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16/5/30

夏の夜空に願いをかけて・・・

Image by Olia Gozha

夏の夜空に願いをかけて・・・

私は北勢中学校で初めてアルファベットを見て、英文を見たときに「これが読めたらいいだろうなぁ」と思った。それは、同級生のほとんど全ての子が思ったことだと思う。

ところが、中学校を卒業する頃には99%以上の子は「私にはムリだ」と感じて卒業していくのではないだろうか。テストをするたびに「平均点も取れないようでは」と半数の子は1年もしないで脱落する。

私は現在、30歳で英検1級に合格したけれど、それまでやったことは投資金額にして、およそ500万円。アメリカで生活したり、英語の個人指導を受けたり、資格試験を受けたり、京大を7回受けるために受験料・ホテル宿泊代・交通費など、いろいろ。

大学の語学センター、ECC、NHKの語学番組、リンガフォンなど何でもやった。お金がないだけでなくて、時間も問題だ。持てる全ての時間を英語の勉強にあてた。おじさんがよくやる酒、ゴルフ、煙草、ギャンブル、女遊びなど全て放棄。つまり、友達関係も全て放棄。

それだけではない。1年もアメリカにいたら帰国後に26歳で無職になる。その覚悟も必要だ。

それでも、英検1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級などに合格できたのは、帰国後3年経った頃。30歳だった。

その後、高校数学の指導を依頼されたので勉強を始めた。オリジナル、1対1、チェック&リピート、赤本をそれぞれ2周やった。Z会は8年間。京大模試は10回、センター試験は連続10年。

費用とか時間の使い方は繰り返しになるので書かない。要するに、お金は1000万円近くかけ、20年近い時間をかけ、他のものには目もくれずにやったわけだ。

旧帝や国立大の医学部をめざす優秀な生徒が来てくれたから、私に指導可能な学力があることを示す必要もあった。それで、その方法を考えて、「京都大学を受けて成績開示すれば、大丈夫かも」を実行したまでだ。

私は名古屋大学「教育学部」出身なので、イマイチ信用してもらえなかったし、ここ三重県から見ると東大は遠すぎて京大を志望する子が多かった。中途半端なことをしたら、塾もつぶれる可能性がある。

ふり返ってみれば、楽しかった。

ガリレオの湯川先生が、ひらめいた時に猛烈に書く数式。「あんな数式がいつか分かるようになりたいなぁ」と思ったことはないですか?夏の夜空を見上げたとき、「あの星は1万年前のものなんだなぁ」とか「どうやって計算したのだろうか?」とか、疑問が次々と出てきたことはないだろうか?

私は、小学校の頃にこっそり校庭にでかけて前方転回の練習をしていたことがある。あの頃、きれいなお月さまに向かって「いつかロボットが作りたい」「いつか博士になって、英語も数式もスラスラになりたい」と願いをかけていた。

いま、それが少しだけ実現している。英語は日本語と同じように分かる。英語の映画も字幕なしで分かるし、英語の歌も聞き取れる。簡単なフランス語も読めるし、微分積分、数列、ベクトル、確率など、優秀な四日市高校の優秀な理系女子を指導できる。

そういう意味で「願えば、かなう」と信じている。ただし、「持てるお金、時間の全てを注ぎ込む。少々の犠牲や困難でへこたれない」。それくらいの覚悟は必要。ただで高級車を買うことは出来ない。必ず、対価は必要だ。

それなのに、「友達も大切だから」と友達をおしゃべりに興じ、「クラブは人間形成に必要だから」と毎日サッカーばかりやり、「異性とのデートもしたい」では話にならない。そして、あげくのはてに「私は先生と違う人生観を持っています」と言いつつ、同じように難関校に合格しようとする。

 ここには、根本的な教育の誤りがある。戦後、「ともだち先生」が増えすぎた。中学生や高校生の自主性を重んじることが、人権尊重だと勘違いされている。未熟な生徒の人生観と、指導者の人生観を同列に置いてはいけないのだ。

私は少林寺拳法の黒帯だ。最初は「型」をしっかり覚える。最初から、師匠に「私は師匠と違う蹴りや突きなんです」と言えるわけがない。なのに、日本の教師は最初から生徒と同じ目線に立つのが良いと勘違いしている教師が多い。

生徒と圧倒的な差があるから、「師」と呼ばれるのだ。

だから、私は犠牲をはらう気もない、覚悟もない生徒だと分かったら見放す。未熟者の議論につきあう時間はない。賢い子は、言わなくても暗黙の了解で分かっているので、その指導に専念する。

受験とは、夏の夜空を見上げて遠い星に思いをはせ、読み解くための外国語や数式の習得にロマンを感じる子を選抜するものだ。サッカーをしたり、異性ばかり追い求める子は要らない。そういうものなのだ。

ガラパゴス化している教師は「クラブと勉強の両立だ」などと叫ぶが、私の教えていたローガン中学校にはクラブ活動という制度がなかった。そんなスローガンは無用の長物だ。

庭にピンクのつつじが咲いていて、ハチがブンブン飛んでいる。「こっちのハチは、あっちのハチより100m0.1秒速く飛べる」といって何になるだろう。次の瞬間に、鳥に食われてしまうかもしれない。

テストの点数の差など、そんな程度の話だ。

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