあさっていた、それを所有しようとしていたということに気付いたのでした。
もう、こんな本の付き合い方はやめよう。
そもそも、僕って本を読むのが好きなの?
そんなに好きじゃないなあ。読むのもそんなに早くないし。
と気づきました。
あんなにたくさん本を買ったのに、そもそも好きじゃない、読むのも得意じゃない!
そう気づきました。
(でもだからこそ、周りと自分を比較して劣等感を持ってしまって、どんどん買いあさってしまったのですが。)
本当に読みたい、自分が大好き、って思う本だけ残そう!
と思って、どんどん処分していきました。
処分しながら、本棚にはどんどん空間ができるようになり、
カレンキングストンさんから、「空間ができると新しいものがやってくる」とならったので、「自分にはどんなことがやってくるんだろう!」「きっとすごいことがやってくるにちがいない!」なんて、実はそんなに根拠もないのに(笑)、どんな新しいものがやってくるのか、うはうはしながら整理していったのをよく覚えています。
「今日も整理してこんなにスペースを作ったぞ!」
って毎日喜んでいました。
結局、半年くらいかかりましたが、本は3冊に。
最後30冊くらい、自己啓発系の本が残ったのですが、それも見ながら、
「本当に読みたい?」
「自分にとってこれはベストなもの?」
って問いかけてみると、
「いや、将来の自分の人生の不安や、これから自分がどんなことができるかわからないから、自己研鑽のためによんでおこう」
といったちょっと消極的な理由で持っているのがわかり、
悩みましたが、自己啓発系の本も全てさようなら。
残った本は、
地図帳・・・地図帳を見るのが大好き。
なぞなぞの本・・・小学校時代に購入し、「竹内きよ文」と自分で背表紙に書いていました。まだ「清」という感じがかけない頃のもの。なぞなぞは大好き。
料理の本・・・有機野菜をどうやって料理するかが分かりやすく説明されていて、料理好きだったので読んでいました。
の3冊。
自分がいい気持ちになるもの、大好きって思えるもの、
「読むべき」や「劣等感」ではないもの、
そう厳選していくとこの3冊だったのでした。
大学時代に読んだいろいろな参考文献も、修士論文を書くために読んだ本も、JICA時代に購入した国際協力関係の本も、
全部消えたのでした。
結局、当時の僕にとって自分の気持ちを大切に、つまり「自分らしくを大切に」した時に残ったのは、大学のものも、JICAで仕事をしていた時のものでもなかったのでした。
新しい自分になりたい。
もうこれまでの、「べき」や、社会の常識に縛られた、しんどい人生は辞めよう。もっと自分を大事にしよう。
そんな気持ちで整理し、部屋を全く新しい状態に変えていったのでした。
名刺もほとんど全て捨てました。スーツを着て無理して仕事をしていた時代に知り合った人とはもう連絡は取らないだろう。
会社で手に入れた資料も全部捨てました。もう国際協力の仕事をしたいとは思わなかったのです。
とにかく、僕が「~すべき」とがんばっていた頃を象徴するものを全部整理したのでした。
それは、北海道大学に通っていたことも、JICAで働いていたことも、まったくわからない部屋にしてみようという気持ちでもありました。
過去を手放し、完全に新しい自分になるぞ、
自分を大事にしていく人生を生きるぞ、
その象徴が僕の部屋になっていったのでした。
結局、9割以上のものがガラクタ整理され、JICAをやめる前に持っていたものは1割くらいしか残りませんでした。
本棚も空っぽになり、手放し、
ものをたくさんおいていた銀のラックも必要なくなり、手放し、
と、収納に必要なものもいらなくなりました。
整理が下手だと思って、いろんな収納が上手になるという雑誌を購入していたのですが、
そんな収納方法を改善することも必要なく、ただ自分にとって気持ちを下げるものや、使わないモノを手放していくとみるみる自分の部屋がきれいになったのでした。
そして、以前友だちを外で10分ぐらい待たせていたのが、
なんと、友だちが遊びに来ると、
「まだもうちょっと長居しようかな」
という、友だちがとても居心地がいいといってくれる部屋に変わったのでした。
これには僕も本当にビックリでした。
ガラクタを整理するとこんなに家って変わるんだ。
そして自分の気持ちも本当にすっきりしました。自分の気持ちを高めてくれるものだけ残して、自分の気持ちを下げるもの(スーツ、読まなきゃいけない本、資料、などなど)を全部手放すと、本当に気持ちがよかったのです。
と、このように整理してた僕は、
ある日知り合いの主婦の方に、自分の整理している体験談をお茶を飲みながらお話しました。
「カレンキングストンさんという人からガラクタ整理を勉強したんです。」
「スペースを作ると変化がやって来る。それは自然にやってくるので、新しくなりたい人は整理をするのがいいんです。」
「僕もスーツや本や、読まない資料や、どんどん使わないものや気持ちを下げるものを手放したんです。」
そんなことをお話していたら、
急にその方が、
「そのお話、とても面白いから、私が参加している主婦の人たちが集るミーティングで講演をしてみない?」
と言われたのです。
それには僕もビックリ。
「え?自分が? 講演?」
「とってもいいお話だから、ぜひ他のみなさんにも聞かせてあげたい。」
というその人のリクエストで、僕は人生で初めて講演をすることになりました。
その講演をしたところ、みなさんがとても喜んでくださって、
「またやって欲しい」
「この人も竹内さんに講演をして欲しいって言っている」
など、リピートを求めてくださる方がいて、次第に講演会数が増えていったのでした。
「これは、もしかして、仕事に出来るんじゃない?」
と思うようになりました。
ある人が、
「じゃあそれは、「ガラクタ整理師」だね。」
と名付けてくださり、
それで僕は「ガラクタ整理師」と名乗って講演活動をどんどんするようになりました。
当時は沖縄に住んでいて、沖縄のいろんな集まりや、また自分で主催もして、講演をするようになった僕。
そうすると、今度は東京に住んでいる友人が、
「東京でも講演をして欲しい」
と依頼してくれて、東京でも人生初めて、講演をすることになったのでした。
その方のおかげで、その講演会も大盛況。
とてもいい講演会だったのですが、それで終わらず、
その数日後、あるメールが僕の元に届いたのでした。
「講演会に参加したものです。あなたの講演を聞きましたが、あの内容であれば本に出来ると思います。ぜひ本を書いてみませんか?」
というメールだったのです。
差出人は、PHP研究所の若林さん。
その一通のメールがきっかけで、僕は本を書くことになったのでした。
とてもおもしろいのですが、
僕は本を劣等感で購入して、結局僕は本を読みたいって思っていないとわかり、
もう本は僕の人生には必要ないな、と思って、500冊を3冊にしたら、
今度は本を書くお仕事を依頼される。
劣等感でただ本を持っていた時には、本が嫌だったのに、
手放すとまさか本を書くことになるなんて。
カレンキングストンさんが、「スペース(空き)を作れば、必ず変化がやってきます。」と言っていたのは本当だったのです。
スペースを作ると、講演をするよう依頼され、
講演をすると盛況で、どんどん輪が広がり、
そして東京で講演をすることになり、
その講演がきっかけで、本を書くことになるなんて!
JICAでスーツを着て、自分の本音を抑えてがんばっていた頃には想像もでできない自分でした。
その間たったの2年くらいなのです。
自分を大切に、
ガラクタを整理して、本当に好きなものだけ残して、
ということをやっていたことでやってきたチャンス。
新しい流れ。
ガラクタ整理がまさしく、僕の人生を変えてくれたのでした。

そしてできたのが、こちらの本。
『8割捨てればうまくくいく!人生を変えるガラクタ整理法』
2009年の年末に出版。
自分自身が人生で本当に行き詰まって、ものがいっぱいになって、
でもそれを手放すことで人生が変わった。
その経験を元に書き上げた本でした。



若林さんのご協力で、PHPさん社内で講演をさせて頂いたり、
東京にも僕の本がたくさん平積みされていました。
出版記念講演会もさせて頂いて。
この『8割捨てればうまくいく!』はお蔭様で、5刷になり、13500部。
PHPの方も、
「無名の新人で、このご時勢に、5刷は快挙ですよ。」
と褒めてくださいましたが、自分でも本当にびっくりの出来事でした。
その後2冊目の『手放せばうまくいく!』も出版され、
2012年には、初の書き下ろし文庫『ガラクタを捨てれば人生はすべてうまくいく!』も出ました。
そしてその最新刊も昨年11月に増刷。初版から3年越しの2刷に、出版してくださったPHPさんもとても驚かれて、「なかなか3年越しの2刷りはないですよ。着実に売れていたんですね。」と言ってくださいました。
このような人生にどんどん流れが生まれ始めたきっかけ。
それが体調を崩して学んだ、「自分を大切にする」こと。
そしてガラクタ整理。
お金も安定もあったJICAを手放し、
自分を大切に生きて、本当に自分がやりたいことを見つけたいと決意した僕。
すぐにはその仕事は見つからず、不安になった時期もあったのですが、
不思議なご縁で、ガラクタ整理の講演をするようになり、それがどんどん広がって、ガラクタ整理師に。そして本を書くことに。
僕がガラクタ整理師になるなんて、JICAをやめる時にはまったく想像もつきませんでした。
スーツを着て仕事をしていた僕が、フリーランスになって、こうして本まで書くなんて。
計画もしていなかったのに、こうして今その仕事を続けられています。
こんな大きな変化をもたらしてくれたのが、自分を大切にすることと、ガラクタ整理だったのです。